海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

労働者の苦境のなかに、ちょっぴり光る幸せをユーモラスに。 |『魔が差したパン』O・ヘンリー 訳:小川高義

O・ヘンリーは昔読んだ気がします。

近年は気にもしなかったのですが、読書系ブログ界隈(まあ私が見回るところ)ではたまに言及されていたので気になっていました。

今回手術のために日本に帰国していますが、母親の「積読」文庫にその姿を発見、読んでみたものです。

 

はじめに

なかなか良かったです。O・ヘンリー短編の中でも傑作選3冊のうちの3冊目。

東工大名誉教授の小川氏による傑作選・翻訳。

 

全体評

O・ヘンリーは久しぶりです。もう20年以上ぶりかも。この短編集のうち数編は何だか読んだ気がします。

 

洒脱な雰囲気を漂わせつつ、労働者階級の悲哀や小さな喜びを描くところがいいですね。最後にくすっと笑顔をさせてくれます。

 

ニューヨークはマンハッタンに生きる賃借人、あるいはテキサスなど南部のメキシコ国境沿いで生活にあえぐ労働者など。偶然というスパイスを取り混ぜることで、ちょっとした幸せを彼らに運ぶ、というハッピーエンド系のお話が多い気がします。いわゆる感動ポルノ的な大がかりなものではなく、本当にクスっとしたやつ。

 

読むとちょっと元気になれるかも。

 

個別評

その中でも好きだったのを幾つか挙げておきます。

「魔が差したパン」・・・表題作。オチが少しずつ見えてきますが、よかれと思った行いが逆の行為を生んだという構図。恋心+お節介=ありがた迷惑、という残念な結末に。

 

「都会の敗北」・・・埃っぽい農場出身のロバートは、出世し、ニューヨーク社交界で大成功。とうとう高嶺の花、アリシア・ヴァン・デア・プールとの結婚に成功。ところが隠していた母親からの手紙を妻が発見し、赴くことになった生まれ故郷。場違い感が半端ない妻から語れる言葉は・・・。

 

シャルルロワルネサンス」・・・フランス出身の没落貴族のシャルルが催す一世一代の浪費ディナー会。誰にも信用されず客がこないなか寂しいディナー会がはじまるも、神様は彼を見捨てなかった! 南部のマルディグラを思わせる雰囲気のある作品

 

もちろんですが、それ以外にも「クスっ」系のユーモア交じりの作品が多かった印象。

 

おわりに

ということでO・ヘンリーの短編集でした。

訳者の小川氏が頑張って訳出した旨をあとがきに書いていましたが、それを読むにつけ原書でも読んでみたいなあと思った次第です。たぶん版権は切れていると思いますので、廉価で売っているのでは、と思います。私は本当に安くないと買わないシブチンですが。

 

評価 ☆☆☆

2024/03/24

メディチ家内の人間ドラマを描く |『銀色のフィレンツェ』塩野七生

塩野七生氏の歴史絵巻三部作のうち、これが二作目。

 

こんな話

前作同様、ヴェネツィアの貴族マルコが主人公。

前作末、政治勢力図の変更もありヴェネツィアでの殺人事件のごたごたの責任を取らされ、一時的な追放を余儀なくされたマルコ。外遊ということでフィレンツェへ。

 

これまたフィレンツェで政治騒動に巻き込まれますが、フィクションですのでそんな偶然もご愛敬。

今回の舞台はルネサンス期後半のフィレンツェです。隆盛を極めたメディチ家、ではなく、むしろ経済的には落ち目にあり、軍事や政治へシフトしつつあるメディチ家を描きます。

 

政体論からの、現代政治

塩野氏というと、歴史と共に、イタリア政治を語るイメージがあります。

本作では、登場人物に政体論を大いに語らせています。

 

隣国のヴェネツィアが共和国である一方、時のフィレンツェは侯爵の収める言わば君主制。そこで外交経験豊富な主人公マルコは、傍系ながらもメディチ家の若い血、ロレンツィーノと邂逅します。更に、同国稀代の政治家・外交官のフランチェスコ・ヴェットーリらも合流、政体論を繰り広げます。

 

主人公のマルコは創作ですが、それ以外は実際の歴史上の人物ということで、このヴェットーリという政治家はマキャベリの友人であった実在の人物。

物語上では、ヴェットーリのリードのもと、政体の良しあしではなく、市民が満足するならば政体はどれでも良し、ということに。で、市民の満足はどこから得られるかといえば経済的繁栄ということに落ち着いたようです。

 

