気軽に手に取る本としては、ついつい選んでしまう恩田陸さんの本。『夜のピクニック』以降、どうもあの絶妙な青春描写が個人的にはまった模様であります。
今回は前回帰国した際にブックオフで仕入れておいた本作を新年一作目として読んでみた次第です。
あらすじ
離婚によって離れ離れになった家族四人が年一回の行事としている再会を中米G国で過ごす予定も、最中にクーデターが発生、子供たちはヘリコプターからジャングルに突き落とされる。果たして兄妹は生きてジャングルを抜けることができるのか。
『夜のピクニック』的要素を見出してしまう?
自ら認識してはいますが、私のお気に入りの『夜のピクニック』を本作でも見出してしまいます。
主人公である錬(れん)と千華子(ちかこ)は、家族四人でヘリ移動中、クーデター発生によりジャングルへ機中から突き落とされてしまいます。幸い命を取り留めたものの、鬱蒼と茂るジャングルに散らばる大小のトラブルを共に解決してゆくなかで育まれるのは、どうも信頼感だけではないような気がします。二人は中二と小六くらいかと思いますが、大人になりかけである兄妹の身体的変化に互いに気づき、また意識している風であります。
『夜の・・・』では主人公とその異母兄弟はあくまで別家庭で、近くにいる気になるけどちょっと近寄りたくないやつ、という位置づけであったと思います。他方、本作の錬と千華子の間の空気は、家族だし兄妹って思いはあるのに、今は親の離婚で離れて暮らし、血も半分しかつながっていないなかで、無意識に感じてしまう淡く焦がれる恋心、といった風。
今度は『ネクロポリス』も思い出す
また、本作はマヤ文明の遺跡がモチーフの一つとなってります。
打ち捨てられたかのような遺跡に、今も果たしている機能があるとしたら・・・。そのような「生きた」遺跡を描く作品として理解するのならば、これまた恩田氏の『ネクロポリス』を想起せずにはいられません。あちらはモダンホラー的テイストでしたので、アクション系である本作とは風合いが異なりますが、恩田氏は結構遺跡モチーフが好きなのかなと考えつつページをめくりました。そうそう、『MAZE』という作品も遺跡についての話でしたね。
おわりに
ということで、年始諸々忙しく、ちょっと出来たすきに本作を読んでみた次第です。お前らこの本の主人公たちみたいに仲良くするんだぞ、とうちの子供たち(兄妹)にも読ませてみたいとちょっと思いました。どうせ「だっるぅ」しか返ってこないんですが。
評価 ☆☆☆
2023/01/08