海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

2020-01-01から1年間の記事一覧

2020年の読書を振り返ります。印象に残った10作品。

おかげ様で、当方のブログが2019年12月から始めまして一年が経過しました。名も知らぬ皆さまに見てもらえて、有難い限りです。ここに御礼申し上げます。 本以外に少し2020年を振り返り さてコロナ一色であった2020年ももう終わりですね。 私にとってはコロナ…

MoMAが織りなす人間模様。芸術好き・ウンチク好きにはたまらない!―『モダン』著:原田マハ

芸術とは何ぞや? 大学院生の時にハイデガーの「芸術作品の起源 Der Ursprunk des Kunstwerks」を原書で読まされました。当時からアホでしたので、作者の意味することも理解できませんでした。まして芸術とは何かについても、答えは得られておりませんでした…

会見と印象が違う!堅実な文学作品―『共喰い』著:田中慎弥

芥川賞受賞時に「もらっといてやる」、と何か逆切れ気味だった会見ばかりが印象にあった作家さん。当時私は文学とか読書とは縁遠い生活で、仕事と家庭で精一杯の時期でした。 さて、先日図書館に出向いたところ、在庫処分?なのか無人販売所で30円で本作が販…

家族の回復と「私」の成長をユーモラスに描く。ちょっぴり悲しいけど明るい結末が素敵―『幸福な食卓』著:瀬尾まいこ

のっけからの驚きのスタート。 「父さんは今日で父さんをやめようと思う」 春休み最後の日、朝の食卓で父さんが言った。 中学教師だった父は「父さん」をやめて予備校生となる。いいんじゃないと事もなげに受け流すのは、高校までは神童と呼ばれた、超マイペ…

半世紀前のスパイ活動の実状!イギリスのエリート官僚らの様子も面白い―『スパイキャッチャー』著:ピーター・ライト 監訳修:久保田誠一

スパイ映画と言えば、一種もう固定したジャンルとして成立しています。最近で言えばKingsman、ちょっと昔だとMission Impossible、さらには古典ともいうべき007等が挙げられます。日本では縁遠い諜報機関ですが、世界じゅうに存在しています。イギリスのみな…

報道の存在意義と倫理を問いただす。皆さん新聞がなくなっていいですか―『新聞が消える ジャーナリズムは生き残れるのか』著:アレックス・S・ジョーンズ 訳:古賀林 幸

(ごめんなさい。大分長くなってしまいました。) すでに大分言い古されていますが、若者の新聞離れ(活字離れ?)が叫ばれて久しい。 若くはないのですが、私も新聞をとるのをやめてしまい、ニュースはたまのYahoo!ニュースのみです。 しかし読まないからと…

土曜日の大学で、推理小説に関する授業 from 香港―『見えないX』著:陳浩基

きっかけ 香港発の新本格ミステリ作家の陳浩基氏の作品。私はこれまで『世界を売った男』『13・67』と読んできました。このどちらもアッと驚く展開が面白く、また香港の異国情緒がなんともいい雰囲気で、私のお気に入り作家となりました。日本のミステリ…

本質的過ぎる良書。PDCAを回した後、再読したい―『イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな」本質』著:安宅和人

存在だけは存じ上げていました。ただ、ひねくれものの私は、人気が出るものや皆が欲しがるものについてはデフォルトで斜に構える性質があります。この本も、目の片隅で見ながら、5年後に残っているかねえとシニカルに思っておりました。 読後の感想です。は…

推理小説としては楽しめる!マレーシアを知るためとしたらダメ笑―『マレー鉄道の謎』著:有栖川有栖

マレーシアというと多くの日本人にとってはあまり馴染みがないとはないのではと思います。南国くらいしかイメージがなく、ひどい人だとシンガポールやフィリピンなどとゴッチャになっている方も見かけます。ロングステイ先としては近年日本では有名になって…

19世紀イギリスを文学作品を通じて読む―『大いなる遺産』著:C・ディケンズ 訳:山西英一

まず率直に感想を言いたい。結構、面白い!すんごく超絶面白い、というわけではありませんが、150年前に英国で書かれた本であることを考えると、時間的・距離的な隔たりを越えてもなお、人間というものは変わらないのだなあと感慨深く思いました。 息子が中…

