海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年は世界史と英語を勉強します!

新しい友人が出来ました。賢そうなんですが、まだよく分かりません(笑)―『ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質』著:ナシーム・ニコラス・タレブ 訳:望月衛


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著者について

レバノンアメリカ人。ニューヨーク大学教授。元トレーダーでもあり、現在Universa Investmentsで数理顧問を務める。ペンシルバニア大ウォートンスクールでMBAパリ大学でPhDも取得。因みに、祖父(Fouad Nicolas Ghosn)・曾祖父(Nicolas Ghosn)ともにレバノンの副大統領を務めた。なお、祖父の名前がゴーンですが、カルロス・ゴーンレバノンへ逃亡!)とは関係ないとツィートしていました!

 

感想

 この哲学と経済学のミクスチャ―のような作品を読んで、内容を日記に書き留めようと思いましたが、なかなかうまく言葉にできませんでした。著者の持つ哲学的バックグラウンドも数理ファイナンスの知識も、私には到底及ばないほど広範なものだったからです。

 

 そのため、感想を一言で言うと、表題の一文のようなおよそ本の感想にもならないような感想になってしましました。

 くしくも後書きで筆者はこのように語っています。

「この本を書くのは、思ってもみないぐらい楽しかった。実際、この本は自分で自分を書き上げてしまったようなものだ。」(単行本 下巻 P.223)

 

 筆者のいうことを信じれば、彼の人となりの凝縮された本作をたかだか一読で理解するなんて、勉強も教養も足りない私には到底不可能です。ですから、もう少し哲学も経済学も勉強してから将来再読したいなあと思っています。

 

 

 さて内容ですが、不確実性という構造、そしてその認識(人側の問題)について、の二点を主題として書かれていると思いました。

 

想定できない不確実性、ブラックスワン

 不確実性については、所謂リスク管理は結局は意味がないと言っているように感じました。後半で多く語られますが、ベル型カーブと呼ばれる(なだらかな富士山みたいな形)、いわゆる標準偏差のグラフ。あのカーブの山すその端に行けば行くほど、発生確率は低いものですが、筆者のいう黒い白鳥(つまりありえないような想定)が往々にして起こることから、不確実性とはその字義からして、定式化の外に発生すると言っているように思います。

 2000年当初のITバブル崩壊リーマンショック、そして2020年に起こったコロナも、すべて100年に一回とか、数百年に一回とか、極めて稀な事象に思えますが、黒い白鳥という概念からすると、皆が想定しないから存在してしまう危機、ということができるかもしれません。そもそも過去のデータに依拠しつつそれがすべてとみなすようなやり方に疑問の目を向けています。

 

見たことがないものは、存在しない?人間の認識の妙と論理のあや

 筆者はまた、こうした不確実性に対する人間の認識の特性についても思考しています。さいころの目や大数の法則から帰結する死亡率などは、将来の事と言ってもある程度の角度をもって想定できることです。でもレバノンの内戦がいつ終わるかとか、トランプが大統領になるとかは、事前にはわからず起こった後に大変なことが起こったと驚くものです。筆者はこのような態度から、不可知論的なタクシー運転手を学のある統計学者よりも称賛しているきらいもあります。

 黒い白鳥は見たことがないから存在しない、という見方にも批判を加えています。不確実が不確実である所以は、まさに想定しないからなのであり、今ないことがこれからないことの証明にはなりませんね。

 また起こった後に原因を求めて理解した風にする特性もありますが、これも黒い白鳥の考えを直視していません。理解の外にあるからこその概念です。加えて、人間は常に事象に意味を求めてしまうところもあるので、余計に想定外の意味を見づらくしてしまいます。

 

 ほかに成功者のバイアスの話もありました。よく投資信託で長年パフォーマンスを保持してきた成績を見ます。というかパンフレットなんか見るとそんな良好なファンドばっかりです。そこで一つ投資でもしてみるか、と思うわけですが、実際にはうまくいかなかったファンドなど腐るほどもあり、続いたファンドはあくまで多くの死んでいったファンドの一部なのです。そして今あるファンドもいつ死ぬかはわかりません。バイアスですね。

 

不確実性からランダム性へ。世の中を変化させる大きな要素?運?

 不確実性に続き、ランダム性についても語られていました。こちらも面白い。

 曰く、因果を保留することを容認することが必要だとか。原因と結果、で捉えるのではなく、偶然、とするのでしょうかね笑 ある意味で不確実性(ブラックスワン)をポジティブにとらえた表現としてランダム性を導入しているように思えます。一例としては、インドに行こうとして発見した米国大陸、高血圧に使おうとして副作用が売れてしまったバイアグラとか。

 ベル型カーブと関連付けて、ロングテールの可能性にも言及しています。ロングテールの多様性は、ゲームチェンジャーになりうるということです。逆に寡占によって集中した多様性のないものは(要は銀行業界とかです笑)、危機が起こった時にいっぺんに破壊されるリスクが高いという。ある意味で、ブラックスワンの出現に対応するためにはロングテール戦略が有効ということに思えます。

 

結局どうするのか?

 さて、結局、不確実な世の中に住む我々はどうすればよいのか?タレブ先生?

 筆者はたちのわるいリスクには心配すると言っています。皆が安全だと思っているものをリスクと呼んでいます。株で言うと、大型株のほうが危険だとか。なぜならベンチャー株などリスクが自明で、捨てた気分で投資できます。他方、大型株は年金基金が投資していたり、あるは自分の勤め先がそういう会社であったとき、仮にブラックスワン的危機がおこったら、人生詰んじゃいます。

 でも最後の最後に筆者はいうのです。自分自身が生まれる、そして今まで生きているということが黒い白鳥なのだと。故に今生きている幸せをかみしめようという、ちょっと道徳めいたくだりで本作は幕を閉じます。

 

おわりに

 冒頭に書きましたが、非常に内容の詰まった難しい本です。読み口は一見易しそうですが、内容はどうして、かなり難解です。でも、とても魅力的な本です。経済、金融、確率、リスク、認識論など、こうした切り口に興味がある方は面白く読めると思います。いずれにしても、またいつか再読したいなあと思いました。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/01/02

 

 

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