概要
元トヨタ自動車副社長にしてカンバン方式の生みの親である大野耐一氏によるトヨタイズム誕生にまつわる自伝的エッセイ。内容は戦後間もない日本が中心であるためやや古く見えるが、エッセイ調であり非常に読みやすい。
感想
トヨタ本、本当に沢山の種類が出版されています。
『なぜ』を五回繰り返せとか、カンバン方式とか、トヨタ独特のカルチャーや方式については社会人が良く耳にすることと思います。また、トヨタのうわさについても、滅茶苦茶厳しいコストカットをするとか、とにかくケチとか、まあ色々聞くものです。
実状はどうであれ、その品質を維持した上での効率追求は、良く人口に膾炙するところだと思います。
この効率化の技術を自分の業務にもうまいこと適用できないかと企み書店へ行きましたが、数えきれないくらいの種類が平積みにされており、どれを読めばいいのかよくわからない。仕方がないので以前読んだ本で言及されていた本書を購入しました。
ドキュメンタリー・戦後のトヨタ
結論から言うと、この本の中に、これはすぐに生かせるぞ!という内容はあまり見つけられませんでした。
とは言え、戦後日本の復興のため、決死の覚悟で生産改善に取り組んだ様子はドラマを見ているかのようでした。ある意味トヨタの生産現場の歴史物語・ドキュメンタリーのようでした。有名なカンバン方式やジャスト・イン・タイムをコツコツと試行錯誤して行い、本社工場や協力会社にまで広げて行く様子がよく描かれています。
また、元副社長にまで上り詰めた生産現場のリーダーであった大野氏が、米国流の大量生産から学び、更に一歩進めて、日本にままある多品種少量生産という効率化とは真逆の生産方式を”効率よく”行うための苦労が表現されます。
もしここから学ぶとすれば、考えること、でしょうか。多品種生産をより効率化する際に、品種を少なくするという誰でも分かるような効率化をせず、難しそうな状況にどうすれば相反することを並立させるのかをチャレンジする様は非常にインスパイアリングでした。
その他、『現状の能力=仕事+ムダ』と定義し、無駄を徹底的に排除する様子とか、とにかくそのストイックさには単純にすげえな、と思えました。
中小企業診断士の例題として
それから、本書にはいわゆる生産管理についての話が多く出てきます。IEとか段取り替えとか、お勤めの企業が製造業でなかったり事務職だったりするときっとちんぷんかんぷんかと思います。そうした、生産現場に遠い方で中小企業診断士を勉強される方にはよい参考書になるかもしれないと感じました。
おわりに
ということで、私のように現金にも仕事にすぐに生かしたいという輩にはあまり向きません。しかし、トヨタの考えを良く学びたい方や生産管理について概要を知りたいという方については、平易な本書は入門書として最適であると感じました。何しろトヨタイズムの親玉のような人の著作ですので、間違いないと思います。
評価 ☆☆☆
2020/06/23