コロナ禍の中、海外旅行はもとより、国内旅行でさえおぼつかない昨今、本書を読んで勝手に脳内旅行をしていました。ああ、旅行っていいですねえ笑
実は私は氏の作品は初めてですが、ノンフィクション作家として有名で、また深夜特急という旅行ルポは良く耳にしていました。
本作は1980年代の初出版であることから考えますと今からもうかれこれ40年も前の話でありますが、時代が違っても旅の本質は変わりません。私が考える旅とは『未知との遭遇』、そして『自分を振り返る』です。
作中では主人公氏は香港からバンコク、ペナン、クアラルンプール、マラッカと渡りシンガポールに到着します。英語と現地語とちゃんぽんしつつ、現地飯をくらい、時にぼったくられたり阻止したり、時に優しい現地人に助けられたり、というローカルとの遭遇の連続。
その途中で、自分がなぜ旅をするのかとか、今後どうしたいのかとか、そういう不安が一度ならずも心をかすめるのも旅の醍醐味だと思います。
あくせく働く現実ではなかなか出会えない状況がまさに旅だと思いますが、そんな旅エッセンスがいかんなく描写されていると思いました。
古めの本ですが、その筆者の視点や心には古びた点は全くないと感じました。不朽の名作とまで持ち上げる気もないですが、旅好きにとってはバイブルみたいな本であると感じました。他のシリーズも読んでみようかしら。
ちなみに本人が色街へ遊びに行くというような武勇伝的なノリのエピソードもないので非常に健全であると感じました。
評価 ☆☆☆☆
2021/05/26