海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

外交に国運を賭するヴェネツィアと、翻弄される人民 |『緋色のヴェネツィア』塩野七生

皆さん、こんにちは。 私事ですが、毎年Year Resolutionを作成しています。簡単に言うとプライベートでのKPI。この中で数年前から旅行KPIというのを作っており(実際は奥様の満足度向上KPI、という名称なのですが)、なるべく家内を旅行に連れ出すという事を…

次第に全貌が明らかになるエログロ・サスペンス |『民宿雪国』樋口毅宏

皆さん、こんにちは。 上の子の高校卒業式に参加してきました。 いやあ、青春っていいですね。式が終わった後は講堂から出て、生徒一同で制服のネクタイ(通称『たくあん』:金色・黄色だから)を一斉に放り投げるというシーンも。その後は生徒同士、仲間同…

ニューヨークトリビアと凶悪犯との対決 |『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー、訳:池田真紀子

皆さん、こんにちは。 この前約10年ぶりにYahoo!オークションを利用し、文庫本をバルクで購入しました(塩野七生さん関連ですが)。 実は事前にメルカリも見たのですが、概観としてメルカリは高く、Yahoo!オークションは軒並み安いという結果でした。 同じ商…

2人の刑事の掛け合いから繙かれる3遺体の真実 |『パズル』恩田陸 

皆さん、こんにちは。 そろそろ異動の時期ですね。私は外国でこじんまりと自らサイロを築いてぼちぼちやっています。しかし、所謂駐在さんはそうはいきません。異動の示達があります。 私の一つ下の上司君は、次はなんとブラジルだそうです。と、遠い・・・…

話すこと・吐き出すこと・受け止めること。終末に救い。 |『十二人の死にたい子どもたち』冲方丁

皆さん、こんにちは。 この前あっという間に二月が終わったとか言っていました。舌の根が乾く間もなく、日本へ帰国致しました。 これから両親の確定申告を代行します。溜息が出ますが、引退世代の年金額が凄まじい・・・。私は逆立ちしてもこんな額はむりぽ…

ノワール系エンタメ小説。最後のツイストにガクブル |『去年の冬、きみと別れ』中村文則

皆さん、こんにちは。 あっという間に2月が終わってしまいましたね。早いもので2/12が消化されてしまいました。 仕事でもプライベートでも「これやりたい」の年間計画を立てたものの、早速遅延気味です。 PDCA的にはCAをいかに上手にやるかが個人的な課題で…

ユーモアと不穏さの通底する音楽短編 |『夜想曲集』カズオ・イシグロ、訳:土屋政雄

皆さん、こんにちは。 高3ボーイズが日本へ帰っていきました。うちのムスコはもう少しこちらにいる予定です。 そして程なく私もまた日本へ一時帰国。ムスコ君の高校卒業式、大学入学式、そして脳のパイパス手術とイベントが続きます。 仕事や生活にリズムが…

新たな作風の模索!? 伊坂作品に珍しい短編集 |『ジャイロスコープ』伊坂幸太郎

皆さん、こんにちは。 息子を含めた高校三年生4人組。せっかく東南アジアの端っこまで来てくれたのだからと、やれ世界遺産の街へだとか、やれこれがおいしいから食ってみろとかで、有給をとってあっちこっちへ連れまわしています。 4人もいると性格も行動も…

読み口良すぎ。宝石をタイトルにした多様なストーリー。 |『サファイア』湊かなえ

皆さん、こんにちは。 高校卒業前の今、ムスコがこちらに友人3人を引き連れて帰ってきました。で、なんというか実に面子が多様。 うちの子が一応アジアハーフ。連れてきたのは、ドイツ在住15年の子(英語の方が得意)、カナダと日本のハーフ、そしてこの前初…

お笑いなし!?大阪の夜の街を綴る純文学作品 |『地下の鳩』西加奈子

皆さん、こんにちは。 突然ですが、最近体調がよろしくありません。よく眠れないのです。 これまで食事、運動、睡眠、とコンディショニングにはそこそこ気を遣ってきました。月初に旅行から帰ってきてから、旧正月のあいさつ回りを経て、昼夜逆転・飲食過多…

