海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年は会計と英語を勉強します!

漢字とひらがなによる日本語が美しい|『蜘蛛の糸・地獄変』芥川龍之介

この前、海外にきて初めて本を売りました。今でいうところの海外版「メルカリ」みたいなサイトでのことです。今まで3回売れたのですが、ぜーんぶ現地の方が購入者。ちょっと驚きました。ひょっとしたら業者か?笑

で、せっかくだから何か出物はないか、安くてよい本はないかと同サイトを探していて購入できたのが本作。他の書籍と併せて4冊で400円強。ちなみに、うち2冊はニーチェ関連。こちらは日本人の出品者でした。海外にいてニーチェ本を読むなんて、何か思い悩んでいるのか、はたまたその悩みが解消し無用となった末の出品か。

妙な想像と気恥ずかしさが入り混じる購入体験でありました。


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ひとこと感想

久しぶりに読んだ芥川龍之介の作品でした。

今回強烈に感じたのは、和の様式美とでも言うべき彼の文章の美しさです。全作通じてカタカナが殆ど見当たらず、ほぼ全て漢字とひらがなのみ。熟語の並ぶ堅苦しさも若干感じこそすれ、それは日本語本来の美しさや様式美に通ずるように感じました。

 

蜘蛛の糸」所収、歴史伝奇小説も

さて、本作に収められている作品ですが、「袈裟と盛遠」、「蜘蛛の糸」、「地獄変」、「奉教人の死」、「枯野抄」、「邪宗門」、「毛利先生」、「犬と笛」の8作品。

蜘蛛の糸」は非常に有名ですが、恥ずかしながら私は芥川龍之介といえば、これと「羅生門」くらいしか知りませんでした。

 

袈裟と盛遠」、「枯野抄」、「邪宗門」がお気に入り

で、今回本作をすべて読んで、「袈裟と盛遠」、「枯野抄」、「邪宗門」に興味を持ちました。どれも歴史を題材にした小説ですが、そこに芥川氏一流の創作が挿入されている形でしょうか。

 

袈裟と盛遠」はどうやら源平盛衰記に典拠した作品のようですが、殺人者と被害者という対立関係に内在している一種の共犯関係ともいうべき心理を描いています。この二人は不倫関係の末に、男が、女の旦那を殺そうとして誤って女を殺すというもの。しかし本作ではこの誤認をお互いが予測しているという筋立てであり、その心理描写が絶妙。なお、ソースである源平盛衰記は違った書き方であるそう(未読なのですが、盛遠が誤って女を殺してしまい、それを悔いて出家するとか)。

今でこそ、心中テーマはもはや驚くほどでもありませんが、本作は初出が1918年。きっと今以上にセンセーショナルに映ったのではないかと思い致します。

 

枯野抄」は、松尾芭蕉が亡くなる直前、その弟子たちが師匠の死を前にして、夫々の思惑を思い巡らす場面を描いています。人はおよそ、大切な人の死を前に、死者を悼むのではなくむしろ自分の行く末や顛末を考えていたりするという、シニカルな情景をあぶりだします。その節操のなさを本人たちが自覚している点もまたユニークです。これは舞台などで見たら映えるのではないかと夢想してしまいました。

 

邪宗門」は平安時代を題材にした伝奇小説とでもいえる作品ですが、残念ながら未完。どうなるのかとワクワクしながら読んでいたので一層残念でありました。本作を読んで私は中学生の時に一瞬ドはまりした藤川圭介氏の「宇宙皇子」を思い出しました。歴史上の人物+超能力とか魔力とか、そういう取り合わせにどうやら弱いようです笑

spn-works.com

おわりに

ということで、久方ぶり(30年ぶりくらい?)に芥川龍之介氏の作品を楽しみました。

氏の作品は日本文学・文芸の祖という扱いでか、中学や高校とかで取り上げられることが多いと思います。ただし、到底その年代では楽しめないのではと感じました。

学究から離れた大人の方が振り返って読まれることで、かつては分からなかった面白味が感じられるのではないでしょうか。また平安期を題材にした作品が多いので、京都方面にご縁がある方、関西の方は一層楽しめるのではと感じました。たしか「邪宗門」には烏丸とか河原町とかの描写が出てきていました。私には阪急線の特急の駅、という程度しか思い出がないのですが笑 本作を小脇に抱えて京都旅行にでも行きたいものです。