新人用もしくは経験者の復習用に―『経理の仕事がサクサク進むExcel活用術』著:小栗勇人

活動制限令が続いており、自宅からの勤務で少し生活がだれてきました。折角通勤時間がゼロなのだから、その時間で業務効率化について考えようと過去読んだ本を再読してみました。 本の内容 内容ですが、題名の通り経理関連業務に従事される方向けのハック集…

太る仕組みを易しく教えてくれる(健康エッセイ風)―『人はなぜ太るのか 肥満を科学する』著:岡田正彦

活動制限令が続き、外出できずに、家のものをポリポリ食べているうちに少し体重が増えてきました。30代初頭で何度か入院をして以来、健康には気を付けていたつもりですが、人間ですので気も緩みます。 そういう時には本を読んで反省することにしています。こ…

内容が濃すぎる。米国的良心が描く日本を詰ませた生々しい米国政治の実態―『アメリカの鏡・日本 完全版』著:ヘレン・ミアーズ 訳:伊藤延司

再読してみたヘレン・ミアーズの著作であるが、またしても読後に、言いようのないどんよりとした重たい気持ちになった。 ミアーズの主張は、ごくごく単純化して言えば、第二次世界大戦で暴走した日本は西欧列強の姿そのままであるという事だと思う。それは題…

データを使った、正しい世の中の読み解き方!(極めてオーセンティック)―『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』著:伊東公一朗

きっかけ ウチの会社はどうすればよくなるか、どうすれば収益が伸びるか、どうすれば利益率が高くなるのか、何が弱いのか、どこを伸ばすべきなのか。 ・・・なんてことを、オッサン平社員の私でも、たまには小アツく思っており、そんな折に手に取り購入に至…

記憶という自己のアイデンティティが損なわれるとき、あなたは何を思うか?―『博士の愛した数式』著:小川洋子

存在については随分前から聞いていたのだが、何故か米国映画『ビューティフルマインド』の二番煎じと勝手に断定して、本作を避けてきました。 ビューティフル・マインド[AmazonDVDコレクション] 発売日: 2018/03/20 メディア: DVD ところが、このところお邪…

コレステロールだけではない。自分の体は自分で守ろう―『日本人はコレステロールで長生きする』著:田中裕幸

かつて内海聡氏の著作で参考文献として挙げられており、興味が湧き、本書を買い求めるにいたりました。 lifewithbooks.hateblo.jp lifewithbooks.hateblo.jp 内海氏は医師でありながら、いわゆる「陰謀論」的な書きぶりが目立つ作家ですが、言っていることは…

数奇な歴史を持つ家族、そして人間の才能とは?―『無限花』著:東野圭吾

皆さん、花に興味ってありますか。 私はさっぱりです。おっさん、まあまあ都会育ち、便利な生活大好き。そんな輩には、日常で花がその位置を占めることなぞ、これまでの人生では皆無に近かったです。花といって思い出すのは、嫁さんにプロポーズした時に一万…

戦中日本軍から垣間見えるダメな日本―『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』著:戸部良一、鎌田伸一、村井友秀、寺本義也、杉之尾孝生、野中郁次郎

作品について 防衛大学の戦史・歴史研究家を中心に、組織論の野中郁次郎氏(元一橋大学教授)を加え、合同研究として出版されたもの。第二次世界大戦中の代表的な戦闘を通じて当時の陸海軍の組織特性を分析している。なお、裏表紙を見るとわかる通りですが、…

人生の見本市。良くも悪くもこれぞ人間―『一冊でまるごとわかる ローマ帝国』著:本村凌二

感想 突然ですが、人はなぜ歴史学ぶのでしょうか。 私は、歴史の流れに人間の典型を見ることができるから、だと考えます。 現代に生きる我々ですが、対人関係に悩んだり、いがみ合ったり、恋したり、諸々のことに思い悩むのは今も昔も変わりません。先が見え…

美しい表現がちりばめられたイヤミス未満の純文学作品―『妊娠カレンダー』著:小川洋子

感想 以前から気になっていた小川さんの作品ですが、芥川賞受賞作品とのことで、ミーハーな気分で購入しました。 小川さんの作品は以前『ブラフマンの埋葬』を読んで以来、そのなんとも言えない素敵な文章に魅了されてしまいました。 lifewithbooks.hateblo.…

