海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

オルタナティブ進路で世間を生き抜く?でも決めるのは難しい | 『13歳の進路』村上龍


f:id:gokutubushi55:20221115045119j:image
13歳のハローワーク』という本とセットで買いました。“ハローワーク”は世の中にどんな仕事があるのかを紹介するいわば職業図鑑。職業が教科別に配置されており、教科についての興味から職業を引くという謂わば職業事典とでもいった風采でした。

 

こんな進路もあるという気づき

一方、本作『13歳の進路』は一般的ではないかもしれないけど役に立つ道筋、の紹介とでも言ったものといえるかと思います。

前提にあるのは、多くの子供たちが一般的的な中学卒業後、普通科の高校へ進学、そして大学へ進み、就活を経て就職というものです。ただしこのマジョリティたちは、一部のトップティアのタレント以外は差別化が難しく、レッドオーシャンでの厳しい戦いを強いられるという見込みがありそうです。故に、世の中がかつてなく厳しい状況(非正規ばかりであったり、私のように全く出世しないとか泣)であることを認識し、(風見鶏のごとく)時流の有利不利を選ぶのではなく、自分にあう「生き延びる」方法を模索してほしいということのようです。

もっと簡単に言うと、一般的でなくてもしっかり生きていけるし生きていってほしい、ゆえにこれを参考にでもして、と言っているように感じました。

そういうわけでか、高校、高専フリースクール、大検、大学、職業能力開発校奨学金自衛隊等々の説明が縷々され、その活動内容や得られる資格等がまとめられております。高校の紹介もありますが、普通科はほんのわずかで、農業科、水産科、商業科、工業科、福祉科、看護科とか所謂実学の紹介に力が入っている印象です。

職業能力開発校、私は全然知らなかったです。公立高校と同等以下の学費で自動車整備やエンジニアリング等が学べるらしい。こういう進路は確かにもっと知られてもよいと思います。

 

営業という職業についてフィーチャー

それから、営業・販売がどういう仕事か、というエッセイ集が巻末にまとまっていました。なかなか面白い。全16社のトップが自社や自分の営業について語っています。営業・販売というのは営利活動で必要不可欠の機能ですし、多くの人が望む望まない?にもかかわらずつく可能性が高い職種です。きっとこの特集は、若者が世を「生き抜く」ための村上氏一流の老婆心の発露であるととらえました。

印象的なのはティア(葬儀屋)の富安氏のパート。営業・販売でもっとも大事なことは「その扱っている商品(サービス)にほれ込むことです。」 まあ確かにそうだよなあ。ただ、現実にほれ込むほどの商品やサービスに出会うことは稀であったり、人事や経理などの本部業務を希望したら、営業配属・ガーン、みたいなこともあるので難しいところだなあ、と感じました。喧嘩を売りたいわけではないのですが、正論過ぎて参考にならないかもしれない泣。

 

新版では、可塑的なキャリア展望の記述を希望!

でも、読んでいてじわじわ感じてくるのは、やっぱり中高生はそんなに進路を簡単に決められないし、親としても決めさせ難いなあ、という思いです。

私もキャリアについては真摯に何十年も悩んできました。今もよく分かりません。ましてや子供という他人を前に、その将来を固定的に追い込んでしまうとしたら恐怖感しか感じません。

むしろですよ、キャリアの入り口だけでなく、その展開や(今はやりの)リスキリングなどについてもモデルケースを展示した方が、若者の将来展望の一助になるのでは、と感じました。いくつかのモデルケースを示すことで、読者は着せ替え人形のようにキャリアの組み立てみたいなものを頭でシミュレーションできるかもしれないと思いました。

かくいう私も哲学科→証券システムSE→証券会社営業→海外で銀行勤務、と微妙なキャリアですが何とか生きてきました。歩みの過程で得たシステム開発スキル(コーディング)や金融会計知識は今でも役に立っています。ま、キャリア双六的には成功しませんでしたが、楽しい人生は送れています。

 

 

おわりに

ということで、謂わば進路に関するオルタナティブの紹介とでも言った作品でした。

本来は、中高生の子どもたちに自分たちにの進路についてより具体性を持たせようという思いで購入したのですが、読んでいるうちそういう気持ちはなえてきました。

あと、オルタナティブ進路という観点から言えば、海外青年協力隊、ワーキングホリデーなどが取り上げられてもよかったように思います。

 

悩める中高生やその親は、得るものがあると思います。読んで余計にわからなくなる場合もあるかもしれませんが笑

 

評価     ☆☆☆

2022/11/09

海外オヤジの読書ノート - にほんブログ村
PVアクセスランキング にほんブログ村