海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

戦争はむなしいだけ―『シンガポール陥落』著:フランク・オーウェン 訳:永沢道夫


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 アジアの辺境に移り住んで8年目となります。

 そろそろその土地の言葉や歴史にある程度詳しくなってないとダメだよなあと思い至り、手始めに本作をチョイス。

 

 端的に言えば、読む手がスローモーになる本です笑 まあ戦争の話ですので、陰惨な殺し合い、イギリスの指揮系統のダメさ加減、日本兵の残虐さなどが描かれています。そういうのはこれと言って面白いというわけでもありませんね。

 

 ただ、比較の対象として読むと歴史本でも相当に違いがあります。先日読んだ『マッカーサ大戦回顧録』が何か本人のおれおれアピール本のきらいがあった一方、本作は資料を丹念に読み起こし、そこで何があったのかをきちんと残し過程を考える作品であると思います(まあでもだるめです)。

 

lifewithbooks.hateblo.jp

 

 

戦争は何を生むのか

 寧ろ私は、戦争の非生産性にやるせなくなりました。

 作中でも語られますが、本国から遠く離れたイギリス兵は一体何のために戦争をしていたのか見当もついていない。ましてや英領インド、英領マレー連邦からの兵士は猶の事戦う意味が不明瞭でしょう。

 対して日本には資源獲得という目的があったのでしょう。でも物資は豊富ではないでしょうし、末端の兵士たちからして死に物狂いです。民間人虐殺とか捕虜の虐待とか日本人は散々悪いことをしたと責められます。いわく「これが彼らのブシドウだ」と。そんなのは武士道ではないですよ。日本軍も追い詰まっていたはずです。また個人の意見が通る文化ではないのです。と本に対して一人語った次第で。今更ですが『武士道』を再読しはじめました。

 日本軍の悪行は否定できません。するつもりはありません。きっとあったのでしょう。しかし、戦争が始まってしまった時点で綺麗な戦争などあり得ないのではと思いました。

 

おわりに

 本作、名前とは裏腹に大部分の舞台はマレーシアです。ですのでシンガポールのことを勉強しようと思った方は肩透かしを食らいます。

 しかし、アジアに住む、旅行する機会のあるかたは一度くらいは目を通しておいてもいいかもしれません。私の友人・知人(ざっと30代から50代)でも、その祖父母世代が日本軍から受けた仕打ちを記憶にとどめている方が相当数います。決して楽しくない話題ですし、当の友人たちは君が悪いわけじゃないとフォローしてくれますが、歴史背景を受け止めないと、しっかりした未来も築けませんね。

 

評価 ☆☆☆

2021/04/13

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