あ、あと最後に。これ、表紙がとっても素敵です。絵柄もそうですが、紙の素材が和紙のような手触り感のエンボス加工?になっています。そのザラザラ感も楽しめる作品です。

 

評価   ☆☆☆

2022/11/06

李鴻章は河豚を食べなかった!もったいない! | 『歴史のかげに美食あり』黒岩比佐子

食べることが好きです。

食材が調理によって姿を変える――千切り、短冊、乱切り、千切る、そぎ切り、ぶつ切り、サイコロ、三枚おろし等々の下ごしらえ。そしてこれらを、焼く・炒める・揚げる・蒸す・煮る等の加熱を施す。あるいは生食も。たった一つの食材でもカットと調理の組み合わせて数え切れないほどにその姿を変化させ、さらに添え物との組み合わせを考えれば無数のバリエーションが存在することになります。

また食材や調理法には、地方独特のものがあったり、その独自性も風土であったり天候であったり文化であったり、はたまたま歴史的な理由や由来があったりするわけです。

そう、料理って素敵なのです。これを舌で味わい、感じ、表現する、何と幸せなことでしょう。ついでに言えばその蘊蓄も開陳し、周りが面倒くさそうにし始めるくらいが気持ちいい(←アホ)。そういう楽しさ、皆さんは感じませんか笑?


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ずばり、食事にまつわる歴史エピソード

ということで、本作、食べ物と歴史という私の二大好物がフィーチャーされている作品です。とりわけ江戸後期から明治大正昭和にかけての近現代の歴史事件・人物とそれにまつわる料理について書かれています。

全部で12章あるので12エピソード、細かく丁寧にそして興味をそそる内容が綴られています。巻末の参考文献が、まあこれほどかという程掲載されており、筆者の綿密さがしのばれます。

 

伊藤博文李鴻章をつなぐもの。河豚。

そうした中で、何といっても抜きん出て面白かったのは伊藤博文のエピソード。

山口県出身の伊藤は初代総理大臣として、とある用事が下関であり馴染みの春帆楼という旅館へ泊ったという。現職総理をもてなそうと女将は奔走するも生憎の時化続きで思うような鮮魚が手に入らない。そこでお手打ち覚悟で禁食令の出ていた河豚を提供したところ、伊藤はあまりの旨さに驚愕、豊臣秀吉が禁令を敷き明治政府も発令していた河豚禁食令を解いたそう。爾来、伊藤はしばしば春帆楼で河豚を楽しんだという。

さて、その後伊藤は日清戦争終結させるべく清側の代表の李鴻章と下関で条約交渉を行うことになります。早速伊藤は河豚で饗応をしようとするも、何と李鴻章はこれを断ったそうです。WHY? 当時72歳という高齢もあり、慣れない異国の食事で体調を崩すことを恐れていたそうです。また休戦条約を結ぶ前に会議がスタートしたため、河豚の毒での暗殺を疑った可能性もあるとか。

いやー、河豚もったいない!でもわかるかも、等々つい興奮して独り言が出てしまいます。こんなのが書かれていると、一度は現場に赴き河豚を食べてみたいなあと思った次第です。

 

近代はキャラ立ちする人物ばかり

それ以外にも、より掘り下げて類書を読みたくなったエピソードがいくつか。

例えば、江戸幕府最後の将軍徳川慶喜が、開国後の日本で、慣れない西洋式饗応をするべくフランス料理を英国の外交官らに振舞い奮闘した話。英国外交官であったアーネスト・サトウの視点を取り混ぜて書かれています。
個人的には、まだ洋装も文明開化も始まっていない江戸時代に、メインの料理人はフランス人だったとはいえ、下につく日本の料理人はどれほどフランス料理の調理に驚いたことだろうかと想像を膨らましてしまいます。そういう記録がどこかに残っていないものかな。

それと、大倉喜八郎の話も興味を引きました。これは食べ物の絡みはあまりないのですが笑 氏の名前はボンヤリとしか存じ上げませんでしたが、政商とか武器商人として大いに活躍した方らしいです。のちの大成建設を設立したり、渋沢栄一とともに帝国ホテルを立ち上げたり。またお子さんの喜七郎がホテルオークラを開業したりしています。女性への関心もなかなか収まらなったそうで・・・笑 破天荒で面白そうな方じゃないですか。

 

