海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

他人のことを想えるって、素晴らしい―『卵の緒』著:瀬尾まいこ


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あらすじ

  主人公の育生は小学生。どうやら自分は捨て子らしいと思っている。問うと、祖父母の様子はおかしくなるし、母親もきちんと教えてくれない。父親もいない。そんな母親が恋人の朝ちゃんを連れてくるようになった。朝ちゃんが新たに家族に加わることになる中で明らかになる育生の出生の謎。それは・・・。

 

感想

 瀬尾氏の作品でいつもテーマとなる家族。今回も家族や人の繋がりについて考えさせる良い作品であった。もちろんクスリと笑わせるユーモアも健在。

 

 表題作の『卵の緒』および『7’s blood』、どちらもが血縁の妙や家族について焦点を当て、登場人物の心の変化を丁寧に描き、読者にも思考を促す。

 

 筆者は家族とは色々な形があっていいと言いたいのかもしれない。だからなのか、本作で語られる家族はそんなに単純ではない。『卵の緒』では主人公親子は全く血がつながっていない。他方『7’s blood』では半分だけ血がつながっている異母姉弟。これらが物語で等しく家族の感覚を得ている。その感覚を生み出すものは何か、なんてこともつらつらと考えてしまう。

 

家族を家族たらしめるものとは?

 私の場合、外人である家内に立派に家族感を感じる。まあ当たり前だけど、普通に家族だからね。これはやはり時間によって作り出されたと感じる。家庭内言語の日本語は家内はいまだ下手だし(日本から離れてますます下手になった)、性格がそもそも合わない(今でもしょっちゅう相手にイラっとする)。掃除や洗濯を完璧にしないと気が済まない妻(ついでに言うと他人にもそのクオリティの清潔さを求める)と、我慢の限界まで汚くしてOKな私。失敗しないようにと子供にマイクロマネジメントする妻と、失敗させて学ばせる子育てスタイルの私。流石に大きな喧嘩はしなくなったが、付き合い始めて25年たった今でもマジでむかつくことがある(相手もそうだと思うけど)。理解できないなあと思う事もある。今更だがとにかく違うのだ。

 しかし、しばしば家内と私は互いを「戦友」と呼び合うのは、ともに学生時代から今まで、転勤や子育て等を通じて共に厳しい時間を耐え抜いてきたことに起因すると思う。

 

 まあでも、色々な形があっていいのだと思う。かつてのお見合い結婚は、まずは形から入り、時間と共に内実も伴うというか時間が内容を満たしてくれる仕組みだったのだとおもう(内実を伴わず一生不幸に終わったものもあるかもしれない)。デキ婚というのも家族という『箱』が赤ちゃんを伴って用意された形かもしれない。いずれにせよ、現在は因襲の力は弱まり、個々人が性別や年齢に縛られずより自由に人生をデザインできる時代であると思う。

 

 そうそう、感想でした。

 『7’s blood』では短い間の同居生活に、ふとした絆のようなものを感じた姉弟が描かれる。ではここに家族感が醸成されたとしたら何が原因だろう。想い? だとするとやっぱり優しいというか人を想うことができるひとは家族を作りやすいということか。なんか当たり前のことを言ってますが笑。

 

おわりに

 分かったような分からないような感想を話しましたが、多様な家族の在り方について考えさせられた本です。正しい家族というものはないし、きっと家族の意味なんて家族の数だけ存在するのだと思います。その意味ではLGBTQ同士の結婚も成立することには違和感は感じません。想いさえあれば。

 そう考えると、家族というより、人を想うことの素敵さに思いが至ります。子供たちも人のことをきちんと想える人になってほしいと思いました。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/04/04

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