社内でのバリューの出し方。参考にはなるも驚きもなし―『最強のデータ分析組織』著:河本薫

感想 ビジネスアナリシスセンターというあまり耳なれない部署に18年間所属した著者。現在は部署を率いる立場であり、その立場から見た組織論ないしリーダー論といったところか。 会社での位置づけを高める この目新しい組織の会社での位置づけを上げるための…

信じるかどうかは別として、調べる足掛かりとして―『日本が売られる』著:堤未果

感想 これまで読んだ堤氏の著作は米国事情・米国発のグローバル企業の話が中心の感がありました。今回はフォーカスが日本であり、一層問題意識をもって読むことができました。 今回の著作のサマリは、日本政府の訳のわからん愚行によって日本の生活インフラ…

読んでもいいけど。。。ほんと、長いよ(つまらなくはない)―『ガイトナー回顧録』著:ティモシー・ガイトナー 訳:伏見威蕃

本の概要 財務省でクリントン政権時に財務長官ルービンや財務次官サマーズ(後のハーバード学長)と共にアジア危機への対応に従事したことを皮切りに、ニューヨーク連銀総裁、第75代財務長官(オバマ大統領時)を務めたガイトナー氏。彼の手による回顧録。主…

ローティーン女子の読書の入り口には良いかも。若干感覚がレトロかも―『リズム』著:森絵都

感想 かつて小学生だった娘のために購入しましたが、本棚整理の一環で再読してみました。 あらすじは割愛しますが、本作は中学一年生が主人公です。おおむねそのあたりの読者層をターゲットにしていることと思います。その意味では良くも悪くもナイーブな書…

状況証拠を丹念に積み上げた新自由主義批判―『政府は必ず嘘をつく 増補版』著:堤未果

筆者について ジャーナリスト。米国留学後、アメリカ野村證券勤務時に9.11を目の当たりにし、ジャーナリストへ転向。『ルポ 貧困大国アメリカ』は77万部を超えるベストセラーに。以降多くの著作を発表。ちなみにHIV訴訟で有名になった参議院議員川田龍平氏は…

概要は理解できるも実践と実感は難しいか―『スタンフォード式 疲れない体』著:山田知生

概要 米スタンフォード大スポーツ医局でアソシエイトディレクターとしてアスリートのサポートを10年以上に渡り行ってきた山田知生氏によるコンディショニング本。疲れからの回復法や疲れづらい体づくりを提唱している。 感想 無事これ名馬なり。30歳前後で立…

歪められた日本の言論、その起源は米国の検閲か!?―『閉ざされた言語空間』著:江藤淳

筆者について 筆者の江藤淳氏は東工大や慶応大の教授を歴任。文芸評論家としても著名。1998年に奥様を亡くされた後、追うかのように翌1999年に自死。 感想 ”あなたは騙されている、洗脳されている!!” そんなことを言われたら、大抵の人は白けてしまうのでは…

人間と車との「交流」を描く!?車から人間を描く視点が斬新!―『ガソリン生活』著:伊坂幸太郎

(私事です)東京で生まれ育った我が身からすると車を持つとは一種贅沢な話でした。友人は、池袋で風呂なしトイレ共同の築30年のボロアパートを月2.5万で借りていましたが、アパートオーナーが同じ敷地に持つ吹きさらしの駐車場は月4万円でした。東京で車を…

学歴という残酷な現実を描くミステリー小説(論点が多く、おすすめ)

筆者と作品について イヤミスの女王、湊かなえ氏の初テレビ脚本作品。頻繁に入れ替わるシーンに多様なキャラクター達の個性が光る。そして怒涛の結末にあ然とさせらせる。イヤミスのイメージが強い同氏であるが、結末はポジティブなものであった。 感想 シー…

極私的読書ノートを書く背景についてお話しします(長くてごめんなさい)

昨年12月から始めました本ブログですが、おかげさまで、この8月に100記事目のポストをすることができました。本ページを見てくださった皆様方には厚く御礼申し上げます。 さて、そもそもこのサイトは、おっさんの独り言のようなブログでありますが、驚くべき…

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