海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

収録話数が多いなあ | 『完訳カンタベリー物語(中)』著:チョーサー、訳:桝井迪夫

上巻を読んでから少し間があきました。某ブログで「中英語で書かれた初の文学作品であり、中英語で書かれたという以外、内容には特に重要性はない」等のコメントを見たら、鵜呑みにしないまでも何となくそうなのかなー、と思ううちに次第に歩みが遅くなってしまいました。


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上巻に続き中巻ではバース女房の話、托鉢僧の話、召喚吏の話、学僧の話、貿易商人の話、近習の物語、郷士の物語、医者の物語、免罪符売りの話、船長の話、尼僧院長の物語、トパス卿の話、メリベウスの物語の計13話を収録。

個々の話の印象は薄くなる

デカメロンもそうでしたが、収録される話が多いと、個々の印象はどうしても薄れます。

妙な譬えですが、私、結構韓国ドラマが好きで、ネトフリで1.5倍速で『チンチャすごい』『チンチャあり得ない』等と嫁と騒ぎながら視聴するのが最近の趣味です。で、数か月後どうなるかというと、面白かった、イマイチだったという印象が残るくらいでストーリーも大体忘れる。時間をかければ思い出すけど、タイトル見ただけだと思い出せないものも多数。因みに昔はGoogle Chromeの設定で3倍くらいで見ていたが今は何ゆえかブラウザのプラグインで操作できなくなってしまった。

…何が言いたいかというと、カンタベリー物語も中巻読了後内容をいまち覚えていられないという話。

そういう時どうなるかというと最後に読んだものが一番印象が強くなります。中巻の最後はメリベウスの物語。でも、確かにこれは印象的な話でした。

 

最もインパクト強い話は、奥様にめっちゃ素直なご主人の話

メリベウスの物語。内容は、ある貴族の領主の家に強盗が入り、妻がケガを負い、娘が瀕死の大怪我をする中、この領主が復讐をといきり立つ中、傷つけられた妻が夫を諫めるという話です。この夫婦漫才的なやり取りが70ページもの長きにわたって繰り返されるという笑

傷つけられたにもかかわらず強盗と和解をするべしという奥様なのですが、当時の身分制故か、表立った反論をせず、先ずはご主人の言うことをきちんと受け止めます。ただ、そのあとじわじわ反論するので、鳥瞰すれば「Yes, but」「Yes, but」が続き、ご主人は逃げ道がなくなる?というか、奥さんの言う通りにしない訳にいかない形に追い込まれます。妙にいたたまれなくなります。

他方ご主人も、加害者に対し娘が受けたのと同じ程度の害を加えたいといきり立つ中、奥さんから散々反論・駄目だしされ、挙句の果てに「君の忠告に従う心づもりはできている」、って聞くんかい!って突っ込んでしまうくらいな従順さ。その素直さが広まれば世界中の夫婦喧嘩は絶滅しますよ。私にも分けてほしい…。

まあでも、確かに奥様の意見はご尤もで、「人を裁くのは神と裁判官(法)のみ」なんて語っているのを見るとマグナ・カルタキリスト教の伝統のベースを強く感じます。

 

おわりに

その他、結婚5回し性生活を謳歌したというバース女房の話などは、ルネサンスの影響を見て取れる内容でした。そうした中世文化史に興味の有る方にはおすすめできる作品かと思います。

 

評価 ☆☆☆☆

2022/04/17

 

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