海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

自己省察+自己決定のPDCA。社会人でも役立つ。| 『勉強大全』著:伊沢拓司

 

一括りにするのは申し訳ないのですが、さすが開成-東大だな、と思える本。徹底した自己省察と自己決定のPDCAは社会人でもなかなかできないもの。逆に言えば並みの高校生はここまで自己省察ができるかなあと思いました(できたらできたで、完成しすぎててちょっとイヤかもしれないけど笑)。少なくてもうちの愚息は無理。でも、子供に読ませてみます。

 


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移り行く社会の中で、人生を引き受ける、ということは存外に難しい。言い方を変れば、覚悟を持つ、ということですが。何となく高校生になって、何となく大学生になって、そして何となく就活をして社会人になり、(人によっては何となく)結婚して家庭も作り、老いていく。もちろん才能のある方や、引き受ける・コミットした方は強い。相応の結果を残します。そうでなくても何となく生きて何となく上手くいくこともあります。

 

まずは「引き受ける」ところから

その中にあって、伊沢氏の本作。徹底的に「受験生」という生き方を引き受ける態度が清々しい。受験生として受験に臨む前に、本当に受験に意味があるのか、大学を目指す意味があるのか、その部分をキチンと深堀りしている。要は「腹落ち」するという地盤固めがあってこそスタートが切れる、というものです。経験の少ない高校生には難しいことかもしれませんが、自分に必要なこととして「腹落ち」して受験を引き受けることはとても大切だと思います。

 

自分はどういう人間か?

さらに筆者が開陳する勉強法は実に自己省察です。端的に言えば「万全・万人共通の勉強法はない」よって「自分にフィットした勉強法を作れ」というもの。言葉尻は素っ気ないのですが、作品では論に沿って主張されており、非常に説得力があります。

考えてみればごく当たり前ですが、人はそれぞれ違います。ではあなたはどんな人間ですか、と問われれば意外と漠とした印象しか自分でも持っていない。受験勉強に当たっては、何が苦手で何が得意で、どういう勉強スタイルが好きで、どういう覚え方がフィットしているのかなど、自分で自分を理解していくことが大切になります。また、性格は変えづらく環境は変えやすい(あくまで比較論ですが)との考えから、自分の性格にフィットした環境の整え方を提案しています。そして、一定期間でスタイル(勉強法)の確認をしていく。同時に模試などを利用して合格までの所要水準がどこまで満たされたかをトラックする。

感心しますが、見えない合格水準に対し一定の前提から自分なりの見解を持ち、それに向けて計画を進捗させる。こうした自己マネジメント・プロセスマネジメントは社会人でも大いに学ぶところ大です。

 

こう書くと、非常にぼんやりしたことしか書いていないように見えますが、実際には彼自身の個人的体験談がふんだんにちりばめられています。開成高校では学年400人中280番くらい、高3になってもぐずぐずしており受験勉強に切り出せない、ゲーム好きでゲーセンを見るとついつい寄ってしまう等々。それに対し筆者が自己を見つめそして考え、その結果選択した勉強法・類するオルタナティブ等が色々と語られます。このような著者のエピソードの中に、読者は自分の似姿を見出すことができるのではないでしょうか。

 

おわりに

といことで、非常に面白い本でした。本書の内容を別の言葉で言えば「彼を知り己を知れば百戦危うからず」、孫子ですね。本書でも引用されていましたが。

受験生の親として、同じ東大王の鈴木光さんの『夢を叶えるための勉強法』も読みましたが、彼女の本は非常に面白いながら、優秀過ぎて真似は無理かも、と思わせるものがありました。それと比べると本作は、徹底的に「あなたはどういう人間なの」「どうしたいの」と自己を問うものに感じ、私には響きました(私に響いても仕方ないんですが)。これはこれで高校生には難しい問いですが、逆に人生のどのシーンでも常に自身に問える内容であり、アラフィフのおっさんでも面白く読めました。

高校生ならずとも、大学生、社会人、特定の目標に向かってしっかりトラックを刻んで成果を出したい人にはお勧め。

 

評価     ☆☆☆☆

2022/05/17

 

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