おわりに

ということで食事と歴史をうまく組み合わせた、なかなか面白い作品でありました。筆者は早世されてしまったようで、新作を望むことはできないのが残念です。

歴史好き、グルメな方、蘊蓄好きな方には楽しんで読んでいただける一冊ではないかなと思います。国内旅行の候補地選びに読んでも、また楽しいのではないかなと思います。

 

評価     ☆☆☆

2022/11/04

なかなか良い。管理会計についても触れる会計入門 |『この一冊ですべてわかる 会計の基本』岩谷誠治

 

今年の8月に英国の某会計資格の試験を受けました。

3時間ノンストップの記述式(もちろん英語です・・・)という純ジャパには結構厳しい試験なのですが、150点満点中80点が合格点ボーダーであるところ、78点で不合格・・・泣 10月の末に発表がありました。

 

ウインドウは年に4回、3カ月ごとにやってくるので次は11月末のウインドウで再チャレンジ。ただ、試験代がスターリングパウンドでGBP299-。今のレートだとGBP299って・・・え?あれ?5万円超えてる!うわー、高くない?いや高い!いやだ、こんなに高いって今知りました。普段東南アジアのローカル通貨で換算して考えていて気にしていませんでした(インフレもありまして)。うわー、円だとこんな大金使っていたんだ。。。めっちゃ家族に悪いことしている気がしてきた(我が家では父親の資格試験は金のかかる趣味という位置づけ)。。。いや、今日から絶対勉強頑張ります。勉強のやる気出ないって書こうと思いましたが、だめだ。こんな大金無駄にできません。うわー、次回は絶対受かりたいわ。

 

ということで試験に落ちたことをきっかけに業務に関連する本を再読したという話でした。

 

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デザインもシンプルですっきりしていますが、内容も簡便で好感が持てます。

 

文字通りのタイトル通りの一冊です。会計に関して広く網羅的に書いています。

 

管理会計までを射程に収める

本作で出色であると個人的に感じるのは、やはり管理会計に相当のページを割いていることであると思います。財務会計は一般に過去のトラックというイメージがあります。しかし、そこから一歩踏み込むと財務分析、そこから収益見込であったり更には予算管理や戦略策定など、一言で会計といっても大いにフォワードルッキングな分野になりえるわけです。

章ごとに更なる参考文献が出ているわけですが、そのあたりも見越してか、財務分析の章の参考文献として「戦略バランスト・スコアカード」等の書籍も紹介されていて、この辺りは管理会計に従事する者としては「やっぱりこれを挙げてきますよね」と若干したり顔になりました。

あと、私は財務会計は業務上そこまでタッチしていませんが、PL・BS・仕訳についてブロックで簡便に説明しており、非常にわかりやすいなと感じました。

 

おわりに

本当に初歩的な、会計のお仕事のカバレッジを説明する本だと思います。海外にいるとそれなりに気を遣う移転価格の話、デジタル課税、源泉税とかそういう個別的な話は殆どありません。が、改めて会計という地平を概観するのには良いと思います。

その点では会計方面へのキャリアチェンジを考える方、会計とはどんなことを扱うのかを知りたい方には参考になるかもしれません。ただ本書で触れるのはあくまでほんの触りで、さらに広い地平が会計という名のもとに臨めるわけでありますが。

評価     ☆☆☆☆

2022/11/03

ニコニコ動画式政治で民主主義をアップデート!?|『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』東浩紀

いやあ、これはすごい考えでした。読中もむむぅと唸りがとまりませんでした。

なお筆者は哲学・現代思想が専門であり、本作は言わば「夢」を語ったもの、と注意書きをしています。


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どういうものかというと、、、

「民主主義後進国から民主主義先進国への一発逆転。
ユビキタスコンピューティングとソーシャルメディアに浸透された、まったく新しい統治制度の創出」(P.7)

 

私の理解でいうと、法案審議や国会中継ニコニコ動画(風なもの)を見ながらやるべし、というなんともドラスティックな話です。

 

この時点で胡散臭さ満載かもしれません。既にユビキタスとか死語ですしね(筆者も予見していましたが)。でも、日本の哲学界のエース(と私が勝手に思っている)がいうことです。騙されたと思って読み進めていただきたいです。

ポイントは副題のある通り、ルソー、フロイト、グーグルです。

 

