海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

中世イタリアを堪能しました ― 『デカメロン(下)』著:ボッカチョ 訳:平川 祐弘

いやー、長かった。でも中世イタリアを堪能しました。たっぷりと。

 

タイムスリップができるのなら一週間くらい中世に飛んでみたいなあ等と思いました。作品のように結構退廃的だったのか、あるいはやっぱり宗教的価値観の軛にぎっちぎちにつながれたような社会だったのか・・・。

時は、聖書が民衆の言葉(イタリア方言)に翻訳されるより前。だからこその教会による支配が可能だった時代、きっと牧歌的な時代だったのだろうなあ。

 


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上巻・中巻に続き、本巻が最後。8-10日にわたる30話を収録しています。

話の内容は相変わらずトンデモ話やエロ話なのですが、一番強烈だったのは第9日第10話。ピエトロ親父の妻を神父さんが魔法で雌馬に変えるお話。生々しくて粗筋を書くのも躊躇するほど。興味がある方は是非読んでみてください(神父が魔法で雌馬にしっぱをつける、って書けば大体何があったか想像つくと思います笑)。

 

他方、第10日は「愛やその他のことについて、立派なことをした人の話」というテーマが掲げられます。ここではこれまでと趣向がやや異なり、理性・忠節・貞節・騎士道といった美徳・人徳が発揮されたエピソードが描かれます。

 

ですから、とりわけこの下巻を読み終えて感じたのは、人間の振れ幅の大きさ。邪悪にもなれれば気高く振舞えることこそ人間の特徴なのだなあとひとりごちた次第です。

 

かつてドイツの哲学者のマックス・シェーラーはこのような人間の可塑性を世界開放性Welt-offenheit (ドイツ語怪しいです) と表現しましたが、本デカメロンはそのような人間の特性をありありと表していると感じました。

 

おわりに

中世文学の金字塔たるデカメロンは後世への影響も大きく、『エプタメロン』(7日物語。ヴァロア朝フランソワ1世の姉が記す)や『カンタベリー物語』(英国版デカメロン)が模して著わされました。こうした作品も機会を見つけて読んでみたいと思います。

 

評価 ☆☆☆☆

2021/11/13

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