海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年は世界史と英語を勉強します!

死者と再会できる場で起きる殺人事件―『ネクロポリス』著:恩田陸


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 死後の世界、皆さんは興味はおありでしょうか。あるいは、亡くしたけどまた遭いたい方はいらっしゃいますか。あるいは、会ったことのない祖先に有名な人がいて会ってみたいとか。

 

あらすじ

 本作はそのような死者と会える場所「アナザー・ヒル」を舞台としたファンタジー系?モダンホラー・スリラー。

 聖地「アナザー・ヒル」に入山できるのは一年に一度の「ヒガン」のシーズンのみ。そこは生と死の境界が曖昧な土地であり、「アナザー・ヒル」を抱える国「V.ファー」は民族系統としては日本に近く、イギリスの植民地であった過去がある。この「アナザー・ヒル」に入山する幸運を得た日本人のイトウ・ジュンイチロウ。東大大学院で文化人類学を研究する彼は、遠縁の初めて会う親族を頼って「アナザー・ヒル」で死者と会う体験する予定であった。ところが、発生したのは想像もしなかった連続殺人事件。ジュンイチロウは意図せぬ形でこの事件へと巻き込まれていく。

 

感想

 これまで色々と恩田氏の作品を読ませて頂いておりますが、よくもまあ変わったセッティングを思いつくなあと感心します。

 

 人間生まれれば必ず死ぬというのは必然の理ですが、付随して起こるのは喪失体験だと思います。その喪失体験がもし癒せるとするのならば、死者との対話はとても貴重なものであろうと感じました。言えなかった心残りや伝えられなかった感謝の念を今一度言えるチャンスがあるとすればどんなに救われることか。そのような出会いを可能にする「アナザー・ヒル」はその点で非常に魅力を感じました。

 逆に、隠していた秘密が死者によって暴露されることがある点は作中でも述べられています。この死者の証言はミステリ的には肝になる材料ですね。

 

 さて本作、とにかく登場人物が多いですね。巻頭に見開きで人物紹介がまとめて書いてあるので分かりやすいのですが、何度か(も)行き来を余儀なくされました。イギリスの植民地であったことから横文字も多く、雰囲気的に洋ものミステリーな感もあります。

 

おわりに

 いずれ我々も赴くことになる死の世界と生の世界との接点を描くという点は面白かったです。またこうした生死のはざまを利用したトリック?やイタコ的な超自然的な力を有する登場人物がストーリのなかでキーを握る点などは面白く読めました。

 ただ、恩田氏の作品の中では普通な(わたし的にあまり響きませんでした)出来であると感じた次第でして、まあお時間に余裕のあるかたやファンのかた、または死者の世界とか死者の世界との接点みたいなことに興味がある方にはお勧めできると思いました。そうそう、読後に調べましたが、ネクロポリスとは墓地のことのようです。

 

評価 ☆☆☆

2021/04/28

 

 

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