海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

☆☆☆☆

英国移民の厳しい現実をえぐる。引き込まれる佳作 |『The Year of the Runaways』Sunjeev Sahota

ランキング参加中読書 ランキング参加中書評 日本では外国人労働者の受け入れには否定的、労働力だよりの移民には断固反対。こんなニュースをしばしば耳にしてきました。 ところが、コロナ後に何度か一時帰国すると、ワクチン接種を確認するファストトラック…

青春ストーリーとして読みました|『AKIRA』大友克洋

ランキング参加中書評 やっと下の子の高校受験が終わりました。となると、上の子同様、下の子も彼らの祖父母宅(私の実家)から学校へ通うことになります。 実家を出てから、実家を倉庫代わりに使っていたことが多くあったことを今更ながらに反省しておりま…

絵入りで、文字が大きくて見やすい |『退院後の生活を支える本 脳梗塞の再発を防ぐ』監修:岡田靖

もうこれ、完全に私のためだけの読書で、皆さまの参考になる気がしません・・・。 普通にスルーしてくださればと思います笑。 軽度の脳梗塞の経験者です。 私は幸い、麻痺も残らず、入院もせずに済みました。しかし、一時でも麻痺・呂律が回らなくなる経験を…

「私」の視点から語る戦後昭和史|『戦争が遺したもの』鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二

私の母親のスーパー積ん読文庫(処分済み)から救出された一冊です。 思想系の作品が気になる私にはビビビとくる著者のお三方であり、手に取った次第です。 対談集だけど良かった 対談というと、大抵話者の言いたい内容が散逸し、やっぱり単著を読めばよかっ…

激動の明治大正昭和を駆け抜けた、いち翻訳家の生涯|『アンのゆりかご』村岡恵理

先日、齢80を迎えようとする母のスーパー積ん読文庫を、実家へ帰ってきた私の姉が処分するべく整理していました(一応母の希望)。その中から面白そうなものを数冊救出して、こっそり読もうと思った中の一冊が本書であります。 ちなみにこのスーパー積ん読文…

若者はいつだって、どこに居たって、無鉄砲! |『ペルセポリス』<I><II>マルジャン・サトラピ、訳;園田恵子

イラン、というと皆さん何かイメージは湧きますでしょうか。 正直、なかなか難しいのではないでしょうか。 私もイスラム教、イラン・イラク戦争、くらいしか直ぐには思い浮かびませんでした。多少詳しい方ですと、シーア派、ホメイニ氏、などは思い浮かぶか…

パルプフィクションぎりぎりをエンタメへ昇華!?|『土か煙か食い物か』舞城王太郎

お名前は見かけていましたが、その名前故に避けていたところがあります。だって、なんというか狙っている風のネーミングというのでしょうか、ちょっとふざけている?感を勝手に感じていたのです(作者名も作品名も)。読む前から「キャッチーな外面で内面を…

副業の手始めに。視野の広がる本 |『小商いのはじめかた』監修:伊藤洋志 編:風来堂

近年、企業でも副業を許すっていう報道があると思うんです。終身雇用や年功序列が崩れ、ラインの管理職になれない年配者がどこの会社にもわんさかいるんじゃないかと想像します。そういう給料が上がらない人は自分で知恵を絞って稼いでね、という社会からの…

実践的PDCA本。徹底したロジカルシンキングでPを明確化する |『鬼速PDCA』冨田和成

一年の計は元旦にあり、と申します。私もこれまで、正月休みを利用して、今年はこれをやるぞ、あれをやりたいなどと散々決意を固めたりしてきました。 だけれども、残念ながら、そうした目標が大概うまくいかず、時に忘れ、時に三日坊主程度、良くて数カ月し…

意思決定論を超えてもはや人間論に |『ファスト&スロー』(下)ダニエル・カーネマン、訳:村井章子

昨年末から読んでいる本シリーズの下巻です。 上巻では所謂直観や素早い判断を得意とするシステム1(早い思考)と、熟慮担当のシステム2(遅い思考)についてフォーカスが当たっておりました。 下巻では上記のシステム1とシステム2が混在するいわゆる『ヒュ…

