海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

紋切り型若者論を鮮やかに喝破、現代の若者の気分をロジカルに抽出 |『絶望の国の幸福な若者たち』古市憲寿

こちらも、私の母親のスーパー積ん読文庫(処分済み)から救出された一冊です。 この前『戦争が遺したもの』という日本論・戦後論の本もこの処分本から救出しましたが、母はこういうの好きだったのかな?っとふと疑問に思いました。その割に、背に付いている…

文体からにじむユーモアと鋭さ|『やがて哀しき外国語』村上春樹

長崎に旅行で来ています。残念ながら雨模様の天気なのですが、それでもやはり日本はいいですね。海外とは比べ物にならないサービスの良いLCC、田舎に行っても便利で正確な公共交通機関、芯から温まる温泉、そして何より多彩なローカルの食べ物! 来週も仕事…

長崎のカステラから垣間見るぶっとび父ちゃんの歴史|『かすてぃら』さだまさし

私事で恐縮ですが、来週長崎に家族で旅行に行こうと考えています。 一家の人柱を自認している私は、各種予約、旅程表作成も自分の仕事と理解しております。そして最後の仕事は、旅行先が舞台になっている小説をチョイスand読むということ。 うーむ。長崎が舞…

自分の「好き・得意」を中心に自己分析。ただ、社会の変化は速いぞ |『ライフピボット』黒田悠介

日本では今週に入りぐっと暖かくなってきましたね。近所の川べりの桜の数本は慌てて少し咲き始めました。 海外に居所をもってはや9年目ですが、ことしはそれ以来のお花見が出来そうです。 会社に縛られる時代の終焉。じゃあなにする? 起業や副業・複業。 こ…

世の価値観の変遷に思うアクティビストの役割|『動物の権利』編:ピーター・シンガー、訳:戸田清

この前、高2の息子がオンラインでクラスメートとディスカッションをしていました。お題は『動物園は廃止するべきか?』 そしてマイク越しにムスコが喋った言葉に耳を疑いました。 『いや、ピーター・シンガーの議論もさあ、slkdurfap〇▽&^%#@$E』 むむ…

面白い!私家版「世にも奇妙な物語」|『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ

最近、こっそりはまっている朝井リョウ氏の作品。 エッセイはかなり面白いと感じており、ノンフィクションはどうかと、先日「どうしても生きてる」を読んでみました。まあ、それは普通かなーという感じでした。 懲りずに読んだのがこちらの作品。読後に娘に…

穏健で好印象、効きそう。いい人過ぎてインパクトは弱め |『医師がすすめる少食ライフ』石黒成治

これまで色々な健康系の本を読んできました。 痩せていたいとかスタイルを保つという目的がゼロではなかったのですが、基本はコンディショニングが目的です。サラリーマンたるもの、元気に出社して始業とともにフルスロットルが踏めてなんぼだという信念があ…

ちょっぴりドジな世之介が紡ぐ青春小説|『横道世之介』吉田修一

今回は一月半ばから、かなり長めに一時帰国していますが、つくづく日本の季節の移り変わりの美しさは素晴らしいと感じます。2月の初めは蕾だった川沿いの梅は今や満開。白やピンクに咲き誇り、はらはらと花びらを風に散らします。あぁ、何と可憐で、儚く、美…

内容に目新しさはないも、経験者ゆえの言葉の重みあり |『50代から実る人、枯れる人』松尾一也

みなさんね、まあーこんな本、手に取らないと思うんですよ。 50代?いやあ、おっさんだし。遠い将来のことだし。って、そう思うでしょ? あっという間にやってきまから!!! ・・・ここから先の将来の仕事・お金に不安なアラフィフの私。何とか先人の知恵を…

突き抜けて人の良い肉子ちゃんに思う|『漁港の肉子ちゃん』西加奈子

本作は私にとって再読でありました。 きっかけは近くの市民ホールでやっていた映画の再上映です(因みに700円!)。 映画があるのは知っていましたが、見たことはありませんでした。ならば見た後に再読しようと思い、手に取りました。 ひとこと そうですね。…

