あらすじ
とある郊外で起きた火災事故。多くの人が亡くなった。しかし、実際には火災は起きておらず、避難するときにパニックなった客が通路に殺到して多くが圧死したという。事の真相は一体?
Q&Aのみで語る斬新な作り
作風が非常に斬新でした。なんとQ&Aだけで物語が進行していきます。
一見刑事の取り調べ風にQ&Aは進行し、関係者の証言から事件の概要がおぼろげに分かってきます。そして次第にQ&Aはインタビューの聞き手と話し手、友達同士の会話、タクシーの運ちゃんとお客等バリエーションが変化していきます。
展開は語り手が中心なので、独白のような書きぶり。言葉のキャッチボールというよりは独白・取り調べ的なので場面の理解するにあたりもどかしさがありながらも、前のパートで語られていた人物が後段になって語り手となっていると思わせる箇所が幾つかあり、こうして少しづつ全体像を読者自身の頭の中で作らせるといった作品となっています。
最後までもどかしい
で、事の真相はというと、明確には語られません。くぅー、なんなの!?
さらには解説を書いた建築学者の森川嘉一郎氏。彼の文章が小難しくて、読後のもやもや感に追い打ちをかけます笑
おわりに
きっと純粋にエンタメを追い求める人には不満足だと思います。消化不良というか欲求不満に陥るのではないかと。
私は恩田氏の変幻自在の作風の変化にこれまで驚かされてきましたので、今回もどちらかと言うと「すげえな。今度はこう来たか」と驚嘆の念を改めて覚えたという次第です。
一般受けする作品というより、作者のファンや珍しいもの好きの方にはおすすめできる本だと思います。
評価 ☆☆☆
2021/03/21