かつて子供の高校受験用の国語の問題文で一部が掲載されており、それをきっかけに購入したものです。
端的な読後の感想は、男性目線の青春小説だなーということ。
舞台は東京の中心街、青山・麻布・六本木の才知に囲まれた谷間の霞町。そこは昔からの旧家や商家が存在し、そこのぼんくら達の成長の過程を描いています。
ぼんくら、と表現しましたが、高校生で車とか持ってたり(もちろん親から買ってもらう)ちょっと鼻につきます。
ただ、うっすらと将来への不安を感じながらも、エッチなことばかり考えていたり、男の友情が妙に固かったりとか、そういうのは微笑ましく楽しく読めました。
これが森絵都さんや瀬尾まいこさんの青春小説だと、大体主人公は女性であり、視線はたいてい冷静なのであります。男性はこうはなりません。おばかです。
その他、癖のある写真屋の祖父、元芸者を身受けした話等々、主人公家族の家の歴史にうねりがあり、そうした点もドラマチックでした。
おわりに
1970年代に青春を迎えた人の話はどう考えても古い。解説のDJ氏は胸を熱くして本書を読んだと書いてあるが、私はもちろん古いなあと辟易しながら読みました。
にもかかわらず、本作を面白いと感じさせ、また試験問題にも選ばれる理由は、やはり高校生特有の心情を瑞々しく描いているからであり、また波乱がありながらも家族の繋がりを温かく描いているからだと思いました。
描かれる風俗がやや古くさいのですが、それを除けば楽しく読める青春小説だと思いました。エッチな事ばかり考えている高校生が主人公なので女子受けは余りよくない気がします笑
評価 ☆☆☆
2021/06/05