一般大衆の意志の総和

ルソーの一般意志というのは東氏曰く、「つねに正しく、つねに公共の利益に向かう」ものであり、私的な利害の総和ではないという。ん?既に実現不可能な概念を突き付けられた感があります。別の言い方では、個々人の利害の総和から「相殺しあう」ものを除いたうえでのこる「差異の和」だそうです。よくわかりませんね笑

結局、彼は一般意志を算術的なベクトルの和のようなものと措定しています。とりあえずこれはこれでおいておくとします。

 

むしろ無意識的欲望としての一般意志

次にフロイト。ここでは無意識の重要性について力説し、実は一般意志は無意識(欲望)の集積であると言っているように見えます。そしてそのような無意識的欲望はツイッターなど、オープン過ぎて他者性を感じない環境に発露すると言っているようです。

本来「正しい」一般意志がそんなSNSの欲望垂れ流しのつぶやきの和でよいのか分かりませんが、SNSが無意識的発言の集積たりえることは何となくわかります。故にか、名称は一般意志2.0、ネット時代の無意識的欲望のつぶやきの集積、といったところでしょうか。でも、まあ不思議、かつてのルソーの一般意志は全くの想像の産物でしたが、現代の情報化社会では一般意志2.0は現実に想像に難くありません。

 

一般意志2.0を可能にするビッグデータ

そしてグーグル。検索のサジェスト機能が示すようにグーグルは大量の検索データを集積しています。東氏はこのような大量のデータベースがキーになると考えているようです。今でいうところの所謂ビッグデータから人々の無意識的欲望を形にすることを要求しているように私は理解しました。つまり、一般意志2.0のインフラとしてグーグルが持つようなデータベース(ビッグデータ)が措定されます。

 

上記をあわせると、当初に書いたニコニコ動画方式の法案審議、みたいなものをやりましょうぜ、ということを主張しているようです。イメージは審議中にモニターに意見やコメントがどわーっと流れてくるやつです。

 

ニコニコ動画式議論で、オープン議論化、全国民政治参加へ

まずこの方式の良い点。これまでの定石?であった密室での決定を衆目に晒すことを可能にします。政治って年取ったおっさんがこそこそ勝手に決めているというイメージありますよね。そこにニコニコ動画式に審議の内容に対する感想が流れてくる。国民の無意識の総体ないし欲望がここで可視化されます。勿論、ビックデータから導かれる無意識的意識的欲望の数々ですから、政治家は言わば国の「理性」としてそうした欲望との対峙も要求されます。少なくとも完全無視はできません。

 

またこの専門化した情報化社会で、政治参加のコストを圧倒的に下げてくれる可能性があります。市民運動とか、政治家になるとか、もう普通出来ないじゃないですか(時間も金もキャリア?も浪費する?=コストかかる)。というか、国会で何をやっているかなんて、多くの国民は分からないわけです。それを勉強するだけでもコスト。でも内容を説明されれば感想くらいは言えますよね。税金が上がると言われれば即刻やめてというでしょうが、将来のためと言われればちょっと考えてしまう。こうして我々が意識的・無意識的につぶやいたコメントが政治家と対峙することで、国民は無意識的に政治参加することになります。

 

相対価値社会ではエリートよりも衆愚の方がましか?

他方「衆愚」に陥る可能性は否めません。ただ、何をもって「衆愚」とするかはまた難しいところ。この専門化した社会、絶対的価値観がなくなった今、どこまで「選良」(エリート・官僚・政治家)の決断が正しいと言えましょう。何かの専門家がコメンテーターとしてワイドショーに出ていたりしますが、その筋の専門家でもほかの事では素人同然なのです(あるある)。むしろ相対的無意識的欲望こそが意思決定に叶うものかもしれません(ちょっと怖いけど)。

また筆者はやや希望観測的に、人間の動物的共感というワードを提示します。利害は別として、苦しんでいる人がいたら、憐みの感情を「無意識」的に持ってしまう、と。

つまりこういうことかしら。国会中継ニコニコ動画でやっていて、実際の政治家も四苦八苦しながら流れるコメントを受けた発言をする。1視聴者に過ぎない私は審議と関係あることないこと取り敢えず政治家のオッサンにネガティブになりそうな投稿を繰り返す(無意識的欲求?金満政治家に対するルサンチマン?それもまた無意識か?)。それでも必死に答弁を頑張る政治家を見ているうちに、すこし応援したくなってきて、徐々に攻撃から応援、さらに審議の内容を知りたいという欲求に転じるとか?

