與那覇潤氏の著作で言及されており、興味を持ち購入。
さて、本書は、東京大学で日本近現代史を研究する教授が神奈川県の名門校栄光高校の生徒さんを相手に講義を行ったものを纏めたものです。本旨は、近現代日本(明治大正昭和)を通じた戦争への道をより詳細に解き明かす、という事だと理解しています。
無謀な第二次世界大戦へ日本がなぜ参戦したのか。高校の歴史でも勉強しますし、世には多くの著作が溢れます。この本もこうした問いへの答えの一つかもしれません。
この本ですが、ただ一度の通読だけでは日本近現代の流れを十全に理解することはなかなか難しいと感じました。しかしながら、この作品の秀逸な点は、歴史について鳥瞰する部分(所謂教科書的な歴史)に合わせ、軍人の日記や手紙などに焦点を当て微視的にアプローチする手法をオーバーラップさせている点です。そこから浮かび上がるのは、軍部の中でも意見が割れていた点や、知識人が戦争に必ずしも反対していなかった点、貧困な農村へ補助金をちらつかせながら満州への移民を募った政府の姑息なやり方、英国・米国・中国の当時のスタンスや思惑などです。こうした歴史のうねりを振り返ると教科書的な理解に加え一層深く当時の内容を理解できると思います。
このような当時の生々しい状況から学べることは、現在私たちを取り巻く状況も得てして過去の状況と類似しているかもしれないことではないでしょうか。人は状況次第では不合理な選択をしてしまうし、国際政治の場では必ずしも綺麗事だけで済むわけではない。頭では理解している事でも歴史としてじっくり過去を見る事で未来に生かせるのではと思いました。
自身が政治家や軍人あるいは企業や団体のリーダーでなくとも、こうした歴史を再度学びなおすことで少なくとも個人単位ではよりよい選択ができうると信じたいところです。
時間をおいて読み直し、理解を深めたいと思います。
評価 ☆☆☆☆
2020/01/27
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