娘が学校の友人から借りてきて激賞していたので、そうなんだぁー、へー、と言いつつ自分も読んでみたくなり、早速試してみた次第です。
因みにこちらのジャケはインド亜大陸特別版とのことです。買ったのは東南アジアですが。
名前はよく聞いていましたし、ひょっとしてどこかでドラマ化でもしていたら見ているかも、と思いつつ読み始めましたが、読んだことはなかったようです。
高級寝台列車で起こる殺人ミステリーですが、90年ほど前に書かれたとは思えないほど現代風で普通に面白かったです。
時代背景を深読み
個人的には1933年初版という情報が世界史と絡めて想像を掻き立てました。
大恐慌やウォール街が話題に出ていたりとか。登場人物がお酒を隠し持っているのも禁酒法の名残だよね、とか。フランス国籍を取得した亡命ロシア婦人はロシア革命(共産化!)の影響があるのか?、とか。その婦人の下で働くのがドイツ人であるというのも、ひょっとして一次大戦でドイツがメタメタになったのでドイツ人も下働きに出るのかな?とか。インド帰りの英国人将校というのも、帝国主義時代を感じさせます。
このあたりの人物がバラエティに富むのは本作の肝でもあるので是非読んでどんでん返しを味わって頂きたいです。
アガサの英語
英語で読むにあたっては、単語はボキャブラリのストックがないと難しいと感じました。でも文法は難しくないので結構どんどん読めます。章も細かく区切ってあるので、読書計画を立てたりもしやすいと思いました。
少し閉口したのはやはりフランス語。eh bien とかmon cherなどはいいけど、いちいちフランス語が出てくるので、私は張り合ってポケット仏語辞典で懸命に引きました。
あと代名詞が少し特徴あったかな。
日本の中学英語よろしく二回目の人物名称は代名詞、と言うような感じで代名詞が多用されるので、2人の男性の会話で、このHeはどっちだ?みたいなシーンが結構ありました。
まあでも日本語訳が多いのはいいですよね。日本語訳を先ず読んで、その後原書を読む、あるいは原書を読んでから翻訳で復習、などどちらもできるなあと思いました。映画やドラマ化作品ももちろん使えますね。
おわりに
多くの方がブログやツイッターなどSNSで感想を書かれている本作。作品そのものの魅力もありますが、他人がどのように感じているのかの違いも分かり、二次マテリアルを味わうことができ、それもまた一興。
古典ミステリとも呼べる作品ですが、原書で読まれている方は意外と少ないのではと思います。英語の他、フランス語もちゃんぽんで入り、欧州の香りが湧き立つ作品だと思います。是非原書で味わってみてはいかがでしょうか。
評価 ☆☆☆☆
2021/08/05