作品の書き口と大分ギャップがある!夢想家?天然? |『とにかく散歩いたしましょう』小川洋子

読了してから一週間近く経ってしまい、印象が薄れてきています。 こういうとき、電子書籍というのはちょっと面倒ですね。読中メモは残せますが、私の端末は手書きのようにササっというわけにいかない。というのは私の持っている端末がかなり古いからですが。…

作家の多才ぶりを見せつける奇想短編集 |『いのちのパレード』恩田陸

皆さん、こんにちは。 私はそもそも本好きではありましたが、社会人になってからはそれ程本は読んでいませんでした。きっと読んでも10冊あったかどうか。 思い返せば、本をゴリゴリ読むようになった切っ掛けは2つほど。 10年前、日本から逃げるように海外に…

マイクロマネジメント神、降臨! |『七十人訳ギリシア語聖書』出エジプト記、訳:秦剛平

さて、昨年から始めている聖書読んでみようキャンペーンですが、今般旧約聖書の出エジプト記を読了しました。 ひとこと 結果から言うと、ループ的記述と、マイクロマネジメント神、が印象的です。 神さまは我慢強い?というかTry&Error好き? 本出エジプト記…

安定の「静謐」さで世界を優しく描く。 |『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

皆さん、こんにちは。 当地では旧正月を迎えました。 激しく鳴り響く爆竹を十数分と親族との過食?とを堪能しました笑 改めて思いますが、華僑の方々は本当に家族を大事にしますよね。集まりが大好き。そして話好き。私は広東語が喋れんので、連れていかれて…

軽妙な筆致でワイルドな軽自動車旅行を綴る。楽園、見つかりましたか? |『今夜世界が終わったとしても、ここにはお知らせが来そうにない。』石澤義裕

皆さん、こんにちは。 とうとう居所に戻ってきました。 当初、ローマからアブダビで乗り換えの予定でしたが、ローマでの出発が遅れ、乗り継ぎに接続できず。結局、アブダビからドーハ、ドーハから居所へ戻ってきました。 驚いたのは、EUでは飛行機が当初予定…

意外に読める女性の恋愛バトル!? |『彼女の嫌いな彼女』唯川恵

イタリアで一番?印象に残ったピサの斜塔。 皆さん、こんにちは。 とうとう短い旅行も終わりに近づきつつあります。これまでヨーロッパはフランスと今回のイタリア、二つしか行ったことがありません。で、もし、住めるとしたら、と考えると、やはりイタリア…

社会の同調圧力と狂気の一個人との相克 |『コンビニ人間』村田紗耶香

滞在先のAirbnbの宿からアルノ川を望む。一泊一部屋一万一千円也。 皆さん、こんにちは。 フィレンツェで感じたのですが、こちらは「犬天国」であります。電車の中にも犬、お店の中にも犬、散歩のお供に犬。本当に多くの現地の方が犬を連れて歩いています(…

人間を通じて辿るローマ通史 |『教養としてのローマ史の読み方』本村凌二

皆さん、こんにちは。 数日前までローマにおりました。皇帝の像とか、ヴァチカン博物館に確かにたっくさんありました。んが、改めてローマ史は書籍で読むとなかなか難しい、と感じました。 かつてギボンの大著も、本村氏の別のものも読んだことがあります。…

村田さん、天才か!?すごいディストピア |『信仰』村田紗耶香

皆さん、こんにちは。 たまには気まぐれを起こすものだなという話を。 私はかなり頑固だと思います。決まった仕事を決まった計画で淡々とこなすことが好きです。 読書に関しても同様で、価値の定まったものに一定の時間を割き、じっくりと堪能し尽くしたい思…

古代ローマ入門。説明・ビジュアルが理解を後押し!|『古代ローマ 饗宴と格差の作法』祝田秀全

皆様、こんにちは。 旅行に出ていて感じるのですが、普段より疲れます。まあ、遊んでいて疲れるとか言って生意気な話なのですが。 考えれば、自宅勤務だと8時45分の始業ですから8時過ぎに起きても問題なし。終業17時45分ぴったりにPCをシャットダウンするこ…

