海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

日本の将来が心配・・・―『アメリカに潰された政治家たち』著:孫崎享


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 陰謀論チックですが、本当にアメリカって怖い国だと思います。

 

 別にアメリカ人一人ひとりが怖いというわけではありません。寧ろ知人にはいい人が多いし、ダイナミックで素敵な国だと思います。しかし、国家として国益を優先するとき(国家として当然のことながら)、アメリカは日本の事なんか気にしていません。日本どころか、アジアや中東の国々のことだって考えていません。そこが怖いのです。

 

 これは都市伝説でもなんでもなく、世界史の一部でもあります。

 英国のアヘン戦争、フランス・英国のアロー戦争、あるいは米国の米西戦争は、意図をもって起こされた戦争でした。決してギリギリの外交努力の末やむなく行われたものではありません。各国が自国の国益を鑑みて起こしたのです(公行を廃止したい、開港させたい、キューバが欲しい等々)。

 

ごめんなさい、本当にアメリカという国が怖い。。。

 今日、このようなあからさまな侵略は行われなくなりましたが、インテリジェンスを使用した工作は続いています。CIAはその最たるものです。
 更に、冷戦終了後CIAが存在意義をアピールするために色々と事件を捏造するという話まで聞きます(陰謀論じみていますかね)。本書で取り上げられていた通り、それまでCIAを通じて支援していたサダム・フセインも結局とっ捕まえて殺してしまったのは有名な話です。その名目は大量破壊兵器ということだったようですが、結局そんなのはデマだったそうで、そこは当局も間違いを認めているそうです(P.67)。

 で、反省をしたかと思えばそんなことはありません。一回ことを起こせば、後々に間違いを申告しても世の中の流れは変わらないと思いませんか?(我々の中にはフセインは悪の権化みたいなイメージは消えないでしょ?)。だから、わかってて嘘をついて事を起こすアメリカが怖いのです(より明示的にはCIAや政治家です)。

 

政治家やマスコミは日本国民よりアメリカの肩をもつ!?

 そして、アメリカがこうした欺瞞的な行為を幾つも行っているにも関わらず、日本のマスコミが報道を一切しないというのも更に怖い。逆に、米国に盾つく政治家については背中から矢を放ち政治生命を絶とうとする。

 そうそう、こうやって潰れていった政治家が本書の主役でしたね。岸信介田中角栄らビッグネームから、鳩山由紀夫など割と最近の人もどうやって潰されたのかが書かれています。

 

なぜ日本人が日本人を陥れるのか? 結局は金か!?

 こうした部分は多分に陰謀論の香りがするのですが、それよりも、なぜ日本人が同じ日本人を陥れ、長期的には日本国を不利にするようなアメリカに雷同するのかが疑問に思いました。

 丁度19世紀のイギリス史を勉強していて、何となく構造が似ているのかもしれないと思い至りました。それは大土地所有者と産業資本家の対立です。

 ナポレオンの大陸封鎖例により、国内農業マーケットでぼろ儲けをした地主層は国内保護主義を貫きたい。他方で産業革命を果たした産業資本家は自由主義的に開放することで自らの商品(木綿製品)を海外へ売り込みたい。そのためには保護主義は徹底的に排除したい。

 つまり日本では、対米路線の政治家は保護主義的(日本を守りたい)で、米国追従路線の政治家は産業資本家的(日本がどうなろうと自分の会社がうまくいけばいい)というような気がします。って、なんかこれTPPの議論とも似ていますね。

 で、産業資本家は自由主義という思想と金でつながっているので、その金で政治家が買われている(飼われている?)という見方もできます。

 

 政治家が、志が高くなく給金やベネフィットで職業を選ぶような手合いならば、さらに理解もできます(まあ嫌ですけど)。正しいことをすると干される、場合によっては生命を絶たれる恐れすらある。なら黙っておく。結局家族も自分の仕事も守りたい。そういうメンタリティで働く政治家や官僚、マスコミ関係者が多いのでしょう。

 

 ちなみにですが、19世紀、イギリスが自由主義的に傾く中、ドイツではドイツ関税同盟なるものができました。これはもちろん保護主義です。当然のことながら自由競争とは究極の強者の理論であり、実力差が明らかな場合はペナルティをつけるのはスポーツの世界でもよくある話です。

 

 さて日本は現在、強国でしょうか、あるいは弱い国でしょうか。

 

おわりに

 ここ数年常々思うのですが、日本の将来が心配です。この日本にこれからも住むことになる子供たちが心配です。

 自分が良いだけでは駄目であると本当に思います。凄く成功したわけでもないですが、50も近くなると自分のことより(自分の将来もおぼつかないけど)子供達の豊かさ・将来が気になります。ひいては日本の子どもにどうすればよりよい明日が残せるかという事に思いが至ります。

 

 現在の日本を見ると、コロナ対策でもオリンピック対策でも、本当に暗くなる話ばかりです。そうした時、なぜ日本の政治家がこんな体たらくなのかと思うのならば是非読んでみて頂きたい本だと思いました。私たちから遠ざけられている・でも逃れられない事実があることに気づくチャンスかもしれません。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/06/14

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