朝井氏のエッセイは2作品目です。昨年、「時をかけるゆとり」で、その真摯なアホさ加減に驚愕しました。
中学生の娘(日本語いまいちな子)が「電車で吹いちゃう」との感想を漏らしたことから、我が家での氏への評価がうなぎのぼりとなり、本作の購入に至りました。
そして今般、父たる私が先に読みましたが、本作で完全に朝井ファンになった、といっても過言ではありません。
本作でも彼のアホさ加減が遺憾なく、そしてユーモラスに語られます。妙なプライド、中二病的自意識過剰感、しょうもないトラブルと下ネタ、その他もろもろのあり得ないような話の数々。
今回、彼のエッセイは就職後から兼業作家を経て専業になるまでの期間のエピソードが語られます。で、読中気づいたのです。
「この人、社会人になっても変わらずアホかもしれない・・・」
この時点で惚れました。こういうタイプ、愛してやまない真正のアホの可能性が高いかも。
前作も確かに片鱗は見えました。でも大学生時代の話がほとんどで、まあ学生って全般的にアホだし、筆者も若いよね、と私は彼のことを斜に構えてみていました。
でも違うんです。彼はきっと本物。そういう真剣・真正なアホは是非応援したい!
・・・で、具体的に今回面白かったお気に入りを幾つか。
作家仲間の柚木麻子さんとともに顧問税理士の結婚式の余興で「今夜はブギーバック」の替え歌「今野でマネーバック」を練りに練って会場を沸かせる話『作家による本気の余興』。
そして痔瘻に悩み手術までの過程を爆笑で綴る『肛門記』です(出だしの放浪記でも方丈記でもない、という掴みで持ってかれた)。
あと、インキンタムシばらまき疑惑を明るく暴露する『初めてのホームステイ』もよかった。
こうやって面白く読んでいると、作中登場する柚木麻子さんって、作品はどんなだろうか、とか、筆者が好きだという吉田修一氏の「横道世之介」もどんな話だろうかと気になり始めました。世界が広がりますね。
おわりに
ということで朝井氏の爆笑エッセイでした。
帯の宣伝(裏の方)にもくだらないとあったのですが、確かに内容的にはしょうもない話ばかり。でも筆者がいたって真剣であるからこそ、そこに面白みやユーモアが生まれていると感じました。
筆者の言及している作品、登場する別の作家さん、そして筆者自身の別作品にも興味が湧いた一作でありました。
ワイドショーとかバラエティーみたいなノンフィクション系エンタメを欲している方にはお勧めできる作品かと思います。
評価 ☆☆☆☆
2023/02/26