これを読んだ途端、私の脳裏にはフィレンツェヴェネツィアよりも、明るい北朝鮮と呼ばれるシンガポールが思い浮かびました。色々とルールが厳しかったり(麻薬の持ち込み=即死刑とか)しますが、周辺国はみなシンガポールを目指しますよね。

 

対して日本はどうなんでしょうか。経済?いまいち伸びていなさそう。政治?首相はコロコロ変わります。

日本の(というかうちの!?)会社でもつとに感じますが、長期的視点で運営できないとなると、致命的な無責任運営になりかねない気がします。三か年計画とか言って作っていますが、作成から三年たって、どれだけ携わった人・責任者が残っているのか。

 

もちろん、経営・政治は、いうのは簡単ですが、成し遂げるのは難しいのでありましょうが。

 

それから

その他、前回登場したオリンピア(こちらもマルコ同様創作の人物)も登場。今度は神聖ローマ皇帝カール5世の密使として、時のフィレンツェの為政者の侯爵アレッサンドロを見張るというのがお仕事でした。

 

なおマルコとの熱愛?も相も変わらず続いている様子であります。

 

おわりに

ということで歴史絵巻三部作の二作目でした。

前作はヴェネツィアのほかにイスタンブールまで描かれておりスケールが大きかったため、本作はややこじんまりした印象があります。

 

但し、フィレンツェの街をじっくりと描写しており、旅行に行かれる方にはなかなか面白い作品なのではと思いました。エトルリア人が作ったと言われるフィエーゾレ、ウフィツィ美術館、ベッキオ橋等々、観光地の有名どころがかなり描きこまれている印象です(地図付きです!)

 

評価 ☆☆☆

2024/03/23

 

三部作の一作目も読みました。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

 

ふんわりやさしめ西作品 |『しずく』西加奈子

 

西さんのイメージ

西さんの作品は、なんというか、「癖のある」感じの印象。

いつも関西弁の女性主人公が出てきて、ちょっと繊細だったり、あるいは男勝りのユーモラスなキャラだったり。

その一方で擬態語や擬音語のチョイスが読者をはっとさせ、唸らせるところも多い作家さんです。

 

今回はちょっと違う?

そしてこの短編集。

いい意味で、何だかマイルドに感じました。曰く言い難いのですが。

いつも通り、関西弁と突き抜けた女性キャラは出てきますが、他の西作品対比、マイルドかな。

あとがきを読むと、何でもプライベートで辛い状況にあり、それを支えてくれた友人たちに捧げる本という位置づけの作品だそう。そうしたことも関連しているのかな。

 

こんな感じの短編たちです

一応、簡単に短編の内容をご紹介

「ランドセル」・・・小学生の時の幼馴染に久方ぶりに会い、ノリで旅行を計画。さっそく気まずい旅行のなかのどさくさを描く。

「灰皿」・・・思い出の戸建てを貸し出す老オーナーと、これを借りることになった新進作家とのご近所づきあい。遠慮のない若者と気をもむ老人のやり取り。

木蓮」・・・結婚相手にと見定める彼氏。その彼氏の連れ後を預かることになった「私」。この「私」、大の子供嫌い。爆発しかけるのを必死で抑えるも最後は・・・。

「影」・・・ワケありの「私」が逃げるように訪れた島。その「私」にちょっかいを出すみさき。みさきの過去を徐々に理解してゆく私の心象を描く。

「しずく」・・・作家の彼氏とイラストレーターの彼女。それぞれの連れ子(猫)それぞれ一匹。猫の視点で一家屋根の下の様子を描く、楽しくも悲しい短編。

「シャワーキャップ」・・・女の影がちらつく彼氏。その彼氏と同棲を目前にする女性(めっちゃナーバス)と引っ越しを手伝う母親(めっちゃポジティブ)。明るい母親に次第にイラつく女性の心の変化をビビッドに捉える。

 

こんな感じです。

 

おわりに

ということで西さんの作品はこれで13作目でした。でも本作は実は結構初期の作品。

相変わらず軽妙な関西弁と擬態語・擬音語が光ります。彼女の作品を全部読み切ったら、次はどの方面にターゲットを絞りますかねえ。。。

 

2024/03/18

外交に国運を賭するヴェネツィアと、翻弄される人民 |『緋色のヴェネツィア』塩野七生

皆さん、こんにちは。

私事ですが、毎年Year Resolutionを作成しています。簡単に言うとプライベートでのKPI。この中で数年前から旅行KPIというのを作っており(実際は奥様の満足度向上KPI、という名称なのですが)、なるべく家内を旅行に連れ出すという事をしています(怒りの目線を私から反らす、と)。

 

で、今年は大枚をはたいてイタリアに行きました。

ヴェネツィアにはいきませんでしたが、ローマとフィレンツェをゆっくり回りました。

 

ということで今回の読書は、事後学習!?とも言うべき後追い読書の位置づけであります。個人的にこつこつと世界史を学んでいる身としては、トルコ関連の内容がこれまたしみいる内容となっておりました。面白かった!

