以前読ませて頂いていたブロガーさん(id:AgentScully)が全米図書協会(American Library Association)の”禁書リクエストランキング(Most Challenged Books)” を纏めており、そこに掲載されており、読んでみたいと思った次第です。残念ながらこの方のサイトに今はうまくリンクできないのですが、新たな世界を教えて頂き非常に感謝しております。仕方なく、自ら全米図書協会のページを調べると、本書は2021年の禁書リクエストでベスト8位だそうです。
本との出会い
ALA(American Library Association)がまとめる禁書リクエストランキングの話を娘としていました。以前本作の事を娘が喋っていたことがある気がして聞いてみると、「私持っているよ?」とのこと。感想を聞いたら「2日で挫折した」そう。キコクの娘が挫折する本?そんなに詰まらんとは。ただ娘とは趣味も違うし、読んでみな分からん、と勇んで読みはじめましたが、確かに苦行でした。
ああ、難解!
物語の筋は、貧しい黒人家庭で育つ女の子(Pecola)が実の父親にレイプされる、というものです。
その父親・母親の出会いの話やそれぞれの過去だったり、その女の子を一時預かることになった家庭の子供たち(クラウディアとフリーダ)からの視点だったり、Pecola自身の視点であったり、彼女に「青い目を授けた」と神に告白するSoaphead氏の視点であったり、とにかく話が飛ぶ。
この縦横無尽な構成が難しさの一つだとは思いますが、それにもまして単語や表現が非常に難解。その難解さに純文学の香りを強く感じましたが、英語ネイティブではない人には特に難しかろうと思いました。
で筆者の事を調べてみると、英文学の修士を取得しており、果てはピュリッツァー賞やノーベル賞も獲得したというから、表現の流麗さに関してはお墨付きでありましょう。
結局何が言いたいのだろう
で、残念ながら、私はこの本の趣旨がいまいち理解できませんでした。黒人の境遇を描くものであるのは明白ですが、近親レイプというモチーフが作品のクライマックスにあるように思える一方、タイトルにある「The Bluest Eye」、これがどうも結びつかない。タイトルは、白人への一種の憧憬と受け取れると思いますが、作中で白人は殆ど出てきません。白人?といえばPolandと呼ばれる移民と思しき売春婦と、せいぜい近くて?白黒ハーフの女の子だけ。
あるいはこうした混沌こそが、筆者の描きたかった1960年代の黒人社会なのかもしれません。有色人種が隔離され、黒人は常に貧しく、そして娘はしばしば恵まれない境遇の犠牲になる。そしてそんな世界の隙間から垣間見える白人社会だけが煌びやかに見える。そう考えるならば、作品の筆致は黒人社会の閉塞感や陰鬱さを鮮明に描いていると言えると思います。
おわりに
Wikipediaで調べてみると、筆者トニ・モリスンに関する入門書や解説書が沢山あるようでした。私のように素手で味わうのも良いのかもしれませんが、補助本で地ならしをしてから本書を読めばより理解ができたのかなあと感じております。
米国社会や黒人文化などに興味がある方は是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
評価 ☆☆☆
2022/04/24
禁書リクエストランキング掲載本はこれまで2冊読みました。どちらも面白かった。