ドラマの面白さとは何か。
マンネリの中に光る予定調和と安心感。水戸黄門の昔から始まり、ドクターXの大門未知子、半沢直樹もそうであろう。どんなに難しい展開でも、最後に言い渡される決め台詞と主人公の勝利。うむ、カタルシス。
或いは、普通は知ることのできない舞台設定。警察、弁護士、医師、家政婦、等々。勿論、職業として異常ではないもの、割合としては日本では圧倒的に少数である。他人の仕事や生活は、それが特殊あればそれだけ興味がわく。
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本作マスカレード・イブでは、後者の”なかなかお目にかからない舞台”が設定されている。
特徴的なのはこの舞台が二つあることだ。一つは警察、そしてもう一つはホテルだ。どちらもドラマ的には使い古された舞台ではある。
ただ出色なのは、この舞台がそれぞれ独立していることだ。刑事側は新田、ホテル側は山岸という主人公がおり、物語が交互に続くことで使い古された舞台設定に新味を与えていると思う。
4つの短編は、最後に表題作でもある『マスカレード・イブ』で結実するが、主人公たちはここでもニアミスしかせず、具体的にな協働は行われない。
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本来は別作の『マスカレード・ホテル』のスピンアウトとして読まれる作品なのかもしれない。私は左記の作品は読んでいなかったが、それでも本作は楽しく読むことができた。
刑事ものはありきたりに感じるものの、ホテルマン(正確にはウーマン)、わけても女性がその観察眼を使って場面をさばいていくところが本作の面白さだと思う。
単純にミステリを楽しみたい方のみならず、ホテル業界に知見を得たい方にもおすすめできる作品だと思います。なお、巻末に取材協力としてロイヤルパークホテルの名がありました。ロイヤルパークはきっとこのような素晴らしい従業員がいらっしゃるのでしょうね。
評価 ☆☆☆
2020/03/24
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