ネタ晴らしはしたくないのですが、湊氏らしからぬ終わり方でした。そういう意味では背表紙にあった「衝撃の結末」というのは誇張ではありませんでした。さすがです、湊かなえ氏!
あらすじ
かつての仲良しであった女子高生の由紀と敦子、今は訳あって少し距離がある。彼らは、転入生の紫織が親友の自殺を目にしたことを告白される。二人はそれぞれ自分も同じように死を目撃したいと願い、一方は病院の読み聞かせボランティアへ、もう一方は老人ホームでのボランティアへと赴く・・。
女性は恐い?
さて本作で一番強く印象づけられたのは、主人公たる由紀と敦子のすれ違いです。
周囲からの攻撃を避けるために自分を曲げて無理をする敦子の息苦しさ、そして徹底してシニカルに批判的にそれを見つめる由紀の冷酷さ。コニュニケーションを取ろうとしない、取ろうとしても埋まらない二人の間の溝。思春期特有なのか、互いに思う気持ちがあるのに伝わらない、というもどかしさ。
もうひとつ。少女の、特に由紀の、すこしスレている心情が冷徹かつ残酷で、ある意味ホラーでした。
自分の体をネタにしてでも人の死を見たいと願ったり、めんどくせえから彼氏に体を捧げてやれと思う視点も、あたかも自らを第三者的に見ているかのような冷静さ。
驚くべきは、ここまで振り切って変態的(人の死の瞬間が見たいとか)なのに、それでいて常に冷静、そして一見普通でどこにでもいるような女子高生でいられることです。
まあキャラ設定だからというのはあるのでしょうが、ほら、男性の変態って、何というか隠せない変態性があって、ふとした瞬間に目がいっちゃってたりするイメージがあります。そう、隠しきれないというか漏れ出てくるというか。
そういう点で本作の主人公由紀はその異常性が常態化していて、しかも日常に溶け込んで違和感がないことが背筋をゾクゾクさせました。
因みに話は途中で何となく筋が見えてきます。あー、これはきっと別々に進行する物語が結びつくなー、と。でも、最後の最後で湊氏らしい、いやーな終わり方をします。ほんっと、すっきりしない!!
おわりに
相変わらず子供に読ませる、ためになりげな本を探しての読書でした。
今回の作品も、本嫌いの子どもたちにはちょっと厳しいかなあ。自分は読んで楽しいのだけど、子どもたちに理解してもらえるかはちょっと定かでない。。。
学園モノを重点的に攻めてきましたが、根がひん曲がっているので、素直に面白い作品になかなか当たりません(まあ自分が避けているんですがねね)。そろそろアクション系・推理小説系に軸を移してみようかなあ。
評価 ☆☆☆
2021/05/03