海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

2023-01-01から1年間の記事一覧

奈良の史跡を辿るミステリー |『まひるの月を追いかけて』恩田陸

恩田さんの作品を最近結構読んでいます。 理由?それは、恩田氏って多作につき、ブック〇フで安いものが多いから笑。 かの店は、本の需給バランスによって値段が変わるので、ある意味分かりやすくてありがたいです。在庫が多ければ比較的新しいものも価格は…

失恋に負けず、頑張れ! |『太陽のパスタ、豆のスープ』宮下奈都

ひとこと 本作ですね、婚約破棄された女性が周囲の助けを得つつ回復する、という話。です。 副題:自分の軸の作り方、作ろう「これが私の生きる道」、的な。 で、私の感想は、・・・合わなかったぁ、でした笑 ジェンダーに固執した発言は気を付け慎まなけれ…

死後4年にして明かされる耽美系作家の死の謎とは |『木曜組曲』恩田陸

こんにちは。 48歳にして初の部下なるものを持ちましたが、その結果、結構忙しくなってきました。 仕事の内容はまあ単調なのですが、教えるというのはやはり難しいです。居所に居る場合はオフィスに赴き、バランスシートや図を書いて説明できるのですが、オ…

天才打者の短い一生を寓話的に描く |『あるキング』伊坂幸太郎

50も近く、病気もあるので、徐々にですが身辺整理を心がけています。 最近進めているのは銀行口座でしょうか。かつては6つも7つもありました。80を超えた母親がかつて勝手に父親名義で作った口座を今処分できずにいる(父親は半ボケで家から絶対に出ない)の…

独特な文体がくせになる、30代男性に親和性のありそうな作品 |『パラレル』長嶋有

そういえば、先日病院に行ってきました。 年初に、海外で軽度の脳梗塞を発症しましたが、日本で幾つかの検査を経て結果、予防的にバイパス手術をした方がよいとのことでした。なんでも、メイン動脈の血流がよろしくなく、そのための辺縁部の細かい血管が頑張…

「心」「意識」があればこそ、世の中は楽しくまた辛い |『劫尽童女』恩田陸

こんにちは。 長男の受験が突然終わりました。ラッキーなことに所謂帰国試験なるもので大学に拾ってもらえることになりました。 高校でも帰国試験、大学付属校なのにアホすぎて内部進学できず。そして大学入試も小論文と面接の帰国試験。 30年前の私。私大文…

美しく不穏な流れの中に、多様な解釈を包含する作品 |『遠い山なみの光』カズオ・イシグロ、訳:小野寺健

長男の学園祭へちょっとだけ行ってきました。 そして顔見知りの部活のお母さまたちへ挨拶。一学年で9人も集まらない野球部で、うちを含め同学年は僅か3人。他の2名のお母さまにお会いできました。お話するのはもっぱら子どもたちの進学です。これからどうす…

自動化する「組織」に対し、個はどのように反応・反抗するのか |『モダンタイムス』伊坂幸太郎

皆さんこんにちは。 急に秋らしくなりましたね。部活で出ていた娘が、LINEで、「今日ご飯何?」「できれば鍋がいいんだけど」と送ってきました。それほど。 日本の秋は本当に美味い。かつて女子の食べ物と考えていた焼き芋ですが、今期より私も参戦。シルク…

マクロ経済学と歴史文化の交差点 |『波乱の時代(下)』アラン・グリーンスパン 訳:山岡洋一、高遠裕子

最近気づいたこと。 いつも本文の内容とは全く異なる「まくら」を書いてから感想を書くのですが、この「まくら」の部分が他のポストと関連していると思われることがあるようです。ウーム。 前回高校野球の本を読んだのですが、関連したポストとしてサミュエ…

居酒屋で隣り合わせたオヤジが、実は業界のすんごい人だった、みたいな本 |『小倉ノート』小倉清一郎

しつこいようで申し訳ないのですが、今年は高校野球(甲子園)にドはまりしました。 神奈川県予選の準決勝を横浜球場で見て、その後決勝をテレビ神奈川で見ていました。横浜高校対慶應義塾、9回表のダブルプレー未遂(横浜高校)とその後の逆転ホームラン(…