 

 

はじめに

古代ローマ・中世ルネサンスの著作が多い塩野氏の作品。

中世イタリアはヴェネツィアを舞台に、貴族の息子と貴族の庶子の運命的な結末、都市国家ヴェネツィアとトルコや周辺列強諸国とのパワーバランスを華麗に描く。

 

外交・交際政治を豊かに描く

先ずもって感じたのは、この本は国際政治の本だ、ということです。

主人公マルコは貴族の子として、若くしてヴェネツィア共和国の運営に関わり、外交官としてイスタンブールへも派遣される。彼の役割といえば、トルコでの情報収集、ヴェネツィア本国のリエゾンとしてトルコの宰相への口添えなど。

こうした仕事は何のためかといえば、小国たるヴェネツィアが北のハプスブルク(ウィーン)、西のスペインに蹂躙されないためです。そのために非キリスト教国ながら属国下の他宗教には寛容であるイスラム教国たるトルコと秘密裡に関係を強化しようというわけです。

 

外交とは国益を守ることなどという事がありますが、より端的に言えば国が生き残るべく泥臭く根回し・情報操作することなのでしょう。

本作はそうした政治・外交の機微が非常によく描かれていたと思います。とりわけ、トルコであてにしていた宰相イブラヒムの権力に陰りが出てきて、国際政治的にヴェネツィアに逆風が吹き始め、この先のかじ取りや状況を悲観する主人公の独白は、外交というものの正鵠を射ていると思いました(P.282)。

 

とはいえ、内容の2/3はヴェネツィアでの情景です。悪しからず。

 

トルコ史との関連もチェック

って言いつつ書きますが、時はスレイマン一世(1494-1566)の治世。幼馴染にして奴隷であるも宰相にまで上り詰めるイブラヒム、さらにはロシアから奴隷として連行され、これまた王妃にのし上がるシュッレム(作品ではロッサーナ)が権力を増しつつあった時代の話です。

本作はヴェネツィア側から描かれていますが、トルコ側の当時の様子としてはHulu収蔵のテレビドラマ『オスマン帝国外伝 愛と欲望のハレム』を見ていただくと非常に分かりやすいと思います。私の記憶では、上記のドラマでは、ヴェネツィアの外交官というとブクブクと太った欲深そうなおべっか使いみたいな描かれ方だったと思います。

 

恋愛要素もしっかり

さて、そのほかにも主人公マルコと娼婦オリンピアとのちょっと真剣な関係、ヴェネツィア宰相の庶子アルヴィーゼと有力者プリウリ夫人との道ならぬ恋など、人のさがの機微もじっくりと物語に練りこまれていると思います。

こうした物語の作りこみが作品の完成度を上げていると感じました。

 

おわりに

ということで、塩野作品は二作目でした。前回はエッセイを読んだので、本格的な作品はこれが初めて。

歴史ものは結構好きかもしれません。非常に面白く感じました。3部作となっている模様ですので、続編も続いて読んでみたいと思います。

 

私のように歴史好きな方以外にも、旅行でヴェネツィアやトルコ(イスタンブール)に行かれる予定のある方、あるいは世界史で中世(オスマントルコ時代、イタリア史)を勉強する必要のある方にはお勧めできる作品かと思います。

 

評価 ☆☆☆☆

2024/03/16

次第に全貌が明らかになるエログロ・サスペンス |『民宿雪国』樋口毅宏

皆さん、こんにちは。

上の子の高校卒業式に参加してきました。

いやあ、青春っていいですね。式が終わった後は講堂から出て、生徒一同で制服のネクタイ(通称『たくあん』:金色・黄色だから)を一斉に放り投げるというシーンも。その後は生徒同士、仲間同士、あるいは先生を交えて・父母を交えての写真撮影。いやあ、いいものじゃないですか。

 

そして思い返す自分の卒業式。というか出なかったという思い出。

私はその時、荒れていました。ただ成績はそこそこよく、国公立は諦めたものの、私立は概ね願ったところからは合格がいただけました。進学先を決めるところで問題が勃発。

学歴で苦労した父親は、私が合格した所謂有名私立大に行って欲しいと。私はそれよりランクがちょっと下の某キリスト教系の大学に行きたかった。当時ガンガンにとんがっていた私は、『子供が行きたいところに行くのではなく、親が行かせたいところに行くなら私は行きません。お金は勝手に行かせたい方に振り込んで結構。ただし私は知りませんし、行きたいところ以外行きません』と言い放ち、以降すべての学校イベントを拒否(ほんと生意気。今私が親だったら張り倒します)。高校の卒業式も、もういいや、と部屋に閉じこもりっぱなし。居たたまれなくなった母親は突然失踪し、一週間くらい金沢に旅行に言っていたという謎の幕間もあったものです。

