海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年はセカンドライフとキリスト教について考えたく!

瀧本式一段深い読書のススメ |『読書は格闘技』瀧本哲史

余談から始めるのもなんですが、昨夏に続き現在一時帰国しております。娘の高校受験に際して入学手続き等の関係で二カ月ほどは滞日する予定です。

「よくそんなに休めるねー」とは年配の親族の発話ですが、休んでいません。リモートで仕事をしています。

 

それにしても、外国の法人に雇われ(日本企業の現地法人ですが)、現地通貨建てで給料が払われる一方、日本で仕事をこなし、何ならケータイで外国の口座から日本の口座にちょいと足りない金を送金するなんてことも居ながらにできてしまいます。文明の利器と制度を利用してのリモート生活ではありますが、我ながら隔世の念があります。

 

今は、ただただ、ネットワークが無事につながり、PCがつつがなく動いてくれることを祈りつつ、娘の朗報を待つばかりでございます。

巷では梅の蕾が開きつつありますが、果たして桜は咲きますかねえ。

 


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2019年に逝去された瀧本氏の読書論。

そのエッセンスを一言で述べるならば、「批判的に、そして、背景を理解して読書せよ」ということでしょうか。

 

批判的読書

批判的にという観点では、テーマがあるとして、一つの見方を提示する書籍のほかに、正反対の意見・相反する意見の書籍も読んでみることを勧めています。そしてそれらについてあら捜しというか、論理のほつれ等に留意しながら読むように仰っています。

一例としましては、『読書とは他人に考えてもらうことだ』と主張するショーペンハウエルの「読書について」、バーサス、『能動的に読み、著者と対峙して、それまでの自分のものの見方と比較することで、考え方を進化させろ』と説く本書「読書は格闘技」。

まあ後者に軍配が上がってしまうのはやや手前味噌的な展開ですが、反対意見に耳を傾けることが苦手な私としては耳が痛い話でした。読書というのは単独作業で自己完結的ですので、このような反論読書ができればより幅広いものの見方ができるよなあと感じました。

 

作品の時代背景まで読みこむ

背景を理解して、という点については、換言すれば、本の成立背景や歴史的背景までをも読み込んで読書せよ、ということと理解しました。この点ではマキャベリ君主論の例が取り上げられています。曰く当作品は「マキャベリによる再就活エントリーシート」とのこと。クーデターにあい、上司に逃げられ、冤罪で収監され、晩年も失意のうちに亡くなったマキャベリ。そのような境遇の彼が再就職を狙い、過去の経験からルサンチマンと性悪論に依拠して「君主論」を書いたとするのならば、力強い独裁的君主の待望という極論として以上に「君主論」もよく理解できるだろう、というのです。

こういう話を聞くと、今更ながらに世界史の勉強は非常に大事だなあと感じてしまいます。定期的に歴史に目を通しておかないとこのような話題にリアクションが取れませんね。

もちろんそんな歴史の勉強は気軽にできるものでもありませんが、それでも一冊の読書にとどまらず、ググって歴史背景確認する等の検証を行うなどすれば、より深い理解と読書体験が得られるのだろうと思いました。

 

おわりに

このような調子で、瀧本氏の視点で古典から児童作品までをも深読み・深堀りしつつ紹介し、読書指南を行う作品でした。

テーマを改めて列記すると、読書、人心掌握、組織について、グローバリゼーション、時間管理、どこに住むか、才能、マーケティング、未来、正義、教養、国語教育、児童文学が語られます。テーマに沿って対照的な2作品を瀧本視点で読み込み、加えて参考文献がさらに各章6冊挙げられます。

 

読書好きの人がこの本を読んだら「私も本を読みたい」となること請け合いです。ただ、ここまで批判的な読書ができるようになるまでには相当な訓練・時間・読書量が必要かと思います。要は相当真剣に取り組まないとたどり着けない境地にも見えます。

 

それでもなお、やはり本書は読書のすばらしさを伝える良書だと思います。最近読書してないなあ、何か本が読みたいなあ、という方は是非読んでみてほしいと思います。新たな読書の地平が開けるのではないでしょうか。

 

評価     ☆☆☆☆☆

 

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