若い時、本当に家族が苦手でした。
心配されるのが鬱陶しいし、早く家から出たいと願っていたし(まあ家出もやらかしましたが)、必要なこと以外殆どしゃべらないという親不孝な子供でした。
社会に出て、親になり、自らの愚行を機会あるごとに両親に詫びますが、それでもなお、家族っていうのはなかなか難しいものです。最も近い間柄の人なのに、何故か素直になれなかったり、つっけんどんになったりしまったり。
そんな、家族のお話が得意な瀬尾さん。彼女の描く家族の話はとてもほっこりします。
今回の舞台は大阪の下町。実家が中華料理屋のヘイスケとコウスケ。この兄弟の成長物語です。
気に入っているのは、大阪が舞台という点、そして兄弟の成長
さて、本作の特徴は何といっても関西、ということでしょうか。
舞台設定は大阪の下町、しかも中華料理屋の息子たちということなので、会話も関西弁ですし、お客さんとの距離も近い近い。一緒に阪神タイガースの応援をしたり、お客だてらに店の息子たちにちょっかいを出す様子は、関西人の距離の近さを感じさせます。
若い頃西宮に住んでおり、まだ幼稚園生だった息子を連れて春の甲子園を見に行った時のことを思い出します。電車で隣のおばちゃんに「あんた、どっち応援するん?」と聞かれ飴ちゃんをもらったことを思い出します笑 他愛ない会話が自然にできるので大阪は好きです。
もう一つ、主人公たる男兄弟の精神的な成長がいい。
男というのはなべて口下手だったり、羞恥心が強くて自分の気持ちを喋るということをあまりしないものです。ただ、物語とはいえ主人公の兄弟を見ていると、やはり、表現する、しゃべる、気持ちを表すということは大事だなあと思いました。彼らのような素直さが若い頃の私にあれば、もう少しマシな人間になっていたかもしれません笑
おわりに
安心して読める家族の話です。前回読んだ『幸福な食卓』がハッピーエンドでなかったのでこの作品はどうかと思いましたが、アンハッピーな形ではありませんでした笑
中学生くらいから大人まで広い層の方に楽しんでいただける小説だと思います。
評価 ☆☆☆
2021/01/06