海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

読んでるだけで脳内テレビドラマ|『禁断の魔術』東野圭吾

GW真っ只中ですね。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私は日本には居りませんが、居住国がイスラム教国で今年はたまたまこの時期に断食明けの祝日となり、くしくも4/30から5連休。

リモートワークが常態化し、休みなのに結局毎日PCを開けてカチャカチャやっていますが、その合間に息抜きを楽しみました。

 


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結論を端的に言えば、普通に面白い!(上からに聞こえたらごめんなさい)

 

あらすじ

将来を嘱望されるほどの優秀な高校生。ガリレオ先生こと湯川の高校の後輩であったが、折角受かった帝都大学を入学直後に退学、近くの町工場で働いていることが判明する。ところが、とあるフリーライターの殺人事件の嫌疑の末に彼は行方不明に。背後にうごめくのはその後輩の姉の不審死と、大物政治家の企み。一体事の真相は。

 

容疑者Xの献身』+『マスカレード・ホテル』?

率直に申し上げますと、過去読んだ東野作品への既視感を感じました。別に非難しているわけではなく、単純に、お、こことここは過去のあれに、似てるな、と。

1点目。湯川の知り合いが容疑者となっており、容疑者に肩入れをしているという状況。本作では、高校の後輩でかつ物理好きな男の子(筋がよくしかも姉弟の二人世帯での苦学生)がそれに当たります。重なったのは『容疑者Xの献身』で、殺人を犯した大学時代の友人の石神(天才数学者も、一般社会ではやや不遇をかこう)が本作の後輩くんを庇うシーンに重なりました。

2点目。ホテルでの不審者の殺人の場面。本作はホテルのフロントがお客様を見て、ん?おかしい?と気づくところからストーリーが始まります。もうその瞬間「あれ?これマスカレード・ホテルじゃないよね?」と裏表紙のあらすじを二度見。『マスカレード・ホテル』もホテルスタッフから見た物語ですから、ちょっと既視感を感じた次第です。

 

科学技術を使い生命を脅かしてはならない

あと、個人的にいいなと思ったのは、湯川をして科学者倫理について語らせているところ。容疑者たる後輩に迫り、彼の亡父の言葉を引いて、こう語りかけます。

「地雷は核兵器と並んで、科学者が作った最低最悪の代物である。いかなることがあっても、科学技術によって人を傷つけたり、生命を脅かしたりすることは許されない。私は科学を志すものとして、過去の過ちを正したい。--これを聞いて、どう思う?」(P.290)

 

科学史家の村上陽一郎さんが似たことを発言したのを書籍で見たことがありますが、私も同じ意見であります。まあ簡単なことではないのでしょうが。

 

おわりに

今更ながらですが、実に、東野さんの描写は読んでいて映像的に読めると感じました。最近同じことばかり言っている気がしますが、これまた火曜サスペンス的にきっちり綺麗に終わる展開が脳内映像的に楽しめる作品でした。

 

私、映像を愉しむ際も近頃倍速再生が多かったのですが、このまえ久しぶりに1倍で見たらやっぱり「間」とか科白の妙味とか、伝わるものがあるんです。逆に言えば倍速で見ると切り捨てられてしまうものがあると考えます。読書もそうなのかなと。忙しい日々で速読とかもいいのかもしれませんが、自然にページを手繰るペースでしか楽しめない何かがあるのではないかなと(半分は遅読家のひがみです)。そんなことを考えつつ楽しんだ連休さなかの読書でした。

 

評価 ☆☆☆

2022/05/01

 

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