イクメンという言葉が大分一般的になった今日この頃ですが、世の男性諸氏、もっと子供にかかわりましょう!
本書を読んでそう思いました。
副題に「お母さんのための」と銘打ってあるのはわかります。それでもなお、筆者がこうした限定的なタイトルをつけた背景に男性パートナーの助けはあてにできない、という意図を裏読みせざるを得ません。
世の男性諸氏。
子育ての負担が続くのは永遠ではありません。寧ろあっという間に子は巣立ってしまうものです。
うちは、上の子が希望の高校に入るため15歳で親元を離れました。もう助けたくてもできない現状です。せめて助けられるうち、父親として身近に接することができるうちにその役目を果たしましょう!
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その上の子が親元から離れる当日、空港へ家族で見送りに行く際、私の頭には彼のこれまでの人生が走馬灯のようによみがえりました。
私にとって初めての子ども。池袋は鬼子母神の近くの小さな助産院で初めて産声をあげた日。これ、マジで父親にならないとまずいなと意味不明の自覚をし直した日。愛くるしくハイハイで寄ってきて、甲高く笑うその笑顔。べたべたと私を頼る幼稚園児時代。何で何でを繰り返し、面倒臭くも微笑ましく返答する日々。私が車を買えば車に興味を持ち、私がギターを弾けば楽器に興味を持つ。親を見ているんだなあと実感。小学生に入り一緒に野球をしたりキャッチボールをしたり。高学年になると次第に背が伸び、中学生にもなると160cmを越し、大人に近づく日々。家族旅行を共に計画し、どの観光地を巡るか・なにを見るか・どんな名物を食べるかなんていう計画を共にしたり。まだまだ、次はどこに行こうかと話し合いたかった。この本読んでみろとか、お前の作文は漢字がおかしいんだよとか、そう促すチャンスも機会も今後はもう難しい。
もちろん死んだわけではありませんよ。
しかし、子が手が届かないところへ行ってしまう現実を前に、自分に襲ってきた感情は、「私は一生懸命父親をしただろうか」という自己への問いでした。もちろん答えは、いいえ、です。
あの残業、本当にする必要があっただろうか。その休日出勤、意味ありましたか? 沢山の飲み会、出る必要あった? 資格の勉強とかして子どもをほったらかしにしてなかったか? とかとかそういう自問自答です。
同時に、父親の帰りが遅い日々を子どもはどう感じただろうか、とか、日曜日に勉強だと言って出かける夫を妻はどういう気持ちで送り出したのかとか、そういう後ろめたい気持ちや申し訳ない気持ちも沢山沸き起こってきました。
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ちょっと古いのですが、YOLOなんていう略語があります。You Only Live Once ~ 人生は一度切りってやつです。やっぱ古いな。
でも本当にそう思います。
人生はやり直しや立て直しはいつからでもできると思っています。その気次第で。でも、繰り返すこと、時間を戻すことだけは決してできません。だからこそ、言いたい。折角家族が家で待っててくれるのなら、早く家へ帰ろう!子どもと遊ぼう!そして奥さんの愚痴をたっぷり聞こう!(私、今でもなかなかできませんが)
男性諸氏!父親業ができるのならば、やれるうちに堪能しよう!それは今だけ、期間限定で許されたボーナスタイムです!
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大分本書の感想からは逸れてしまいました。失礼しました。
本書の内容としては、私のお気に入りは「第三章 イライラ・怒りをコントロールする方法」。そのなかで自分の怒りを客観的に見つめてみること(温度計のように怒り度何度かみたいな)や、有酸素運動するなど、身体的・精神的に怒りを解消する方法が紹介されています。もちろんこれは子どもに対するもの以外でも有効です。
終りに
子育ては簡単じゃありません。私自身40代半ばになっても未だに自分は子どもだと感じるくらい、未熟さを感じることもしばしばです。それでも折角、親になるという貴重な機会を頂いたのです。これからも何とか怒らないでうまくリードしたい、そう思います。
この本は母親に限らず、父親にも有効なアンガーマネジメント入門です。そしてアンガーマネジメントは子どもの有無に限らず、社会人として習得しておいたほうが良い技法であると心底思います。その点で本作は利用度の高い本であると感じました。
さいごに。この本はとにかく怒りの沸点が低い妻を何とか出来ないかと思い数年前に購入に至ったものです。今、読後に感じたのは、妻に何かが足りないのではなく、私の理解とコミットが足りないということでした。
子育ては、つらく楽しく、そしてとても貴重で思い出深い体験だと思います。世のお父様お母さまの子育てライフが、怒りの少ない、より充実するものであることを願ってやみません。
評価 ☆☆☆☆
2021/06/04