海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

理屈っぽい大人が読むと失敗するYA本?|『お父さんはユーチューバー』田口倫太郎

この度、無事日本に一時帰国を果たしました。2年半ぶりに両親と息子(日本の高校に通っている)と会い感慨に耽るも、あまりの暑さに思考も鈍っています。もともと鋭くもないけど。そしていつの間にかなくてはならないエアコンとの生活。これに今一番驚いています。熱帯気候の国に住んでいるものの冷房のない生活をしていたので、ちょっと複雑な気分ですね。。。

 


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9年間の義務教育のうち、小1の1学期以降8年ぶりの日本語での教育を受けている中3の娘。天然のルー大柴よろしく、日本語がわからないと英語の単語を混ぜてしゃべることが多かったのですが、学校に馴染むにつれて日本語がスムーズになってきました。

そんな娘にこの数年間、日本語本強制読書を続けてきましたが、先日の『52ヘルツのクジラたち』に続き、またもや「これよんでみたい」の本リクエスト。努力の甲斐があったかと、普段は中古本購入も早速新品本をお取り寄せ。それが今回の本です。

 

ひとこと感想と概要

娘より先に読んでみましたが、一言感想は、うーん、YA向けのYA小説、でした。

お話のあらすじは、宮古島の民宿の子である海香からの視点で描かれる、父親勇吾の破天荒物語、といった感じです。題名の通り、単純な勇吾がお金稼ぎ目的でユーチューバーになり半ば成功するのですが、色々と周囲に迷惑をかけるというものです。子供みたいな大人の勇吾と、小学5年にして老成した感のある海香のコントラストが印象的です。

ダイレクトなネタバレは避けますが、勇吾の破天荒な行動には実は理由があって、むしろ彼の心根の良さ、優しさが後段になるにつれ明らかになり、最後は感動的なフィナーレ、というものです。

 

語り合うテーマは多く内在している

当の娘より先に読んでしまいましたが、娘がこの本を読んでどういう感想を持つかが楽しみです。そしてあわよくば、小説の題材について親子で話ができれば、書籍の価値は高いと思います。

本作では、父子家庭、家出、知人への迷惑、友人の死、友としての責任、父としての責任、母としての責任、自分の夢、挫折など、議論のネタになるようなテーマがいくつも発見できました。

 

理屈っぽい大人には絶対的に不向き

他方、親目線で見るとどうにも父親の行動に対して批判的な視線を投げかけてしまいます。

破天荒すぎるこの父親の行為(突然ユーチューバーになる、毎日が酒盛り、金がないのにしょっちゅう宮古島から東京に行く)は、諸々事情があるにせよ、一体全体どうよ?、と批判したくなってしまいました(つまらない大人で申し訳ないですが)。そもそも主人公の海香はよくわかる子なので、事情を話すなりコニュニケーションをもう少しとったほうがいいのでは、と他人事ながら思ってしまいました(ほんと他人の家庭に対して余計なお世話ですが)。

 

あと、ヤングアダルト向けの本に対し、人生の半分を過ぎたおっさんが文句言う資格もないのですが、やはりいささか流れが安易に過ぎる気がしてしまいました。

 

おわりに

さて、改めて繰り返しますが、分別くさい大人のコメントは中高生には何の関係もないことです。子供たちが文字に触れ、何かを感じ、そしてそれがきっかけで会話や議論が起これば、その本は存在意義を十分に果たしたと言えます。

その点、うちの娘に本を読みたいと言わしめた時点で沢山褒めないといけないんですけどね笑

 

中高生、旅行好き、海好きにはおすすめできると思います。

そうそう。書いていてふと、30年ほど前に泊まった西表島石垣島ユースホステルの事を思い出しました。長期滞在している客が、宿のオバアに代わって予約の電話を取っていた風景。その点、この本は他人との距離・壁が緩やかな南国の雰囲気がばっちり描けている作品ですね。

 

評価   ☆☆☆

2022/08/02

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