ビジネス文章のバイブルたりえる名著かと |『考える技術・書く技術』バーバラ・ミント 監修:グロービス・マネジメント・インスティテュート 訳:山﨑康司

思いを伝えることは難しい。 大学では文学部ではありましたが、レポートでの文章の構成等はめちゃくちゃだったし教わった覚えすらありません。世に出ても、上司に報告するとき、喋りつつ「俺はいま一体なにを喋っているんだ?」と感じつつ報告することも一度…

二つの思考が意思決定をつかさどる!?因みに翻訳が素晴らしい! |『ファスト&スロー』ダニエル・カーネマン、訳:村井章子

人間は思った以上に合理的ではないという言説は最近つとに聞くようになった気がします。その言説を学問として裏付ける行動経済学は、人間の非合理がシステマティックに、そしてロジカルに働く様を明示していたりします。 私もそんな人間の非合理さに深い興味…

美しき組織プレーにより真正の報道を実現する物語|『大統領の陰謀』ボブ・ウッドワード、カール・バーンスタイン 訳:常盤新平

マスコミ、特にテレビについての不信感が個人的に強いです。バラエティは面白く見れるのですが、報道という観点からすると、ポジションテークを明示しない報道姿勢が私にはとても狡猾に感じるのです。とりわけ政治問題に対する報道はそうです。どういう立場…

007のボンドをホロウィッツ氏が上手に料理。面白い |『TRIGGER MORTIS』ANTHONY HOROWITZ

海外モノの小説は実は小さいときから割と好きでした。なかでもモダンホラーの先駆的な存在であるスティーブン・キングとD.R.クーンツの二人の作品は中高生の時に貪るように読んだ記憶があります。 年を経て、中高生の我が子らに本を読ませたいという意図(言…

戦場でも失われなかった科学者の視点 |『虜人日記』小松真一

戦記ものに惹かれるおっさんの独り言 戦記物を読むと、我ながらおっさんになったものだなあと感じます。我々戦後生まれからしたら戦争は既に歴史の話であり、これを経験した私の祖父母も過去を語ることなく亡くなってしまいました。今になって、何でわざわざ…

米国の冤罪ノンフィクション|『イノセント・マン(上)(下)』ジョン・グリシャム 訳:白石明

ひとこと 終始、腹の底で不活発な疼きを感じる読書体験でした。 例えていうならば、結論の読めない単館映画(それも東欧あたりの)で、主人公とその周辺、美しい情景描写が淡々と続く感じ。 オクラホマの片田舎出身、大リーグに憧れるマイナーリーガーのロン…

英語でも、読む手が止まらない傑作小説 |『Not a Penny More, Not a Penny Less』JEFFREY ARCHER

Jeffrey Archerという作家さんはうっすらとお名前は存じ上げていましたが読んだことがありませんでした。 そもそものきっかけは『木曜殺人クラブ』が読みたいなあとAmazonを検索したのが端緒。一緒によく買われている作品ということでリコメンドで出てきたの…

なかなか良い。管理会計についても触れる会計入門 |『この一冊ですべてわかる 会計の基本』岩谷誠治

今年の8月に英国の某会計資格の試験を受けました。 3時間ノンストップの記述式(もちろん英語です・・・)という純ジャパには結構厳しい試験なのですが、150点満点中80点が合格点ボーダーであるところ、78点で不合格・・・泣 10月の末に発表がありました。 …

ニコニコ動画式政治で民主主義をアップデート!?|『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』東浩紀

いやあ、これはすごい考えでした。読中もむむぅと唸りがとまりませんでした。 なお筆者は哲学・現代思想が専門であり、本作は言わば「夢」を語ったもの、と注意書きをしています。 どういうものかというと、、、 「民主主義後進国から民主主義先進国への一発…

純文学のような探偵もの!?|『ダマシXダマシ』森博嗣

本との出会いは様々 本との出会いは様々です。店頭でのジャケ買い、友人知人からのおすすめ、新聞の書評欄、電車のつり広告など、はたまたブログでの書評など。 私の場合、やはり子供が切っ掛けであることが多いです。要は子供の取り組んでいる国語の問題文…

