医療がビジネス化し、人を治療するよりも寧ろ人に病気を与えている。投薬もワクチンも、輸血も、手術も、実は大きな利権と絡んでおりしかも効果は大きくない。身の回りの製品や生活スタイルは企業側の論理で動いており、消費の結果病気になるような環境に置かれている。
一見するとそのようなトンデモ本のように見えてしまうかもしれません。しかし、この本は決してその手の本ではないと思えます。それは、他のトンデモ本が、半ば宗教チックな絶対的な正しさを説いたり、あるいは諸悪の根源をたった一つの原因に還元したり、ある一つの食材ですべての病気を解決などと説くのに対し、本書は自己批判や自己否定を含んだ上で展開されているからです(この教えは信じてはならない、と一見自己否定から入る新興宗教もあるかもしれませんが、そういうことを言っているのではありません)。
筆者のスタンスは、医療技術の発達やその貢献はゼロではなく、正当に認める部分を認め、ただしそれ以外のところは医師として或いはジャーナリストとして徹底的に調べ、批判する、というもの。誠実な対応だと思います。
本書を批判する人は「ではどうやって生きていけばいいのか。医療なしで生きるなら、お年寄りは死ねというのか」などと言うかもしれない(すぐに極論に走る方、沢山いらっしゃいますが)。直截的な返答はイエスなのかもしれない。でも筆者が読者に投げかけているのは(お年寄りも含め)自ら考え、自ら行動するという事に思えます(もちろん今のうちにですが)。また筆者は緊急的な医療(命にかかわるもの)を否定しているわけでもありません。
自ら考え、調べ、行動する。
それは医療だけではなく、あらゆることでも言えると思います。あなたの人生をどう生きるかはあなた次第、という事なのだと思います。医療について、筆者はここまで情報を共有したわけです。どのような医療人生を送るかは私たち自身が選び取る問題なのだと思います。
その文脈から言えば、当書は反医療の本であると同時に、どう生きるかという自己啓発的な部分を多分に含む本だと思います。現代医療に疑問を持つ方、病気がちな方、身内に病人を抱える方、これまで入院や大病をしたことがある方、守りたい人がある方には是非読んでほしい本です。
評価 ☆☆☆☆☆
2020/03/31
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