海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

押し寄せる閉塞感。とにかく重い|『どうしても生きてる』朝井リョウ

朝井氏というと、どうしても若いなあというイメージがあります。

先般読んだエッセイ『時をかけるゆとり』も若気の至りを十全にエンジョイしている様子で、非常に瑞々しく感じました。

 

ならば小説はどうかと手に取った本作。前回感じた感想とは正反対の、ひたすらに息苦しい作品でありました


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重いなあ

本作は6篇の短編からなりますが、とにかく重い、閉塞感がハンパない。

 

自分は一向に平気なのに、常識から判断して妙にいたわりの情を貰う。まっすぐに生きる人生を諦めた自分、そんな流される自分に絶望する自分。未婚で派遣で、自分の人生に意味を見出せない苦しさ。下らないプライドと分かりつつ、自分より年収の上がった妻に不能になった男。高齢妊娠の末に夫に逃げられる妻。

どの作品にもやり場のない鬱屈した感情が満ちており、やりきれない気持ちになります。

 

ふと自分を振り返ります。

私はたまたま外国人の連れ合いがあり、鬱屈した自分(とその職場)に嫌気がさして、ふらっと国外に出ることができました。早い話、逃げたのでした。しかし、普段、常識のくびき、道徳のくびき、迷惑をかけるな、等々の文言は私にまとわりついてはなれませんでした。

今が楽だとは言えませんが、10年ほど前の苦しい証券マン時代を思い出しました。

 

作品をどう解釈するべきか?

そのような短編集を読んで、得るものは、と考えますが、読むだけでは暗くなるばかり笑 では読者としてどういう意味を見出すべきか、と自問してみます。

一つは、それでも生は続くという事実。決して肯定するような人生ではないかもしれない、むしろ否定したいような人生かもしれないけど続く生。そうしたリアリティを淡々ととらえている、という解釈。

あるいは、追い詰められた生を提示し、読者の反応をあえて促している?

うーん、やはり分かりません。

ある種の絵画のごとく、作品の意味を考えるのではなく、ただ感じる、というのが正しい鑑賞方法なのかもしれません。どうなんでしょ。

 

おわりに

ということで初めての朝井氏の小説でした。

幾つかの人物設定が、若干浅いように感じる部分も個人的にはありましたが、「そんなの痛いにきまってる」や「籤」ではどうしようもない下らない「男」のプライドあるあるが描写されていると感じました。

心身共に健全な人にはお勧めできると思います。ちょっとした耐性がないと、読後どよーんとなりそうな気がします。ある意味、そんな怖いもの見たさから読んでもらうのも一興かもしれませんが。

 

評価   ☆☆☆

2023/01/17

 

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