海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

論語を現代語で解説付で! | 『現代訳論語』訳:下村胡人

先日アマゾンの日替わりセールで渋沢栄一の『論語と算盤』を購入しました。併せてレビューなんかを読んでいると、「事前に論語は読んどいたほうが良い」との言葉を発見。で、かつてKindleにダウンロードした本作品を思い出し繙いてみた次第です。

 


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ひとこと

まず何より、非常に読みやすかったです。

多くの青空文庫収録作品が文語調であったり、旧漢字であったりして昭和というより戦前の雰囲気漂うものが多い中、本作は旧漢字も少なく、口語調で普通に読むことができました。

 

概要

論語ですが、通して読んでみた感想は、雑多な格言集・アフォリズム、といった感じです。一方向へ論が展開されるわけではないのでその点はやや読みづらいと感じました。

ただ、孔子には多くの個性豊かな弟子がいたようで、至らない弟子をたしなめたり、皮肉ったり、時に矛盾に見えるようなことを投げかけたりしていたりして、寺小屋的情景がほのぼのとした雰囲気で描かれていると感じられます。

こうして考えると、プラトンの対話編とかはまさにバトル・ディベートという感じで、非常に対照的でありました。彼我の差を感じますね。

なお弟子とのやりとり・格言の要所要所で「次郎物語」の筆者たる下村氏によるコメントがあり、これがまた参考になるものです。

 

内容は政治、心構え、倫理等々

さてもう少し内容に踏み込むと、全般的には、政治に参加するにあたっては誠実であれ、清廉であれ、さらには日常的にそうした態度をとり泰然自若とするべき、といった風の内容(ぼんやりですみません)です。

日本人からすると確かに馴染みのある小言というか格言で、親なのか先生なのかわかりませんが成長の過程で環境から求められてきたファクターが述べられていたように感じました。

いみじくも新渡戸稲造が『武士道』で、日本人の道徳心の源泉を儒学に求めましたが、実際論語を読んでみるととても自然に腹落ちする格言が多かったと感じました。

 

そんな中で私に個人的に響いた言葉は以下の通りです。

「用いられれば、その地位において堂々と道を行うし、用いられなければ、天命に安んじ、引いて静かに一人道を楽しむ」(10(157))

孔子先生、出世できずに50近いのですが、まだ承認欲求が消えません泣

 

「貧乏でも恨みがましくならないということは、めったな人にできることではない。それに比べると、富んでおごらないということはたやすいことだ」(11(343))

孔子先生、富むことすらなく、恨みがましいアラフィフから脱せません泣

 

・・・これ以外にも膝を打つ名言が多くありました。

 

おわりに

内容理解には現代訳は重宝します。その意味では本作、実に役に立ちました。無料ということもあり、論語の入門には非常に適していると感じました。

一方、格調高く文語で音読もしてみたいなあなんて感じました。あと、青空文庫だから仕方ないかもしれませんが、儒学をより深く理解するためのに参考文献があればうれしかったです(ないものねだりですね笑)

いずれにせよ、実にコスパの良い作品でした(コストかかってないし)。儒教や中国文化に興味がある方、教科書の漢文はわけからんが内容だけ理解しておきたい、という方にお勧めです。

 

評価     ☆☆☆

2022/07/13

 

 

 

「武士道」ですが、儒学を一通り舐めたらもっと味わい深く読めるかもしれません。

lifewithbooks.hateblo.jp

 

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