 

私の理解であっているかは分かりませんが、このような形で、動物的な無意識的欲求をベースに(ニコニコ動画式)、ガラス張りの劇場で政治家の討議・熟議が理性的に果たされる、そしていざとなれば人間の共感が発露されどうにかうまくいくのでは、という感じか。こういう形で政治を展開されてはどうでしょうという提案だと思います。

なお作品ではほかにもアレントハーバーマス、ロールス、ノージックなどを援用しつつ議論をまとめてゆきます。

 

おわりに

ということで非常に刺激的な本でした。「夢を語ろうと思う」というセリフにたがわず、確かに実現するためには多くの決め事を決着する必要があります(ビッグデータからコメントを生成するアルゴリズムをどうするか、当該システム構築する企業は私企業でいいのか公社化がよいのか等)。だから今の体たらくの政治では何も決められずおよそ実現は難しそうですよね笑。

それでも現状の政治を良しとせず、それを具体的にこう変えるべきだと語った点は非常に素晴らしいことと思いました。当初は眉唾物で読み始めましたが読後は「ありかも」という感想を抱きました。

日本の政治を憂う方、民主主義ってどうなのと感じる方、現代思想が好きな方等々にお勧めできる作品だと思います。

 

評価     ☆☆☆☆

2022/10/31

くすっと笑える米国版爆笑小ネタ集 |『ANT FARM』SIMON RICH

お笑いやジョークというのは実は非常に高度で難しいものだと思います。あえて言葉を字義通りに表現せず同音意義をとってみたり、有名な諺やクオートに当て擦ってみたり。

かくいう我が愛妻も「日本のお笑いで笑えるようになってやっと日本語が上達したって感じた」と言っています。その割にキレると語尾が「〇΃ΑΑΓ.ДԢהג∑∰∤≃」とかってなっちゃうのはどうにかならないかなあって思うけど。。。


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ひとこと感想

一言でいえば本作はユーモラスな小噺集といったところ。探偵ナイトスクープで例えるならば爆笑小ネタ集といったところ。

要は小ネタ集

ひとネタ2~3ページのごくごく短い小噺で、くすっと笑えるようなものが60弱収録されています。そう、本家と同じで爆笑と銘打つ割にはくすっと程度。個人的にはそのくらいが自然で好きですが笑

でも通して読めば、確かに笑えるのもあれば、これはなぜ面白いのか、というものが取り混ぜな感じ。これはおそらく単語力のほかにも文化とかより深い文脈を理解する力が足りてないのかなあと思います。家内の日本語観の点でいえば私の英語力はまだまだということか。

 

その中でも面白かったのは1「Slumber Party」, 2「crayola.co」, 3「love coupon」の3つ。1.はいわゆるお泊り会。中学生くらい?の男子どもが親の不在の子の家に集まり、酒でも見つけて飲んじゃおうぜ、というシーン。各人手分けして酒を探すと、出るわ出るわ。オヤジさんのベッドの下、オヤジさんの薬箱の裏、オヤジさんのトイレの奥、地下室からは密造酒、さらに末妹の部屋からも発見。最後にオヤジさんの思い出ボックスの中にも、という話。読みながら「オヤジ、アル中かよっ」と突っ込みたくなるボケ話。

 

2.はクレヨン会社のマネージャと商品開発スタッフとの会話。毎週クレヨンの新色を開発しないといけないのだがネーミングがいまいち。少し休んではどうかというマネジャーの提案にスタッフは固辞。ではその新色のネーミングはどうかというと「Sad Blue….Sad Green….Horrible Red…..Really Sad Blue…..Divorce Pink…..Divorce Brown….Divorce Green 」、つまり私生活に問題があるわけですね。さらに「Adultery Red…..Ultimatum Pink…Lawyer Green….Settlement Blue….」と、より具体的になっていくところがブラックジョークですね。オチはいまいち理解できませんでしたが、展開で面白さが実感できます。

 

3.は半分以上下ネタです。高校卒業くらいに付き合っていたラブラブな時に自作したフリークーポンのネタ。別れて12年以上たっている相手のところに押しかけて「この手料理フリークーポン使いたい。手料理食わせてくれよ」「ねえ、ちょっと待って、私もう結婚して子供もいるのよ。あれから12年もたっているのよ」「でも有効期限も何も書いてないじゃん。だから有効でしょ。あとこのXXXさせてくれるっていうクーポンも今すぐ使いたい。家に数枚あるから明日も使いたい」と続きます。若気の至り?が災いを呼ぶ(単に相手が常識知らずだった?)という教訓話!? 冷静になるとキモいですが、勢いで読ませます。

