本の概要
元ウクライナ大使の馬渕氏によるグローバリズムへの警鐘とその背後の存在を明らかにする意欲作。プレジンスキー(政治学者、カーター政権の大統領補佐官、ユダヤ人)、キッシンジャー(政治学者、ニクソン・フォード両政権で指揮、ユダヤ人)、グリーンスパン(第13代FRB議長、ユダヤ人)等の著作を援用しつつ、政治・政策の“意図”を分析する。
感想
久々に再読。
題名に『世界最終戦争』というおどろおどろしいタイトルがついているため、ややもすれば”色物”的に映ってしまう。しかし、外交官としての経験を背景に、国際政治の矛盾を指摘しつつ、他の外交官や高官の著作の”ほのめかし”を援用して自説を補強、加えて現代のグローバリズムがなぜ起こったのか、日本が今後どうすればよいかを鮮やかに論じている。
世界史上の”本当!?”
マジか!?的な説がてんこ盛りです。一例を申し上げますと、朝鮮戦争は米国が発案し、ソ連が協力している(P.57)、オイルショックは米国の石油メジャーの復権の為(P.73)、ニクソンの失脚は彼が支配者層に歯向かったため(P.98)、等々。
国際銀行家とは?
このような政治と経済を牛耳ろうとする勢力を、著者は国際銀行家と言っています。そしてその源流は米英の有名銀行の名を挙げています(P.118)。彼らはこれまで王家や王室、そして国家へ資金を貸して設けてきました。米銀がこのような行為を第一次世界大戦時に行ったことは有名な話です。
さらにこのような諸銀行は米国ではFRBの過半数の株主となっているという衝撃の事実。つまりFRBという私的な企業が銀行券の発券業務を担い、単なる紙切れを価値のある紙幣として流通させるのだからぼろ儲けですね。
やっぱり出てくるユダヤ人
そしてこの国際銀行家の源流は更にユダヤ人という帰結です(P.131以降)。このあたりは賛否が割れるところですが、国を持たなかったユダヤ人たちが国を跨ぐ(国に縛られない)、つまり国際的なルールを作り自分たちのビジネスを推進しようとするならば、話は確かに理解しやすいと思いました。少なくともユータス・マリンズの本よりかは読みやすい。
で、ロシアと組むの?
では最後に日本はどのようにすればよいのかという話ですが、元ウクライナ大使ということでどうしてもロシアに肩入れしているポジショントークに聞こえます。この国家の難局を乗り越えるにはロシアと組む以外にない、というのです。確かに似ているかもしれませんが、残念ながら一般庶民にロシアは馴染みがなく、ちょっと共感できない記述でした。中国とか韓国の方が文化的思想的な親和性があるのではと思いますので。
まとめ
まとめます。私好みのテイストですが、万人受けしません。歴史好き、ひねくれもの、あるいは通説とは異なる可能性を受け入れる度量のある方には是非読んで頂きたい。確かに本作は陰謀論と言われても仕方ないかもしれませんが、ただ本作は筆者の持説を米国政治家のブレジンスキーはじめ多くの著書(しかも翻訳も多い)から確認することができます。その点では誠実な書きぶりであると思います。
評価 ☆☆☆☆
2020/05/25