本の概要
覇権の隆盛と衰退のパターンを世界史を通じて読み解く本。ローマ帝国、中華帝国、イスラーム帝国、大英帝国、アメリカ合衆国の各史をそれぞれ整理し、その中から歴史上見られるパターンを38の”法則”として提示する。なお、筆者の神野氏は河合塾世界史の講師。
感想
私大文系に特化するカリキュラムが用意された高校に通い、楽をしたばっかりに世界史を勉強しないまま高校を卒業し、これまで相当後悔してきました。この本の購入もそうしたことが起因しています。
その観点から言うと、この本は世界史を概観する上で非常に有用な本であると感じました。
シンプルでわかりやすい
というのも、先ずもって分かりやすい。微に入り細を穿つようなテキストではなく、覇権の流れを端緒から終焉まで見届け、そこに見出されるパターンを確認する形を各章とっているため。その意味では、世界史の初学者のみならず、既修者が頭の整理のために読んでも役に立つのではと感じました。
米国、めっちゃ怖い
また、最終章の米国についての記述も非常に印象的でした。モンロー主義を打ち捨てた後の数々の「挑発」「因縁」「誘導」「捏造」は他に多くの書籍で語られているところではありますが、つくづく米国とは恐ろしい国だと感じずにはいられません。それでも米国ファンが消えないのはマスコミの力でしょうか。
日本のとるべきポジショニングは
こうした覇権争いとその栄枯盛衰を横目に、日本はどう対処すればよいのかという疑問は容易に思いつくところです。
筆者の意見は非常に明快で「けっして頂点に立たない」(P.350)こと、としています。
栄えるから衰えるとすれば、程ほどの成功で我慢しておけば下落もそこまで急にならない、という事なのでしょう。いみじくもかつて某政治家が官庁の事業仕分けの時に「2番じゃいけないんですか?2番じゃ?」と怪気炎をあげていましたが、まさに2番でいいんだ、という答えになります。この結論は個人的には非常に感銘を受けました。
まとめ
まとめますと、非常にわかりやすい世界史読み物だと思います。私のような世界史初学者にはもちろんのこと、政治や外交を学びたい方にとっても世界のパワーバランスのうねりを理解する上で有用な書籍だと感じました。
評価 ☆☆☆☆
2020/04/26
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