部活の仲間からは今も『おまえ、親(との関係)は大丈夫か』と今も心配されます。大丈夫です。嫁によりかなり矯正されました。

 

ほんっと、子どもが自分に似なくてよかった。もうそれだけで十分親孝行な子供たちです。

はじめに

樋口氏の作品を読むのはこれで二作目。

前に読んだ『日本のセックス』はエログロ全開系作品でした。今回もエログロは踏襲しつつ、ややサスペンス味と歴史のエッセンスを加えた作品だと思います。

 

視点の移り変わりに特徴

新潟の雪深いボロ民宿、その名も雪国。

ここへ足を踏み入れる吉良という青年の視点から物語は始まります(第一章『吉良が来た後』)。

個人的印象としてはこの章が一番ひっくり返りました。展開に驚いた。吉良という青年が何者か、宿屋のオヤジが何者か、そこで起こったことは何か。オヤジの裏の顔とのギャップがやばい。

冒頭ということもありますが、「静」から「動」への転変が実に劇的であり、ツイストが効いていたと思います。

 

次章『ハート・オブ・ダークネス』では、世に疲れたとある記者が、敢えて人里離れたこの民宿に泊まるという話。彼自身のエログロ系色恋や生い立ちにあわせて、この民宿での出来事などが綴られます。ここでは民宿のオヤジは一種善人として扱われ、むしろこの記者の方がおのれの悪辣さを吐露している印象。こちらも章末にツイストあり。

 

次の章以降も引き続き、第三者がこの民宿のオヤジを語り、徐々にこのオヤジが何者でどういう人間であるか、何をしてきたのかが明らかになるという仕組みであります。最後にオヤジの問わず語り的自己紹介・振り返りがあり、読者も全体的な理解が得られることになります。

 

フィクションかノンフィクションか?

この作品は、当然のことですが、フィクションです。

まあ、読んでいて突飛な殺人事件が連発するので分かりますが。でも、その一方でバブル前後の80年代90年代の描写が生々しく(丹生雄武郎の絵画がポパイやホットドックプレスという雑誌で特集されるというくだり)、私は思わずググって確認してしまいました。

はい、フィクションです。よかった。

 

真実の混じった嘘が一番分かりづらいなどと言います。本作は虚構を核として、その周りを詳細で雑多かつ網羅的な事実で装飾することで、あたかもストーリー全体を真実と思わせる部分がありました。

 

そのほか

そのほか、樋口氏と映画評論家の町山氏との対談、樋口氏と梁石日氏との対談等が巻末にありました。

後者の梁氏との対談で、作家は少し遅咲きの方が良い、というのも経験をストックしてないと書くことが無くなる、という旨の話がありました。私は個人的にはそうかな?と思いました。

経験があれば確かに書くネタはあるでしょう。でもストックしている経験がない人でも経験を得る過程はネタになるのでは、と感じました。むしろ、お作法やテクニック等の方が習熟するのに時間がかかるのでは、と感じました。

まあ、読者としては早咲きでも遅咲きでも、素晴らしいものであれば後は良いのですがね笑

 

おわりに

ということで、樋口氏の作品を読了しました。

相変わらずのエログロ・ノワール系作品ですが、嫌いでないです。ただ、周囲には『こんなの読んでいます』とはちょっと言いづらいですね笑 伝えるような友人も居ませんが。

 

評価 ☆☆☆

2024/03/13

ニューヨークトリビアと凶悪犯との対決 |『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー、訳:池田真紀子

皆さん、こんにちは。

この前約10年ぶりにYahoo!オークションを利用し、文庫本をバルクで購入しました(塩野七生さん関連ですが)。

実は事前にメルカリも見たのですが、概観としてメルカリは高く、Yahoo!オークションは軒並み安いという結果でした。

 

同じ商品なのに値段が違う。なぜなのでしょうか?

売り手が既存のプラットフォームから新たなプラットフォーム・チャネルを拡大できず、他方買い手はより新しいプラットフォームに流れるから? あるいは私が購入したのは例外だったのか?

マーケット、プライシングとは、これまた奥深い世界であります。

 

こうした複数のプラットフォームから、共通するマークアップ言語の要素を使い情報を取ってこれたらプライスをキーにどこが一番安いかをサーチできるのかなあ?

