海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年は世界史と英語を勉強します!

正しいとは何か?んなの分からないよ!!―『これから「正義」の話をしよう』著:マイケル・サンデル 訳:鬼沢忍

今から約10年程前の作品。あのころは非常に盛り上がっていたように思います。
コロナやオリンピックで騒がしい昨今、古本屋に並んでいた本作に、ブームは完全に去ったと判断し、そろそろ読んでみようと思い手に取りました。

 


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しかしまた長いタイトル。原題は”Justice - what’s the Right Thing To do”であります。英語のタイトルの方が伝わりやすそう。

 

グローバル化が進む中、価値観の多様化は社会で広く受け入れられつつあると感じます。しかし、多くの倫理的疑問が世の中には残っています。そうした疑問に対し、社会としての正しい判断、つまり「正義」とは何か、を過去の哲学者の思想を紐解きつつ考えるものです。

 

社会には倫理的疑問がたくさん

例えばですよ。自然災害に伴う便乗値上げは許されるか。リーマン後に公的資金の入ったAIGの幹部のうち37人が100万ドル以上のボーナスを受け取る予定であったがこれは正しいことなのか。最大多数の最大幸福は正しいか(ローマのコロッセウムでキリスト教徒とライオンとの対決を民衆が喜んで開催を求めるのなら、少数派としてのキリスト教徒がむざむざと殺されることは正しいことなのか)。そもそも多数決は正しいのか。究極の個人主義の下、本人の意思でにより臓器を売ること、売春をすること、自殺することは容認できることか。嘘は良くないことだが、人殺しを目の前しても嘘をつかない方がよいのか。入学試験などにおける実力主義は本当に実力だけか(公平と言えるか)。アファーマティブアクションは公平か。今を生きる米国の白人は、祖先の行った奴隷への行為に対して責任があるのか。あるいは、我々日本人にも、祖父や曾祖父が第二次世界大戦中に中国・東南アジアで行った残虐行為の責任をいまだに持つべき・持っているのか。

 

飲み屋で議論していたならば、「まあ、世の中難しいよな」とうやむやな終わり方をすること必須の疑問の数々。

 

ある意味哲学・倫理学入門

こうした疑問に対して、有名どころを引っ張って議論を深めます。

ベンサム功利主義 ・・・ 最大多数の最大幸福。筆者によると×。多数の幸福のために一部の人間が犠牲になる。最大多数が求めていた幸福が誤ったものである可能性もある。

カント(定言命法 ・・・ 「万人に当てはめても矛盾が生じないような原則のみに従うことを求め」(P.157)るあり方。ごめんなさい。難しくて表現しきれません。でも、「人それぞれだよねー」ではなく「皆にとって当てはまるような法則にしたがう」的な感じ。

ロールズ実力主義+格差補正) ・・・ 何でもかんでも自由競争って、そもそも競争する前から与件に差があるでしょ? だからアファーマティブ・アクションも容認、というような考え。反論としては、実力のある人が能力を発揮することをやめる可能性(医師を目指していたが、非優遇なので医師はやめとこうとか)等々。

 

他にもアリストテレスの考えとかも書かれていますが、このあたりにしておきます。

 

おわりに

勿論しらふで読んだのですが、結局「世の中難しいわな」というのが感想です。哲学者の思想もきちんと理解できたわけでもないです。今後ほかの本を読んでもどこまで理解できるかはちょっと自信もありませんが。。。

 

でも、こう考えると裁判官って本当に難しい仕事なのだと思います。条文や憲法に当てはまる・当てはまらないという判断以外にも、こうした哲学的倫理的思索がないと双方納得のゆく判決なぞは到底不可能だろうなと感じました。倫理学者と同じくらい実践的に首尾一貫した論理と倫理を持たなければ仕事にならないなあと(そもそも人間ごときが人を裁くなんておかしい、というのは抜きにして)。米国のアファーマティブ・アクションの項を読んでいて特に感じました。

同様に政治家や官僚も、こうした思想的素養がないと良い仕事はできないだろうな、と感じました。

 

ということで、ちょっと難しめの本ですが、具体例も多く、哲学・倫理学の入門書として有用だと思いました。思想に興味がある方、「正しい」とか「正義」とかについて議論したい方、法律や社会・政治に興味がある方、自由に興味があるかた、このような方にはおすすめできる本だと思います。

人生という判断の連続を今後も続ける中、多くのジレンマや対する考え方について思索をするのは無駄ではないとは思います。あなたが当事者ならどうするか?そんな思考練習ができる本です。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/08/08

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