海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

ちょいめんどくさい自意識過剰女性、自己回復の話。分からんでもないけど・・・- 『うつくしい人』著:西加奈子

この本、読中めちゃくちゃ疲れます。なんというか、そう、メンドクサイ!

 


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あらすじ

小金持ちの家の娘、百合の話。けっこう自意識過剰。姉は天真爛漫で美しく、でも引きこもりとなった。対して百合は世間の空気を読みつつ学生時代も社会人時代もサバイブしてきた。しかし実は、自分にひとかけらの実力も姉ほどの美貌もないことを理解していた。周囲にあわせて自分を偽っていることも息苦しかった。

あるとき、些細なミスを犯し、それを慰められたことをきっかけに彼女は切れた。オフィスで号泣。その後退職。そうした自分を認めるのも嫌で、ある時彼女は一人旅に出ることにした(ちなみにその旅費も親の金でそれも本当は嫌)。この旅で彼女は少しずつ自己を回復していく。

 

周囲は気になるけど、そこまでなのかな?

周囲がどう考えているのか、何を期待されているのか。

そういうがめちゃくちゃ気になる時期ってあるとは思います。私、体毛が濃いのですが、そういうのは中二くらいまでは死ぬほど悩んだりしました。また、駅のホームを歩いていて、どっかの女子校の生徒たちが後ろでクスクス笑っていると、「学ランにフケとかついていないかな?」「てかだれか俺の背中に張り紙とか張ってないかな」とか気になったりしました。

 

でも、この主人公は大分過剰です。その過剰感が、読んでいて結構疲れを覚えさせます。被害妄想的なレベル(詳しくはお読みください)。

 

結末で主人公は回復への光明を見出しますが、これが自分の嫁だったらどうしようかと妙な想像をし、すこしぞっとしてしまいました。

○○だったらどうしよう?××だと大変だから一応▲▲さんにも意見を聞いておかない?など、常に周囲からの見え方を気にして心配感漂う妻を相手にする。。。嫌なことがあると家出でも海外にでも行ってしまうという私ですので、到底優しく包んであげる自信がありません。

 

というより、こういう状況だと、他人の私は居てあげることしかできず、当事者が自分で立ち直る切っ掛けをつかんでもらうしかないと思うのです。その切っ掛けを得るまで傍で待っていてあげられるかどうかは、、、、やはりその人との関係性の深さ・歴史でしょうか。でも、もしうちの妻がこんなになったら、、、優しくはしてあげられないかもしれないけど、でも一生傍には居るのだろうなと思いました。

 

おわりに

巻末のあとがきで、筆者が本作を執筆するときに相当に精神を病んでいたとあり、道理でこの重たさ、と合点がいきました。

小説からいちいち教訓めいた話をするのは野暮ですが、私が思うに、本作の主人公のように息詰まったら物理的に逃避!と思いました。以前仕事のストレスきついなあと感じていた時、年に6回旅行に行くというへんてこな目標を立ててみました。結果財布も身体も疲れ果てましたが精神は寧ろ平静を保つことができたと感じています。

ただ今は、コロナ禍にあっては気安く外出もしづらいですね。主人公の百合さんには運動によるストレス解消をおすすめしたい気分になりました。

 

評価 ☆☆☆

2021/08/27

 

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