海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年は世界史と英語を勉強します!

やや古い!?も、中盤以降グイグイ読めるクライシス・サスペンス―『天空の蜂』著:東野圭吾


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(映り込み済みません。もう直す気力すら最近湧かないもので。。。)

あらすじ

奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きる時…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス~裏表紙より

 

感想

 今から30年程前、トム・クランシーの『レッド・オクトーバーを追え』という作品が流行りました。ソ連原子力潜水艦が米国へ亡命を企てる。ソ連当局はこれを追うも見つからず、先回りして米国へ通告、曰く錯乱した潜水艦船長が米国への戦争を仕掛けていると虚偽の伝達をする。米ソ両陣営がこの潜水艦との接触を探る中、互いに互いを信じづらい状況をどう切り抜けるがスリリングな作品でした。

 

 本作は、そんな軍事ど派手アクション系を思い起こすクライシスサスペンスでありました。1995年の作品なので実際古いのですが、読むとやはりちょっと古く感じます笑 登場人物が家庭を顧みずモーレツに働き、妻からよく思われていないという絵柄も、2021年の今から見ると前時代的と言ってよいかもしれません。

 

 しかし、そんな出だしの引っ掛かりをやり過ごせば、そこは東野圭吾の作品、スリリングな展開に手が止まらなくなります。クライシスがどのように解決されるのか、バッドエンドなのか、などハラハラと楽しく読むことができました。

 

犯人を動かしたのは誰でもない!? ネタばらしごめんなさい

 作中印象的なのは、犯人が事件を起こした本当の原因(ルートコーズ)が特定の人物や事象ではない?かもしれないことです。彼はこれを「大衆」と言っています。

 犯人が述べる、顔の見えない「大衆」の怖さ。大衆の無関心と身勝手さ。

 原子力発電所はその作りからして危険を伴うものです。誘致があったとしても、補助金があったとしても、リスクを特定の地方へ負わせているという事実は変わらないと思います。他方所謂「都会」の人間(まあ「大衆」です)はこうした事象には全く関心を持たない。問題を孕む状況については理解しているものの、自分の近隣には居てほしくない、そして遠くにあるうちは関心を寄せない。そういう大衆にほのかな怒りを抱く犯人。

 

 他にも、登場人物の子どもの死亡の原因がいじめであった可能性があるという部分。

 特定のリーダーなしにちょっとした「悪意」や「からかい」がクラスに伝播し、一人の生徒を傷つけ自殺に追い込んだかもしれない。

 そうしたちょっとしたきっかけが不特定の大衆を喚起し、他人の家庭を壊したり、人の幸福を台無しにする可能性があります。そんな時、被害者は誰に怒りを向ければいいのか。こうした構図は、ネット社会に馴染んだ昨今、いっそう共感出来ることであると思いました。

 

地方ネタ満載 ~ 三菱重工!?、名古屋、福井

 その他、ヘリコプター製造会社の社員がメインキャラでしたが、拠点が名古屋でしかも飛行機関連というと三菱重工をモデルにしているとしか思えませんでした。宮崎駿の『風立ちぬ』を思い起こします。

 かつて名古屋に住み、子供たちを水晶浜へ海水浴に連れて行った経験のある私。読中、小牧に工場があるとか、事件で狙われた原発が福井にあるとか、犯人を立石岬に追い詰める場面など、読んでいてとても懐かしい気持ちになりました。

 

おわりに

 ということで、少し古臭くも、懐かしくそして楽しく読めた作品です。

 もともと本友達が押し付けるように貸してくれた本なのですが(会社に言ったら紙袋にどさっと本が詰まっているのが彼女の流儀)、自分ではどうしても特定の本に偏るので、こうした貸し方、友人は有難いなあと改めて思った次第です。

 

評価 ☆☆☆

2021/05/11

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