新品は価格コムで値段チェックはできますが、中古・オークションもスキームは作れそうな感じがします。システム構築が出来ればより精度の高いセドリができるかもしれません。しないけど笑

 

はじめに

海外の翻訳物、しかもスリラー系は久しぶりに読んだ気がします。

いやあそれにしても面白かった。

 

あらすじ

で本作。「ボーン・コレクター」はとある事件で四肢麻痺となったやり手鑑識官が主人公。

首から上の自由のみが残され、安楽死を考える日々であったところ、国連系イベントで人手がたりないNYで突如起こる殺人事件。なんとなんと、ニューヨーク市警から捜査依頼が彼のもとに。ニューヨークの地理・歴史・科学などの捜査事項に精通した彼の推理により、猟奇的な殺人犯を追い詰めてゆくが、最後は・・・。

という筋立て。

 

ニューヨークの歴史トリビアに酔う

やはり面白いなあというのは、事件の背後を読む際に、その土壌を調べたり、その土壌を判断するにはニューヨーク(マンハッタン島)の歴史を知っていたりすることが分からないといけないということ。

こうした個別の事実が次第にconnecting dotsとなり、犯人像や犯人のメッセージ、あるいは次の事件現場が次第に明らかになってゆきます。

こうした事象の連関が読みながら次第に理解できる点が何ともa-ha体験でありました。数回「なるほど」と独りごちたかもしれません。

 

また、モデル級美女の警羅課の警官と四肢麻痺患者が一瞬恋愛関係の手前に迫ったシーンもあり、エンタメ的味付けも上手だなあと感じました。

 

おわりに

ということで久しぶりの洋モノでした。

映画化もされていましたので、そちらを見てみても良いかもしれませんね。なかなか大部(上下とも350P、合計700P程度)で2日程度は読了にかかりました。連休予定がなくってエンタメ系読書をしたいような方にはお勧めできるかもしれません。

 

評価 ☆☆☆

2024/03/09

2人の刑事の掛け合いから繙かれる3遺体の真実 |『パズル』恩田陸 

皆さん、こんにちは。

そろそろ異動の時期ですね。私は外国でこじんまりと自らサイロを築いてぼちぼちやっています。しかし、所謂駐在さんはそうはいきません。異動の示達があります。

 

私の一つ下の上司君は、次はなんとブラジルだそうです。と、遠い・・・。日本からだと30時間かかるそう。これでは一時帰国も難しいですね。

彼は、ことし上の子が大学受験、下の子が中学受験らしく、当然の事ながら?単身赴任となる模様。ちなみに上の子は奇遇にもうちの愚息と同じ高校で同じクラブの一つ下。残念ながら甲子園予選は見れないかもしれません。

子どもの成長、家族の急用に柔軟に対応できない部分は気の毒だなあと感じます。その応報としての金銭であるとも解せますが。

 

どのような人生を選ぶか。

ワーク・ライフ・バランスとは字面で表現されるより難しい話であります。

というよりワーク・ライフ・マネー・バランス、といえば正しいかな。いや、ワーク・ライフ・マネー・キャリア・バランスかな。いいや、ワーク・ライフ・マネー・キャリアファミリー・バランスか!?

 

めぐりめぐってワーク・ライフ・バランスが一番すわりがいいですね。いずれにせよ、難問であると感じます。

 

はじめに

3週間ぶりの恩田作品。2000年に発表されたちょっと古めの作品。幻想系スリラーとでも言った恩田氏らしい作品。

 

あらすじ

とある無人島で発見された3つの遺体。餓死、感電死、溺死とそれぞれ違う死因。3人の遺体に関連はあるのか。二人の刑事がこの疑問に取り組むが最後の結末は・・・。

 

登場人物すくな

基本ストーリは無人島で捜査する二人の刑事の掛け合いに終始します。その中でさまよえるオランダ人の伝承の解釈であったり、片方の刑事が高校時に属していたオカルト研究会の話であったりが挿入され、次第に状況が明らかになってきます。

 

因みにこの無人島を探すさまは、何となく長崎の軍艦島を想起させます。数十年前に打ち捨てられ、朽ちた住宅地。その人なき無機物の瓦礫の中を歩く様子に、軍艦島を見て感じた何とも寂しい様子を思い出しました。

 

おわりに

ということで月いちローテになりかかっている恩田氏作品でした。

これはどちらかというとファン向けかなあという印象。一般向けに勧めるならもっと面白いものがあるかなあと思った次第です。

 

評価 ☆☆☆

2024/03/05

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