お名前は見かけていましたが、その名前故に避けていたところがあります。だって、なんというか狙っている風のネーミングというのでしょうか、ちょっとふざけている?感を勝手に感じていたのです(作者名も作品名も)。読む前から「キャッチーな外面で内面をごまかしてはいないか?」という疑念がありました。
でも、やっぱり名前が、そしてタイトルが、気になるのです。そして、いくつかの機会をやり過ごしたのち、この度とうとう購入に至りました。
結論としては、自分の思い込みは大いに翻りました。
クセがつよいけど、惹きつけられる
な、なんなの、この作風は?
感想をぎゅっと絞ると、これです。
主人公は米国で救急外科医として勤務する奈津川四郎。彼のキャラ設定がもうアクがあり過ぎます。数日間ぶっ通しでメスを握り、神業的外科手術を夜通し成功させつつ、ふとした合間にセ〇レ看護師の下半身をまさぐる。
そんな彼の母親が頭を殴打され日本へ緊急帰国するのですが、出身の福井に帰ってもこの破格のキャラが大暴れ。かつての級友を連れまわす(もう連れ去りに近い?)、義理の姉とよろしくしけこむ、気に入らないやつには暴力を振るう、友人を使って公権力に入り込む等々違法行為スレスレのもうやりたい放題。
そしてこのような横暴が主人公目線の独白調で方言?も交えて、改行なく語られるのです。さらに合間合間に横文字の禁忌ワードの数々。その文体はドライブ感・疾風感が強く感じられ、嫌みな感じの一歩手前くらいで絶妙に抑えられているようにも見えます。というより、あまりに常軌を逸しているため、つい笑ってしまう、ギャグマンガ的なシュールさすら感じてしまいました。
ミステリ・エンタメ要素も十分に
そんな物語ですが、実は犯罪予告を解くDetectiveものの展開であり、密室犯罪のトリックもあり、悲しい家系的暴力の因縁があり、それらを超克して最後はきれいに大団円を迎えるというものでありました。つまり一言でいうとぐいぐい読ませるし、面白い。
エンタメを標榜するメフィスト賞受賞は伊達ではありません。
登場人物の個々のキャラが強く、展開も早いので意識しづらかったのですが、物語のピークが分からず気づいたら終わってた、でもキレイに終わってた、という読後感です笑
おわりに
ということで初舞城作品でありました。
アクの強い作品で読者によって好き嫌いが分かれそうな気がする作品でした。私はそうでうすね、結構好きです笑 なんか他の人からえー?って言われそうですが。
でも娘や息子に読ませるかっていると・・・、そうですね、たぶん黙っていると思います笑。
ダメと言われると余計に読んでみたくなる人、そもそもヒールとか露悪的なものが好きな人には楽しむことが出来るエンタメ作品だと思います。話の分かる大人にはお勧めの作品。
評価 ☆☆☆☆
2023/01/28