傑作の名に恥じない面白さ。150年前が信じられないモダンさ |『A STUDY IN SCARLET』SIR ARTHUR CONAN DOYLE

最近集中力に欠けています。10月はPride&Prejudice(Jane Austen)を読んでいたのですが、英語が難しく全く集中できず、遅々として進まず。結局忙しさにかまけて読まなくなってしまい、挫折。積読棚へ移行しました笑 英語は習慣的にコンスタントに触れていたい…

イヤミスの真骨頂!第六回本屋大賞受賞作|『告白』湊かなえ

特に用事もなかったのですが、今週有給を一日取りました。ところが、どうしたことか前日夜から寝つきが悪くどうしても眠れず、そういう時は読書をしようと午前2時ごろから手に取ったのが本作。まあ当然ですが余計に眠れなくなり、本作読了し、朝の7時に就寝…

教科書が語らない”意図”を一緒に考えてくれる本 | 『「なぜ?どうして?」をとことん考える高校数学』南みね子

数学を放棄した過去 「数学が苦手だから文系、というネガティブな選択はやめた方がよいと思います」 今年の夏に、息子の担任と面談をしていただいた際の一言。 「そ、そうですね」 と言いつつ、冷や汗。・・・親であるの私も30年前にはその口で文系を選んだ…

ドラマの絵が頭から離れない|『危険なビーナス』東野圭吾

今回もムスコ文庫から拝借。 ちなみに、うちの子はいまいち本を大事にしない?ので、たまにカバーやページが水(雨)でヨれたり、本の四隅が少し折れていたりするのですが、あれが個人的とっても許せないんです笑 私はA4の裏紙とかで文庫本のカバーを作った…

子供向け職業図鑑、大人が読んでも噛み応えあり | 『新13歳のハローワーク』村上龍

昔の自分を思い出す 実はこの本、2000年頃の初版も買いました。 その当時、新卒でITエンジニアになった私は、3カ月間の研修を経てシステム開発現場へ放り込まれました。IT、といっても華やかなものではなく、窓の一切ない空調の管理された部屋で、自分の年よ…

人間の特質としての共感を描くディストピア小説|『アンドロイドは電気羊の夢を見るのか』フィリップ・K・ディック 訳:朝倉久志

実家の本棚に眠っていた本。たぶん20年ぶりくらいに読んだものです。学生時代、哲学を勉強しており、その時に設定したテーマは「人間とは何か Was ist das Mensh.」 きっとそのテーマの一環で読んだのだと思います。 今般本作を再読し、学問への小熱い(決し…

優しく厳しく自己実現を促す寓話|『アルケスミト 夢を旅した少年』パウロ・ウエーリョ 訳:山川紘矢+山川亜希子

あらすじ(文庫本裏表紙より) 羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過ごした羊たちを売り、アフリカの砂漠を超えて少年はピラミッ…

子供の脳死を扱う異色の東野作品|『人魚の眠る家』東野圭吾

この夏に日本に一時帰国した際、息子の本棚から回収した本です。 本嫌いの息子に多少なりとも本を読ませる習慣をつけさせてくれた(私にとって)神作家の東野圭吾氏。その時息子が読んでいるというので、どうよ、と尋ねると「いやあ、だるい」と。いつもだる…

イスラムが「創った」ヨーロッパ世界 | 『マホメットとシャルルマーニュ ヨーロッパ世界の誕生』アンリ・ピレンヌ、監修:増田四郎、訳:中村宏・佐々木克己

歴史が面白い、と感じる瞬間があります。まあ簡単に言えば「風が吹けば桶屋が儲かる」的な話が聞けたときです。言い換えると、一見普通に見える事象の裏に、思いもよらない事実が隠されていた時。また、どうも腑に落ちない不可解な史実の背後に、状況証拠等…

英国の伝説・伝統的冒険譚。ファンタジー嫌いも楽しく読める |『KING ARTHUR AND HIS KNIGHTS OF THE ROUND TABLE』ROGER LANCELYN GREEN

世界史を勉強すると英国史で言及されることが多いアーサー王伝説。英国の伝説・伝承文学にして最も有名なものと言いうると思います。サクソン人(Saxon)を撃退し、英国(Briton)を平和に導くアーサー王と彼を支える円卓の騎士の物語です。 で、これが予想をは…

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