 

補足情報

ちなみに筆者はハーバード大卒業なのですが、在学中に出版したところが話題だったのでしょうかね。Thurber Prize For American Humorという賞の2008年ファイナリスト作品とのこと。なお筆者は同賞を2019年に受賞(受賞作「Hits&Misses」)。

www.thurberhouse.org

もうひとつ、ちなみに。アマゾンで検索したら18歳以上ですか?と問われた笑 どうやら本作、アダルトの分類になっているらしい。ひょっとしてlove couponが理由か?笑

英語は難しくないです

あと英語ですが、そこまで難しくありません。高校卒業程度であればスイスイ読めると思います。ただ何で面白いのかがわからない箇所がしばしばあるのでそういうのは米国在住経験のある方だとより理解できるかもしれません。

おわりに

ということで英語小ネタ集でした。SIMON RICHというかたのインタビューを以前聞いていて本も買ってみようと思った次第でした。なかなか面白かったんだけど、私は小ネタ集よりも物語の方が好き。次からはもう少し概要についても調べて買わないと、と実感しました。

 

評価     ☆☆☆

 

 

純文学のような探偵もの!?|『ダマシXダマシ』森博嗣

本との出会いは様々

本との出会いは様々です。店頭でのジャケ買い、友人知人からのおすすめ、新聞の書評欄、電車のつり広告など、はたまたブログでの書評など。

私の場合、やはり子供が切っ掛けであることが多いです。要は子供の取り組んでいる国語の問題文です。でもこれ、実際面白いんですよね。インスパイアされます。重松清さん、瀬尾まい子さん、森絵都さんは本当によく見かけます。実際これがきっかけで読み始めました。そして論説文ですと、最近よく目につくのは鷲田清一さんとか東浩紀さんとか。こんなのも高校受験で出ちゃうんだぁ、と驚いてしまいます。あ、もちろんほかにも色々ビッグネームも含め出てきますが、あくまで私に「刺さった」ものだけ挙げています笑

 

で、森博嗣さん。
そう、遂にこの前、問題文でお見掛けしたんです。何だったかな、科学論か何か。
確かに、今までしょっちゅう噂は聞いていました。書評のブログとかでも本当によくお見掛けする作家さん(教授?)じゃないですか。でも、読んだことなかったんです

 


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気を付けて!シリーズものだから

ということで、チャレンジしてみました。

実際は二冊ネットで購入し、一冊は論説系のやつにしたんです。それ以外にも推理小説とか色々書いて入らっしゃるようでしたのでAmazonで検索をかけたら割と上位にでてきたこちらをもう一冊としてチョイス。

・・・購入後、手に取ってまじまじと帯を眺めて気づきました。

「Xシリーズ、ついに完結!」

はい、シリーズ物の最終巻を最初に買うやつ。。。
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皆様、ネットでのお買い物にはお気を付けください・・・

 

でもよくよく調べると全六冊のシリーズ。そこまでロングシリーズでもないか。題名からしてもなんだかまあ読めなくもないだろうと、腹をくくって読み始めました。

 

やっと感想です

で、印象ですが、面白いのですが、非常に淡々としたDetectiveものだなと感じました。

きっとこれは主人公で探偵事務所所長代理たる小川令子のキャラ設定ゆえかなと感じました。ちょっとボンヤリ、頑張り屋さん、だけど妻ある身の男性と恋愛しその男性を亡くしたなんていう、エッジの有り過ぎる過去を持つ。厭世的とまではいかないまでも、気持ちの抑揚の幅が(年の割には)少ないような印象を受けました。

ただ、こうした設定ゆえに、やけに鼻が利くバイトの真鍋とのやり取りが冴えてきます。夫婦漫才的な。

あと、所長の椙田ってのがミステリアスな存在で、最終巻でも結局謎な存在のまま消えてしまいした。このお名前ですが、名古屋近辺の方だったらきっと椙山女学園とか思い出しそう(今さらですが、女学園ってすごい淫靡な雰囲気の言葉でないですか!?)。あ、オチとかないです。単なるつぶやきです。

 