自分を塗り替えることでしか生きられなかった者への共感 |『ある男』平野啓一郎

私の在所には、日本映画祭というものがあります。 国際交流基金という独立行政法人が主催しており、主に日本の文化・芸術を広めるような活動をしています。で、そこで上映される日本映画が私のところですと大体300円くらいで見れます! ローカルの外国人では…

ガヤつく関西弁と美しく印象的な日本語、そして不思議ちゃん |『ふる』西加奈子

ひとこと 私のお気に入りの一人の西さんの作品。 相変わらずぶっ飛んだ感じの作品でした。 気になったこと、幾つか タイトルからして「ふる」ってのは頭の中では「振る」?雪が? あるいはあだ名が「ふる」みたいな(古川とか古田)みたいな人が出てくるのか…

セントラルバンカー回顧録、現代史的にも面白い |『波乱の時代(上)』アラン・グリーンスパン 訳:山岡洋一、高遠裕子

金融業界で業務に携わっているので、その業界のかたの回顧録は役に立とうと考え、ずっと積読しておりました。 実は一度トライはしたのですが、マジで長い!そのため一か月かけても上巻の途中までしか行かず、忙しくなったりなんだリで挫折。今回は気を取り直…

息子と四人の個性的な父親、洒脱な会話とツイスト |『オー!ファーザー』伊坂幸太郎

またもや面白い! もう毎回面白いのですが、面白さの説明に苦慮します。ボキャブラリーが貧しくて。 伊坂作品の良さ・面白さってどういえばいいんだろ? そう考えて思い浮かんだのは、「洒脱」、「ユーモラス」。我ながら悲しいほどの低表現力です。 で、裏…

哲学的キャリア論!? |『だれのための仕事』鷲田清一

昨年、まだ娘が中三であったときに購入した本作。 娘はキコクというくくりで、日本語力も英語力もどちらも未熟なローティーンでしたが、国語ではとりわけ論説文が苦手でした(多分今も)。大学受験でも往々にして出題されますが、小難しい日本語論、日本文化…

ピースが連結してゆく快感 |『楽園』宮部みゆき

先日、家で仕事していると、ふと家内が背後に立ちました。もちろん、バックハグではありません。頭ポンポンでもありません。 どうやら私の頭に数本の白髪を見つけて大喜びしている模様です。 遺伝的要素もあろうかと思いますが、私、50手前にして薄毛の気配…

村上版ナショナルストーリープロジェクト? |『回転木馬のデッド・ヒート』村上春樹

かねてから少しずつ実家の書籍を売却していましたが、ここにきて少し勢いがついてきました。 以前からちょくちょくご紹介している通り、居所での本の売却がするするとうまくいくようになってきたからです。 ブックオフで売却すると、特に古い本や人気のない…

悪党なのにいい奴。またもや驚愕の設定と展開 |『残り全部バーケション』伊坂幸太郎

自分の感触とあらすじを読んで、全く印象が違う・なんじゃこれ?という体験、お持ちではありませんか? 初めの十数ページを読んだ後、へーなるほど、と思う。そしてその後どうなるのかなと思い、改めて裏表紙のあらすじを確認する。え?そんな話なの?まった…

アイデンティティを失う大国。他方で感じる大国のダイナミズム |『分断されるアメリカ』サミュエル・ハンチントン 訳:鈴木主税

いやあ、甲子園、終わりましたねえー。 息子の部活引退をきっかけにドはまりした高校野球でしたが、非常に面白かったですね。汗、涙、信頼、結束。 なんだろ、一匹狼の私ですら刷り込まれている価値観に、涙目になりっぱなしでした。 普段出ないようなミスが…

死に深く魅入られた高校生が、殺人犯たちを追い詰める |『GOTH(夜の章・僕の章)』乙一

突然ですが、私、古典が好きです。 誤解を恐れずに言うと、時の洗礼を受けた作品をこなすだけで私の読書人生はもう十分だ、と時に思います。 しかし他方で、だとすると私が今に生きる意味は何なのかとか考えてしまう、と。また、子供を読書教信者にするべく…

