久しぶりに図書館に出向いたところ廃棄本(言っても一応25円位で売られている)の棚に本作をみて買ってみました。いやー、これは良い買い物ができました!
『下町ロケット』『半沢直樹』などドラマは見てきたのですが、小説で池井戸氏の作品を見るのはこれが初めて。結論を言うと、小説も「持っていかれる」程の面白さでした。文庫で650ページ超の分厚いものでしたが、読む手を止めることができず一日で読了。
表紙裏扉のあらすじより
中堅ゼネコン・一松組の若手、宮島平太が異動した先は、”談合課”と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。今度の地下鉄工事を取らないと、ウチが傾く――技術力を武器に真正面から入札に挑もうとする平太らの前に「談合」の壁が。組織に準じるか、正義を信じるか。吉川英治文学新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ!
主人公平太に感情移入!
本作、大分持っていかれました。きっと池井戸氏は現実のリーマンあるあるを上手に掬い取り、それをフィクションとして小説に織り込む技に長けているのだと思います。
平太が当初、え?談合ってダメじゃん?って思いつつも、会社の論理に染まりつつあるところ。談合のドン三橋すら談合は良くないと思っているところ(個人の価値観と会社・社会の価値観とのずれ)。一見ダサめな先輩が実はデキメンだったり、社長(上司)がボンクラ過ぎていつも方針が迷走する等々。銀行員が口ばかりで真剣に取り合わないとか。あと、二日酔いでの出社笑。今はもうないのですが、私も若い時は二日酔いで顔が赤いまま出社とか、深酒して寝坊とか、まあ結構やっていました(若気の至りです)。
このほか、恋愛的要素(銀行員園田が憎たらしい!)、平太の母親と三橋との関係、母親の病気など起伏があり、読中まったく飽きる事がありませんでした。
おわりに
これはもう絶品エンターテインメントでした。
いわゆる純文学系の作品と比べると言葉や表現の美しさはそこまで感じられませんが(サラリーマンの闘いを描いていますからそりゃそうだ)、でもドラマ・ツイストが、読者を即座に没頭させる「危険」な作品であったと思います。アツい話が好きな人はきっと好きになる作品だと思います。おすすめ。
評価 ☆☆☆☆
2022/01/29