海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

真剣なアホが素敵すぎる|『時をかけるゆとり』朝井リョウ

アホが真剣過ぎて素敵

青春

・・・この言葉を、すべての人が納得いくように形容したり換言してみることは、きっと難しいことでしょう。それはもちろん、その若き時代に経験した思い出深い事象が各人によって異なるからです。恋散った甘酸っぱい青春もあれば、部活に打ち込んだ汗くさい青春もあるでしょう。

でも局所的に首肯してもらえるような青春、膝を打つようなあるある。そんなのもあると思うんです。その筆頭に私は、真剣にアホをやる青春、を挙げたいと思います。

そしてこの言葉こそ、読後にまず思い浮かんだ言葉でした。こいつらはすげえ。真剣にアホをやっている。

懐かしくも憎めない、ある種可愛いさすら感じるエッセイ体験でありました。


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つまるところ本編は、早稲田大学在学中に作家デビューを果たし男性としては最年少で直木賞でを受賞した朝井リョウ氏のエッセイであります。

 

内容は帯を見ると一目瞭然

さて、そのエッセイの内容たるや、表紙を見て、その帯の文句からしてすごい。

圧倒的に無意味な読書体験

 

初エッセイ集『学生時代にやらなくてもいい20のこと』+新作3本の完全版!

 

本というのは、そもそも何か伝えたいもの・ことが文字化されたものだと思います。伝えたい事象ってのはすくなくとも語り手にとっては幾許かの重要性があるはずなんですよね。それを「無意味」とハナから否定。しかもその否定に「圧倒的に」という形容動詞が付きます。無意味にも度合いがあるんですね。。。すんごく意味ないよ、という自己否定笑

まあでも、当初の題名「やらなくてもいい・・・」というタイトルからくみ取るに、後進たちがしなくてもよい苦労を避けるための老婆心的随筆、と言ってもよいのかもしれませんね。

 

愛すべき愚行!?の数々

ということで、朝井氏の赤裸々なアホ体験がこれでもかと披瀝されます。ハロー効果ではないのですが、若くして賞も取り、素晴らしい大学も出てるとなるときっとしっかりしている人、という印象があったんです(知り合いでもないけど)。

でも、このエッセイを見ると大分しっかりしていないですよね笑 まず、肛門がしっかりしていない。こういう下ネタで笑いを持っていくのは一部の方は反則とみなすらしいですが、私には素直に面白い。下ネタ好きだから笑

そんな中では、私としては、ノリで北海道旅行を企画し、詰めの甘さから結局行けないという「旅行を失敗する(その2)」と、これまたノリで自転車で東京から京都まで行ってみようとして、やってみたら大変つらかったという「地獄の500キロバイク」がお気に入りです。ちなみに船で御蔵島に行こうと思ったら高波で接岸できず往復して帰ってくる、そして気持ちを鎮められずその足で伊豆大島へ向かう「旅行を失敗する(その1)」も好き。

 

おわりに

ということで、一部の男子が激しく同意できるようなアホが沢山詰まったエッセイでした(女子受けはわかりませんが)。自分の来し方を思い出し懐かしむとともに、ああ、アホって素敵だな、大事だなと改めて感じました。

高校生の息子にも今度読ませてみて感想でも聞いてみたいと思います。計画とか勉強とか大事だって日頃はぎゃんぎゃん言ってしまいますが、遊び、ゆとり、こういうものも同じくらい大事だなあと改めて感じました。遊び・ゆとりだけでは困るけど。

きっと「ゆとり」ってタイトルも、筆者の皮肉なのかなと類推します。ゆとりゆとりって、全てがゆとりで構成されているわけねえだろって。だから世間の歪んだ見方に合わせて、あえてのアホ話のオンパレード。直木賞?ああ一応頂きました、ゆとり世代ですけどねえ、どうして貰えたんでしょうねえ(心:努力だってしてんだよ、運なわけねえだろ)、みたいな。違っていたらごめんなさい。

評価   ☆☆☆

2022/11/13

 

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