運動というクスリで体も心も整える |『脳を鍛えるには運動しかない』ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン 訳:野中香方子

ちょっとした事件がおきました。 なんと、部下が出来ました。 50を目前にし、体も弱ってきて、やる気はもっと弱ってきて、仕事は自分ではなくてマクロ君に大半を任せていたところ、「そろそろオヤジさんの知識を引き継ぐかたも必要かなと」という上司のひと…

筆者のひととなりがわかる、仙台愛にあふれた一冊 |『仙台ぐらし』伊坂幸太郎

50年近いこれまでの人生で、2日だけ、仙台に行ったことがあります。 遥か昔ですが、東北大学(院生として)に行きたくて、一日は指導教官(になって欲しい)の教授にテーマの面談、もう一日は入試で。 結局、一蹴、という感じで箸にも棒にもかからず不合格。…

私の想像していた青春高校生の姿!? |『か「」く「」し「」ご「」と「』住野よる

皆さん、高校野球見ていますか? この夏、息子の最後の甲子園予選は、堂々たる一回戦コールド負けでした。で、興味が湧いて、ふと見に行った神奈川県大会の準決勝@横浜スタジアム。これにあてられました。 汗、熱気、頑張り、涙。 試合を見ているだけで終盤…

ビジュアライズで記憶力・認知力アップ |『ザ・マインドマップ』トニー・ブザン、バリー・ブザン、訳:神田昌典

脳についての多くの神話がありますね。10%程度しか使っていないとか、一部が損傷したら他が代替して活動するとか。知らんけど。 事実はどうあれ、未知のパワーを秘めている、未開発の箇所があるという言説は、私ですと『うちの子はやればできるんです』的な…

ファシズムに進む日本の不穏さを描く |『魔王』伊坂幸太郎

東南アジアの果てで、本を読んでいて困ること。 それは本の処分です。 ドンドン増えていくし、売るって言っても古本屋はないし、重たいから日本に持って帰って売るのも、ねえ。 でもでも、私に万一のことがあったら妻が処分に困るだろうなと。日本の実家に国…

ジャーナリズムとは?国益とは?命とは? |『運命の人』山崎豊子

居所に戻って参りました。 まずもって感じるのはその過ごしやすさ。 熱帯ですが、熱帯夜ではありません。昼でも気温は33度程度。夜だと体感20度代後半。断然過ごしやすい。 脳梗塞再発におびえるアラフィフには有難い環境であります。季節の移り変わりが無い…

聖書そのものを読む前、最中、読んだ後、全ての場面に役立ちそう |『聖書の読み方』大貫隆

とある総合病院の脳神経外科に行ってきました。 詳細検査は後日ですが、それ次第では脳の血管のバイパス手術も有り得るそうです。 今まで色々病気や手術をしてきましたが人生最大かもです。 ということで9月の再帰国決定。この一大診察に10割負担で臨むか、…

個人的には合わなかったけど、YA系が好きな方には良いかな? |『晴天の迷いクジラ』窪美澄

いやあ、最近「消費」しちゃっている感があるんです。 何を、というと、本・作品をです。 読書は好きですし、読んでみたい本は山ほどあるのです。 でも文学系・エンタメ系含め、私の標準読書スピードは概ね2日に一冊くらいでしょうか。仕事の本や健康関連の…

耳慣れない職:家裁調査官へ光を当てる作品。内容は絶品エンターテイメント |『チルドレン』伊坂幸太郎

脳ドック後の診察に軽ーい気分で行きました。神妙・シリアスに総合病院での再検査を言い渡され、紹介状を渡されました。来週帰国するんですが、というと、それどこじゃないですよ、と。真顔で、帰国はお勧めしません、と。 私だけ飛行機をキャンセルして居残…

静謐さと微熱感のある滑らかなノワール、表現の妙 |『掏摸』『王国』中村文則

ここ数年、純文学系の読書は子どもたちに読ませるための下読みでありました。今般、下の子も高校に上がり、もはや言うことを聞くような距離にもおらず、そうした下読みは一旦ストップ。 では何を読むかというと、Wish Listに入っていたけど長らくそのままに…

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