海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

希望の書か絶望の書か?-『医者とおかんの「社会毒」研究』著:内海聡

 

医者とおかんの「社会毒」研究

医者とおかんの「社会毒」研究

  • 作者:内海聡
  • 出版社/メーカー: 三五館
  • 発売日: 2013/10/23
  • メディア: 単行本
 

 

読後にあらゆる食べ物、商品に過剰反応してしまう

 

筆者のことはユータス・マリンスの医療殺戮という本で知りました。医学界や製薬業界を批判する本を監修している医師ってどんな人だろうと関心を持っていました。

 

さて、読後の感想ですが後味は余りよくありません。ただ内容はてんこ盛りです。

 

実は危険すぎる我々の身の回り

筆者は敢えてシニカルな態度でネチネチとこれは駄目あれは駄目と世の中にあふれるNG食品、NG製品、その他NGな習慣などをこれでもかと挙げています。ワクチン駄目、牛乳駄目、パンには添加物たっぷり、水道水もやばい、レンジもケータイも電磁波やばい等々。健康には気を付けている方だと自認していましたが、ミネラルウォーターもダメだとは知りませんでした(プラスチックが溶け出すらしい)。20年くらい前に読んでいた週刊金曜日という雑誌を思い出したくらいです。

 

著者の目的は、読者をインスパイアすること!? 

ただこの本のメイントピックは実はこうした幾多のNG製品の情報をシェアすることではないと思います。寧ろ筆者は読者に問いかけているのだと思います。この事実を突きつけられて我々はどう生きるのか、と。

 

もちろん普通の人は反論したくなると思います。じゃあ何もできないじゃん、何も食べられないじゃん、山奥に隔離されて生きればいいのか、と。実際にこの資本主義社会の中では、企業が作り出す「社会毒」から完全に逃れることは今のところほぼ不可能でしょう。ただし、求める人が多ければナチュラルな製品(“ナチュラル”と”製品”という単語がそもそも矛盾していますが)、あるいはより自然に近い食べ物・生き方は可能なのだと思います。筆者も第9章で述べていますが、社会毒を遮断することは不可能でも削減して影響を減らす方策はあります。そのための努力に目覚めることこと筆者の主張なのだと思います。

 

ふと考えましたが、確かに日本は豊かな分、まだ選択肢は多いのでよりリスクを減らすことは比較的容易なのかなと思いました。ネットで調べれば無農薬の農家とか、こだわった調味料を作っている職人は探すことは可能です(嘘つきか本当かは自分で検証する必要はあります)。生協を使えばそこそこ安心安全な食べ物が相応の価格で手に入ります(ちなみに私は日本にいたときは生活協同組合生協というゴリゴリ左翼チックな生協で野菜や魚を頼んでいました)。今住む東南アジアではこうした選択肢は見当たらず、安全や安心が手ごろな値段では買いづらい状況です。

 

僭越ながらコメントを

すこし残念に感じたのは、この本の作りです。筆者がシニカルなのはわかりますが、シニカルすぎて伝えたい人(一般の人、普通の人、当書で言うところのグーミン!?)に伝わらないかもしれないと危惧します。ダメだダメだと言われると人は聞く耳を持たなくなるように思います。寧ろ、第9章やエピローグの部分を冒頭に持ってくるという章立てはどうでしょうか。というのは、この部分に、シニシズムの塊のような筆者が結婚と子供という2つの出来事からシニカル度合が減ったと書いていますが、まさにこの事実こそが読者をインスパイアすると思うからです。結婚や出産、親になった経験のある方は、自分の守るべき存在のために命を投げ打ってでもいいという気持ちがわかると思います。だから変われるのです。だから変わってほしいのです。社会毒を避けるのは自分の為というよりも寧ろ、愛する人を守るためなのです。とこう書くと、筆者のいうグーミンにも思いが伝わる可能性があるのではないでしょうか。

 

あともう一つ。初心者向けの本というのはわかりますが、一つ一つのトピックを深堀りするための参考文献一覧とかがあれば良かったかなと思いました。

 

最後にまとめると、切り口は初心者向けながらトピックはバラエティに富んでおり、世の中に隠された害悪を知るのにはよいと思いました。シニカルすぎて伝えたい人に伝わらない恐れがあるとは思いますが、そうした姿勢も含め楽しく読ませて頂きました。

 

評価 ☆☆☆☆

2019/12/21

医者とおかんの「社会毒」研究

内海 聡/めんどぅーさ 三五館 2013年11月
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