海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

おすすめ!孤独と向き合いつつ、自分の道を歩むための本 | 『ミライの武器』 吉藤オリィ

先週、子供の学校見学に幾つか行ってきました。最近は高校でも模擬授業をしてくれる所があったりして、近年の学校の変化がよく分かり勉強になります。他方、高校も大学もオープンキャンパスの類はすぐに満席になり、コロナの蔓延と相まってキャパシティを制限することが多く、結果見学の機会を逃すことも多々あります。そういうとワクチンの効果ってどこまであったんですかねえ。。。

 


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近年、いわゆるおひとり様向けのサービスが充実してきたように思います。先日も、とある商店街をブラついていて、窓ガラスに「一人焼肉歓迎」とある焼肉屋さんを発見。店内はパーティションで区切られた様子でした。

 

思えば、嫌煙者であったり、LGBTQであったり、これまで少数派・マイノリティであった人たちの居場所や権利が次第に認められてきていると感じます。これは実に喜ばしいことだと思います。人はそれぞれ違いますし、その違いを理解し、受け入れるということは(実はとても難しいことですが)大事なことだと感じます。

 

社会でのつながりは重要

しかし、個々人のスタイルや信条を受け止める・受け入れることと、人との連携を断つということは全く異なります。社会という複数の人間が構成する組織で生きる上で、紐帯は欠かせません。そのことを元引きこもりの筆者がこう語っています。

 

人をはげますことができるのは、やっぱり人しかいないんじゃないか。私たちを励ましてくれるのは、「ここは居心地がいい」と思えるグループや、「あの人たちのようになりたい」「この人のためだったら損してもいい」と思える“人間”なんじゃないか。(P.99)

 

本作では、このほかにも元ひきこもりならでは(?)の人付き合いにおける居心地の悪さ、所謂常識の息苦しさや、こうしたものへの対処方法などが豊富に語られます。

 

今さらですが概要

改めて紹介しますと、本作は、小中の引きこもりの末に、高校、高専(その後中退)をへてロボット開発者となった筆者の、いわば半生録です。

上記の人とのつながりはほんの一章ですが、それ以外にも心を震わせるエピソードが多かったです。特に、ロボット開発者としての筆者の周りにサポートしてくれる仲間とのエピソードは読者を引き込みます。その仲間の多くがALS患者であり、筆者より先に旅立っていくのです。友人・スタッフ・師匠であるALS患者たちを見送りつつ、彼らとのやり取りから得た知見をロボット開発に生かしてきた本作の逸話から、筆者がどれほど多く人からのサポート、コミット、そして人生の有限について考えたか、想像に難くありません。そうした体験に基づく筆者のアプローチは、「トライ&エラー」、「あきらめない(探し続ける)」、「終わりを考える」辺りになるかと思います。詳細はぜひ読んでみてほしいと思います。

 

おわりに

本作、進路・進学について煮え切らない高校生の息子のために購入してみましたが、むしろ私が手元に置いておきたい本となりました。

 

しかし筆者の両親には頭が下がる思いです。公務員の家系(しかも教師)である手前、引きこもりの息子といったら体面等気にしそうなものだが(実際には気になるのだろうが)、自分の子供が当たり前のことができないことを受け入れ、それでも数多くの習い事をやらせてみて、最終的にロボット開発という可能性を引き出しました(詳細はLesson21 なんでも触れてみて「自分」を知ろう)。その後も奇抜さは抜けきらないようですが、ここまで立派に育てばもう素晴らしいものです。

子供にグチグチいっている自分が少し恥ずかしくなりました。その前に親として試してみることがまだまだ多く残っていると感じた次第です。また、私自身諦めてはいけないし、諦めなれないと思った次第です(出世というか自己実現的な話です)。

 

人生そんなもんだよ、とか、人生は辛くて当然、と思っている方には一度読んでみてもらいたいと思いました。生き方について異なる見方ができるようになるのではないかと感じる、アツくなれる本だと思いました。私も心が少ししょげたら再読したいと思います。

 

評価     ☆☆☆☆☆

2022/08/06

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