海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

クリスマス前夜のちょっといい話―『クリスマス・カロル』著:C・ディケンズ 訳:村岡花子


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 一年で一番のお祝いの時期といえば?

 日本ではやはり正月だと思います。では米国では?Thanksgivingとかありえますね。ではイギリスやフランスでは?

 西洋諸国であれば、やっぱりクリスマスだと思います。なんてったって、キリストの誕生日です。

 

 本作は、19世紀の英国で、あるクリスマスの前夜に超シブチンのスクルージが超常現象を通じ回心し、シブチンをやめイイ人になる、というお話です。

 私が書くと安っぽいあらすじですが本当にその通りなのです。で、イギリスの文豪ディケンズの作です、一応。

 

 ボリュームもなく半日以内に読める量ですし、内容については割愛します。読んだ方が早いです。ここでは本作を読んで気になった点について書き記したいと思います。

 

克服されない英国の格差社会

 まず思ったのは、英国庶民の貧しさ。

 以前ディケンズの『大いなる遺産』を読みました。そこでも思いましたが、イギリスという国は資本主義そして共産主義発祥の地でありますが、持つものと持たざる者との差が大きい国であるとの印象を受けました。

 本作中でも、主人公スクルージに雇われるクラチット氏は、安い俸給で雇われ生活は貧しい。その他の町の風景も概して暗い。こうした描写があり、つと民衆の苦しさや貧しさを感じずにはいられません。

 

 また、当時の富裕層(成金)のケチさも感じられます。スクルージは製造業ではなく所謂第三次産業っぽい職業(貿易商?)に見受けますのでいわゆる資本家ではないかもしれません。しかし、ディケンズが表したかったのは主人公に代表される金持ちのエートスなのかもしれません。もちろんそれは、言わずもがな、ドケチ・不寛容です。

 

 宗教改革英国国教会の設立により中途半端に終わった感のある英国がこうした状況にとどまる一方、よりドラスティックなピューリタンやカルバン派が米国に渡り職に邁進し、米国文化として社会奉仕や慈善などのPhilanthropyが行き渡るのと好対照をなします。

 

英語について少々

 それと英語について。この村岡花子氏の訳は何と1952年のものらしいのですが、今から約70年前の訳であることを考慮すると相当こなれていて違和感のない訳だなあと妙に感心しました(あくまで70年前であることを想像して、です)。拙い譬えで申し訳ないのですが、昔の洋楽ロック、1980年代のMetallica(米)とか1970’のThin Lizzy(英)を今聞いても、お、結構いけてんじゃん、と感じた感覚です(すみません、お若い皆さんは感じませんね)

 

 あと、英語学習にも使えるかもしれません。Kindle版は数百円で頒布されていますし、厚さもないので原書通読をてみてはいいかがでしょうか(当方試していないのに無責任で申し訳ないですが笑)。私も時間と機会があればやってみたいと思います。

A Christmas Carol: Classic Edition (Illustrated)

A Christmas Carol: Classic Edition (Illustrated)

  • 作者:Dickens, Charles
  • 発売日: 2021/01/14
  • メディア: ペーパーバック
 

 

 

おわりに

 まとめますと、読んでみて損はない作品だと思います。著者ディケンスがまずもって有名ですし、クリスマスも毎年きます。私が読んだきっかけも、とある会で友人が本作を引き合いにだしてスピーチをしていたのを目のあたりにしたからです。読んでなくて、スピーチの筋がちょっとわからず悔しくて笑 つまりそれだけ引用される機会が多いですし、スピーチのみならず、きっと他の文学作品の下敷きにされることも多いのではないかと想像します。

 

評価 ☆☆☆

2021/01/17

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