おわりに

ということで、初の森博嗣さんの作品ですが、楽しく味わいました。私の好きな探偵・刑事ものでしたし。ツイストの効きすぎたエンタメ作品というより、やや純文学よりの探偵もの、という雰囲気です。

このシリーズは頑張って初めから読んでみて、また本作を再読したいと思います。

 

評価   ☆☆☆☆

2022/10/29

傑作の名に恥じない面白さ。150年前が信じられないモダンさ |『A STUDY IN SCARLET』SIR ARTHUR CONAN DOYLE

最近集中力に欠けています。10月はPride&Prejudice(Jane Austen)を読んでいたのですが、英語が難しく全く集中できず、遅々として進まず。結局忙しさにかまけて読まなくなってしまい、挫折。積読棚へ移行しました笑

英語は習慣的にコンスタントに触れていたいので、取っつきやすさ第一でこちらをチョイス。実はそこまで取っつきやすい英語ではなかったのですが、結果的には大満足な読書体験でありました。

 


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シャーロック・ホームズシリーズは今まで映像モノは随所で見ていたものの、書籍では初めてでした。1884年に医業の余暇(!)で綴った処女作、いやあ面白かったです。多才な人は羨ましいですね。

 

英語はちょっと難しい

さて本題。内容は非常に面白く、殺人舞台、被害者、それを推理するホームズも、すべてスリリング。ただし、英語はどうもとっつきづらい。これが第一印象。

これまでアガサ・クリスティの作品をいくつか読んできましたが、辞書を引いた単語は1ページに2,3語とか、調子が良いと数ページ辞書を引かずともすらすらと読めるものでした。しかし、本作ではコンスタントに1ページ10単語程度辞書を引いています。

この英語の難しさはひょっとすると一つのセッティングかもしれません。作中ではワトスンはアフガニスタン帰りの負傷兵(衛生兵?)で前線から戻ってきた医師という設定。その彼の一人称で物語がつづられてゆきます。医者からの視点なので、殺人は毒殺であるとか、鼻孔からの出血だとか、動脈瘤破裂だとか、そういう医学用語が多かったのは一つの理由かと。またホームズも謎のインテリといった描写をされています。やや気取った風の紳士を描写するのに、難しめの単語が多用されたのかもしれません。ま、単に私の英語力がないだけだったという可能性は多分にありますが笑。

 

後半の自然描写、情景描写がまた良い

前半は殺人事件とその推理に費やされますが、後半から46ページ(全体の3割強)に渡り、舞台を米国中西部の現ユタ州へと移します。遭難した開拓者とそれを助ける移動中のモルモン教徒との邂逅。やがて彼らがソルトレイクシティへ定住する様が描かれます。遭難の様子も生々しいのですが、初期のモルモン教ポリガミー・一夫多妻制やそれに反対し逃げ出したかつての遭難者父子らの様子は、新宗教からの脱退者かのようでした。この追走劇も手に汗を握るものでした。

米国に住んだことはありませんが、個人的にはモルモンは毛色はちょっと違うけど、まあまだおとなしめ?の宗教のカテゴリに今では入っているという印象でしたので、本作での邪教的扱いはちょっと驚きでした。こちらは米国の史実もベースにしているようですので、改めて米国の歴史のダイナミズムに畏怖にも似た思いを持ちました。

 

で、エンディングですが、なかなかキレイに終わります。勧善懲悪的な結末ですかね。まあハッピーエンドと言ってよいのだと思います。内容は読んでみてのお楽しみです。

 

おわりに

ということで、古さを感じさせない、まさに傑作といってよい作品であると感じました。殺人と不可解なトリック、これを解き明かす探偵。なんと、刑事ものの枠組みは今から150年前に既にここで示されていたことに驚きです。

気取った英語も学びたいので他の作品も読んでみたい気もします。探してみると、Kindleで全集みたいのが数百円という非常なる廉価で売っているんですよね。

 

この安さにはつられますが、紙の手触りを感じながら一冊一冊読むのもまた捨てがたいんですよね。悩むなあ。

 

評価     ☆☆☆☆

2022/10/28

 

 

 

 

モルモン教については当初の一夫多妻制(現在は廃止)のため、ソルトレイクが米国に併合される際にひと悶着あった旨が森本氏の著作でも書かれていました。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

アガサ・クリスティの作品は実に読みやすい。5冊しか読んでいませんがそのうち一番といえばこれ。

lifewithbooks.hateblo.jp

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