海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

青春小説かと思いきや東野氏の自伝!?|『あの頃ぼくらはアホでした』東野圭吾

引き続き長男の本コーナーから東野シリーズを発見。相変わらず彼の感想は、「だるい。無理」とのこと。お前さぁー、もっと伝わる表現をしてくれよ、と言おうと思ったものの、自分の高校時代といえば、親に対しては、忘れた・知らない・どっちでもいい・別に、の4単語しか使っていなかったことは息子には言えません。よっぽど今の息子の方が態度的にはマシに見えます。「おお、そうか。じゃあちょっと俺も確認してみるわ」と動揺を隠しつつ本作を読み進めてみた次第です。


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自伝です、これ

高校生の長男の本棚にあった本作、どうやら本人は読了まで持たず挫折したそうです。だるい、だるいと訴えます。要は面白くないと。

だるいじゃ分かんねえだよ、と思いつつ、親の私も読んでみました。・・・うん?、確かにいまいち面白くない。ふと裏表紙に目をやると「傑作青春記」と書いてあり気づきました。これは、実は自伝であろう。ここに誤解?のおおもとがあると思います。

 

思い返すと、中学高校の学園系ストーリーとしてはちょっとテンポが悪かったり、時系列の話が前後する場面がありました。内容は大阪のオッサンとの化かしあいとか、高校での女子更衣室のノゾきの話とか、小説ならば有り得る話ですし、へえー、なかなか面白いじゃん、やっぱ関西が舞台だと会話のノリがいいねえ、と読み進めていたんです。でも高校時代の途中で急に小学校の給食の話に戻ったりして、どうも流れがおかしい。で、主人公の受験校がF大学(大阪立大学)と出るに至り、ああ、これ自伝だわ、と気づいた次第。

また、やたらにイニシャル表記が多く、小説なのに名前イニシャルにする意味ってあるか?と仄かに心の中で突っ込んでいましたが、ここにきて合点がいきました。

 

素晴らしき哉、青春は

自伝となると、とらえ方が全く異なります。

デート代を捻出するために磁気定期券を偽造するとか、映画製作に没頭するとか、むしろすげえなと。金がない中で駆け抜けた青春記はむしろビビッドに思えてきます。だってこれ、事実ですから笑 

なお受験に関しては、牧歌的でおおらかな「時代」も感じました。もちろん筆者も必死ではあったと思いますが、相当な適当さ!?で大学受験も大学も切り抜けられたようにも見えます(ごめんなさい)。こんなものを息子に再読させたら時代錯誤的に「適当にやったって、どうにかなるかもしんないじゃん」と謎のポジティブ・シンキングを発揮されそうです笑。なお、どのように切り抜けたのかはぜひ直接読んでみてご確認ください。

 

おわりに

ということで、ミステリーの名手たる東野氏の自伝でありました。ノスタルジックな青春系読み物という観点では「霞町物語」、また大阪が舞台という観点では「戸村飯店 青春100連発」と似ているかなあと思いました。

時代的にはちょっと前の作品ですが、関西・大阪のユーモラスで軽妙かつ壮絶?な状況が手に取るようにわかる作品だと思います。

 

評価   ☆☆☆

2022/08/26

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