アホなノリが病みつきに!|『風と共にゆとりぬ』朝井リョウ

朝井氏のエッセイは2作品目です。昨年、「時をかけるゆとり」で、その真摯なアホさ加減に驚愕しました。 中学生の娘(日本語いまいちな子)が「電車で吹いちゃう」との感想を漏らしたことから、我が家での氏への評価がうなぎのぼりとなり、本作の購入に至り…

フリーランスさんの、ほのぼのエッセイ |『フリーランスの生活をぶっちゃけてみました。』大塚さやか

この手の本を手に取るときは、エッセイなのか、はたまたハウツー系なのか、ちょっと思案します。私が求めるのはハウツー系。会社に依存しない生き方が展開できないかと検討しているからです。 フリーランスのぶっちゃけ話 で、本作はどっちかというと、エッ…

英国移民の厳しい現実をえぐる。引き込まれる佳作 |『The Year of the Runaways』Sunjeev Sahota

ランキング参加中読書 ランキング参加中書評 日本では外国人労働者の受け入れには否定的、労働力だよりの移民には断固反対。こんなニュースをしばしば耳にしてきました。 ところが、コロナ後に何度か一時帰国すると、ワクチン接種を確認するファストトラック…

青春ストーリーとして読みました|『AKIRA』大友克洋

ランキング参加中書評 やっと下の子の高校受験が終わりました。となると、上の子同様、下の子も彼らの祖父母宅(私の実家)から学校へ通うことになります。 実家を出てから、実家を倉庫代わりに使っていたことが多くあったことを今更ながらに反省しておりま…

短編でも、随所に光る谷崎的エートス|『美食倶楽部 谷崎潤一郎 大正作品集』谷崎潤一郎 編:種村季弘

本作も、我が母親のスーパー積ん読文庫処分品から救出された一作。 母親に聞いたところ、生協(食品とかの宅配の)に本のカタログがあり、そこで気になる本を買うそうな。 谷崎潤一郎のイメージというと、耽美、エログロナンセンスあたりが思い浮かびます。 …

絵入りで、文字が大きくて見やすい |『退院後の生活を支える本 脳梗塞の再発を防ぐ』監修:岡田靖

もうこれ、完全に私のためだけの読書で、皆さまの参考になる気がしません・・・。 普通にスルーしてくださればと思います笑。 軽度の脳梗塞の経験者です。 私は幸い、麻痺も残らず、入院もせずに済みました。しかし、一時でも麻痺・呂律が回らなくなる経験を…

コロナを経て現実味が増すノマド的生き方 |『ノマドライフ』本田直之

お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、最近、(今いるところとは違う)海外で、雇われないで生きていけないかと思案しています。 オンラインで仕事をするとか、はたまた地域密着とか、色々な方法や可能性を考えている最中です。数年がかりの検討にはなると…

食堂や食べ物の話はよし、ストーリー展開は入り込めなかった|『食堂かたつむり』小川糸

小川糸さんの作品はこれで二作品目。以前読んだのは「ツバキ文具店」という、手紙の代書屋を営む女性が主人公のとても可愛らしい作品でした。 その時の印象をもって本作を手に取りました。 で本作。感想は、曇りのち晴れ、いまいちだったかなあ。 料理・調理…

「私」の視点から語る戦後昭和史|『戦争が遺したもの』鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二

私の母親のスーパー積ん読文庫(処分済み)から救出された一冊です。 思想系の作品が気になる私にはビビビとくる著者のお三方であり、手に取った次第です。 対談集だけど良かった 対談というと、大抵話者の言いたい内容が散逸し、やっぱり単著を読めばよかっ…

激動の明治大正昭和を駆け抜けた、いち翻訳家の生涯|『アンのゆりかご』村岡恵理

先日、齢80を迎えようとする母のスーパー積ん読文庫を、実家へ帰ってきた私の姉が処分するべく整理していました(一応母の希望)。その中から面白そうなものを数冊救出して、こっそり読もうと思った中の一冊が本書であります。 ちなみにこのスーパー積ん読文…

