海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

社会学者が語るキリスト教とその社会への影響。思想系に興味のある方は必読!-『ふしぎなキリスト教』著:橋爪大三郎×大澤真幸

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

 

 

しばしばキリスト教西洋文化の起源の一つだから勉強した方がいいという。現状のすべてをキリスト教一つに還元はできないと思うが、確かに今ある多くの西欧文化キリスト教の影響はあると私も思う。それを勉強したとは思うが、どこから手を付けていいのかわからない。そんな人は多いのではないのではないか。

 

本書はこのような疑問に対する最良かつ最大の答えになりうる。

 

筆者は、日本の社会学のスーパースター(と私が勝手に思っている)大澤氏と、これまた社会学の大御所の橋爪氏との対談集。

対談は、とかく浅くなりそうなところだが、この本は大澤氏のねちっこい揚げ足取り的な質問に対し橋爪氏が丁寧に答える形で一部でユダヤ教、二部でキリスト教についてその特徴や本質が語られる。そして三部ではこの二つの宗教の果てにある現代社会を概観する。

 

この第一部や第二部は神学や哲学に興味がある人にはおすすめ。ツンデレ的な神と人との関係、聖典の各所に見られる矛盾の理解の仕方、神とのコミュニケーションの方法、預言者の立ち位置、等々についてどのように理解するべきかを橋爪氏が丁寧に解説している(なお旧約聖書について基礎知識を手っ取り早く得たい方には里中満智子氏の『マンガ 旧約聖書』シリーズ三巻をおすすめします)。

 

そして出色は第三部の「いかに「西洋」を作ったか」。キリスト教の歴史の変遷とその意味合いについて解説し、その他の歴史的事項とも合わせて読み解きます。東方教会西方教会は何が違うのか、プロテスタントはどうやってカトリックから生まれたか、中世キリスト教ギリシア哲学との邂逅の影響とは、近代哲学(というかカント)へ逆説的に影響したキリスト教的要素とは、新大陸発見の理由はキリスト教精神の発現ではないか等々。救済を、予定説と現世での努力との二項でとらえ、これゲーム理論で解き、さらにこれを宗教者の目でどう理解するか、というのも面白かった。最終的にイスラム教やヒンドゥー教、そして共産主義までをも見渡した上で現代のグローバリズムの状況を本書の見方に沿って読み解く。この第三部後半のドライブ感は半端なかった。

 

ただ当然ではあるが、本書ですら単なる二次文献に過ぎない。我々は筆者の用意した高性能の乗り物で知的ドライブをしただけだ。より深く学ぶためには、我々読者自身が聖書を読み、哲学書も読み(まあ難しいだろうが)、そのうえで幾許かでも自分の意見や見方を持ち、その上で改めて本書を読む。そうやって個々人が個々人なりの意見や見方を持つようにできれば、著者である二人の社会学の泰斗も教育者として本望であろう。そして私もできればそのように思考をすすめていきたい。一生かけてになるでしょうが笑

 

評価 ☆☆☆☆☆

2020/03/29

ふしぎなキリスト教

橋爪 大三郎/大澤 真幸 講談社 2011年05月18日
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