「閉塞感」「喪失感」の中に希望と恢復を描く |『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹

(前段与太話です。失礼します。) 皆さんこんにちは。 突然ですが、今まで一度に大きな買い物(キャッシュアウト)って、どれくらいでしょうか? いやあ、実は私のところの1月のクレジットカードの請求額を見ていてちょっとたじろいだって話ですが。78万7,4…

結構有名なエピソードいっぱい |『七十人訳ギリシア語聖書』創世記、訳:秦剛平

昨年から引き続き今年も聖書にチャレンジの年にしていきたいと思っています。 昨年は所謂解説書が多く、何だか聖書の中心で円を描きながらうろうろするばかりで、核に「ズバ」っと進むことが出来ませんでした。 新年を迎え何とかその核心に至る一歩を踏み出…

絵画って奥が深い!うんちく心が刺激される! |『恋する西洋美術史』池上英洋

皆さん、こんにちは。 私の会社では、今年から週三日のオフィス勤務が義務化されました。なんというか、これがきつい(泣) 実に甘ったれた泣き言なのですが、これが現実。金曜の晩はもうぐったり。 3-4年続いたコロナ期を経てしっかり年もとりました。また…

面白いのに、イヤミス的な後味の悪さ。その癖こそが魅力!? |『PK』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。 うちの会社、始業は8:45なのですが、週3ある出社日はいつも7:00くらいに出社します。朝早く何やっているのかというと、昨年末に読んだ『メモの魔力』を片手に1000本ノックならぬ1000問自己分析をしています。 50前のおっさんが今更?な感…

英語でエンタメ小説を!格式のある美しい英語 |『THE BODY IN THE LIBRARY』AGATHA CHRISTY

皆さん、こんにちは。 アガサ・クリスティの本を見るといつも冒頭につらつら書かれているのですが、何でも彼女の著作は世界で(累計で)三番目に多く売れたそうです。 一位は聖書、二位はシェークスピア、そして三番目はアガサです。 ・・・なんてことを聞く…

イタリアに行く予定がある方、丁度帰ってきた方は楽しく読めるかも |『イタリア 24の都市の物語』池上英洋

皆さん、こんにちは。 えー、イタリアに行くことになりました!しかも月末に!時間がない!でこの読書はそのための布石です。 日頃から金がない金がないと言っていますが、今回は完全に冥土の土産を意識しています。あとはどうにも方向の定まらない長男君(…

コンパクト・ハンディな三菱事始め |『岩崎弥太郎と三菱四代』河合敦

皆さんこんにちは。 本日は小噺なし笑 一週間疲れました。 ざっくりと タイトル通りの三菱四代についてコンパクトにまとまった作品。 四代と言いますが、ページの配分的にはざっくりと、初代の弥太郎が65%、その弟で二代目の弥之助が25%、残り10%が三代目四…

ダメンズ選手権入賞はカタいか!? |『僕のなかの壊れていない部分』白石一文

皆さんこんにちは。 新年あけてはや一週間ですが、二日から仕事をしていますと普通に正月気分ではありません。むしろここ東南アジアの端くれでは、来月やってくる旧正月にむけてスーパーではミカンの販売が多くなり、街はオレンジ・赤の雰囲気が強くなります…

世のプレイングマネージャー諸君、君たちは聖人君主たりうるか |『部下が勝手に活躍する魔法の質問』伊藤治雄

50間際の窓際として、今まで一人でやっていた仕事に、部下を付けられました。 でも、何だかうまくいきません。 アニメの世界だと無骨な職人は一見ぶっきらぼうも、大抵は根が優しいもの(無骨で恥ずかしがり屋でね)。でも私はダメでした。大声こそ出さない…

不条理の極北 |『日本軍兵士』吉田裕

皆さん、こんにちは。 私は、日本軍関連の書籍が存外に好きです。 別に、子供のように強いもの・大きいもの・早いものが好きというわけではありません。むしろ、何でここまでひどい状況になってしまったのかという組織論的な関心、あるいは、このような悲惨…

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