世界史で宗教改革になると必ず出てくる著作です。本棚で10年以上積読になっていることに薄々気づいていましたが、手元の日本語の本がなくなってきて(海外だとこういうのが面倒)、渋々読みだしてみた次第です。
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世界史や思想史で頻繁に言及される本書。高校時代や予備校で耳にしたことがある方も多いと思います。で、その趣旨たるや、「天が授けた過分の賜物。この賜物を用いて天職を全うし蓄財することこそ神の栄光に適う行為である。そしてこのエートスこそ、近代資本主義の一因となった。」
こんな感じだと思います。
私は、まっさらな状態から本を読みだすというより、本当に上記のようなことが書いてあるのかな、と探り探り読んでいく形のアプローチをとってみました。
その点で結論を言えば、大体書いてあった。こう言えると思います。
蓄財は禁欲と天職によってなされる!?
その中でも、本書での一番の出色は、資本主義の発展(「お金」)とプロテスタントの倫理規範(「清貧」)という、いわば逆説的な二つの概念が実は通底する、というダイナミズムだと思います。
カトリックでの修道院出家生活と世俗の生活(プラス贖宥状で罪を拭う)という二分法的分類ではなく、プロテスタント各派の世俗内倫理の徹底と「天職(Beruf)」という職業倫理との徹底という世俗一元的な在り方との違いはきっちり書かれていたと思います。つまり、プロテスタント的生活においては、神様のために慎ましい生活をする(節約する)、そして神様のために仕事頑張る(「天職」)、その結果お金溜まる、と。いわゆる在家においても清い生活を実践することで神への道を全うする。
これは神学の本? 新約・旧約どちらも読み込んでからがお勧め
この命題を明らかにすべく、詳細な宗派分析とプロテスタント文学からの例証がなされています。ルター派、カルヴァン派、メソジスト、長老派、クウェイカー等々。
このあたりの詳細はキリスト教の勉強の足りない私にはちんぷんかんぷんでした。そう、本書のダイナミズムを味わうためには神学、わけても聖書理解が必要だと思い知りました。そもそもプロテスタントの宗教改革は、誤解を恐れずに言えば聖書主義から始まったことを鑑みれば、その聖書の基本的理解がなければ本書の理解もおぼつかないと言えると思います。新訳も旧約も適当にしか読み込んでいないと本当に厳しい。
細かいところは疑問点が残りました
あと、プロテスタンティズムが蓄財と結びついていた点はわかりましたが、近代資本主義の発展とどこまで結びつくかについては通読一回だけではよくわかりませんでした。つまり事業の拡大や発展・再投資についての分析はあまりなかったかのように思いました。
本書の主張に沿えば、再投資や事業拡大も神の意志に沿うべきなのですが、プロテスタントがその再投資の方針・分量などをどのように判断したのか気になりました。
ただかすかに最終段で、米国について、世俗の禁欲的倫理が忘れ去られ職業倫理が残ったことがシニカルに描かれていました。米国的あり方は金の亡者?っていう感じに書いているように思えました。
おわりに
久しぶりにドイツ系の思想本を読みました。
実に読みにくい。そして、注釈が長い!注釈に大事なことが書いたり、批判者に批判返ししてたり笑 訳者の大塚氏は相当頑張ったのだと思います。原文は見ていませんがそう感じました。
哲学、社会学、宗教学、神学、ドイツ文化、キリスト教等々に興味がある方は何とか読めると思います。ただ、内容をよりよく理解するには聖書の通読(新約・旧約あわせて)数回しておくとよいと思いました。私も聖書を読んだらまた読んでみたいと思います。
評価 ☆☆☆☆
2021/09/25