瀧本式一段深い読書のススメ |『読書は格闘技』瀧本哲史

余談から始めるのもなんですが、昨夏に続き現在一時帰国しております。娘の高校受験に際して入学手続き等の関係で二カ月ほどは滞日する予定です。 「よくそんなに休めるねー」とは年配の親族の発話ですが、休んでいません。リモートで仕事をしています。 そ…

若者はいつだって、どこに居たって、無鉄砲! |『ペルセポリス』<I><II>マルジャン・サトラピ、訳;園田恵子

イラン、というと皆さん何かイメージは湧きますでしょうか。 正直、なかなか難しいのではないでしょうか。 私もイスラム教、イラン・イラク戦争、くらいしか直ぐには思い浮かびませんでした。多少詳しい方ですと、シーア派、ホメイニ氏、などは思い浮かぶか…

コンパクトで理解しやすい脳梗塞入門書 |『詳しくわかる脳梗塞の治療と安心生活』監修:高木誠、四津良平

それは今年の一月二日の夕方でした。 家内の下半身のたるみが伝播して脳までたるんでボケられては困る、などと結構なディスりを吐きつつ家内をコンドのジムに連れていき、共にひとあせ流してジムから出ようとしていたところでした。 私を見る家内の顔がどん…

パルプフィクションぎりぎりをエンタメへ昇華!?|『土か煙か食い物か』舞城王太郎

お名前は見かけていましたが、その名前故に避けていたところがあります。だって、なんというか狙っている風のネーミングというのでしょうか、ちょっとふざけている?感を勝手に感じていたのです(作者名も作品名も)。読む前から「キャッチーな外面で内面を…

ロジカルシンキングで考える移住!? |『継続できる海外移住』五十嵐唯、宮下なみ子

移住って言葉は私にとってはかなり魅力的。 日本を離れて、誰も知らない国で暮らしてみたいなあって思います。というか、しちゃいましたが。ただもう9年も同じ土地に住むと少し飽きが来るのも確か。 気力があるうちにもう一か国行けるか?最近同じことを繰り…

副業の手始めに。視野の広がる本 |『小商いのはじめかた』監修:伊藤洋志 編:風来堂

近年、企業でも副業を許すっていう報道があると思うんです。終身雇用や年功序列が崩れ、ラインの管理職になれない年配者がどこの会社にもわんさかいるんじゃないかと想像します。そういう給料が上がらない人は自分で知恵を絞って稼いでね、という社会からの…

読み聞かせに使いたい素敵な絵本 |『ラ・フォンテーヌ寓話』ラ・フォンテーヌ 絵:ブーテ・ド・モンヴェル 訳:大澤千加

うちの母ですが、積読がすごい。 一回買った本を読まずに積み、忘れてもう一度買いまた積む。それを同居するうちの息子(祖母と孫の関係)が指摘したりしなかったり。そんな母も八十の声を聞き、娘(私の姉)の助けを借りてもう読まないだろう本を根こそぎ整…

中小国家群の悲哀、違いを包含しASEANへ |『入門 東南アジア近現代史』岩崎育夫

昨年、現在居る国のいわゆる永住権を申請しました。移民局に何度か赴き、家内と一緒にインタビューを受け、さらには警察本部で現地語のインタビューも受けたのでした。英語ならまだしもローカル現地語はさらりとしか勉強しておらず、「妻を愛しています!」…

押し寄せる閉塞感。とにかく重い|『どうしても生きてる』朝井リョウ

朝井氏というと、どうしても若いなあというイメージがあります。 先般読んだエッセイ『時をかけるゆとり』も若気の至りを十全にエンジョイしている様子で、非常に瑞々しく感じました。 ならば小説はどうかと手に取った本作。前回感じた感想とは正反対の、ひ…

実践的PDCA本。徹底したロジカルシンキングでPを明確化する |『鬼速PDCA』冨田和成

一年の計は元旦にあり、と申します。私もこれまで、正月休みを利用して、今年はこれをやるぞ、あれをやりたいなどと散々決意を固めたりしてきました。 だけれども、残念ながら、そうした目標が大概うまくいかず、時に忘れ、時に三日坊主程度、良くて数カ月し…

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