最近、こっそりはまっている朝井リョウ氏の作品。
エッセイはかなり面白いと感じており、ノンフィクションはどうかと、先日「どうしても生きてる」を読んでみました。まあ、それは普通かなーという感じでした。
懲りずに読んだのがこちらの作品。読後に娘に貸したのですが、返ってくるのに1カ月ほどかかりました笑
私家版 世にも奇妙な物語
もうだいぶ長く続いている番組ですよね。Wikipediaで見ると、何と1990年から続いているようです。タモリを案内役に配し、世の中のちょっとした不思議やホラーのテイストをフィーチャーした作品が斬新でありました。
著者の朝井氏はこの番組が大好きなようで、その番組へのオマージュ的作品です。でも言い方を変えると、好きすぎて自作した!ということのようです。いやはや「好き」のパワーってすごいですね。
「13・5文字しか集中して読めな」だけのために買ってもいいくらい
さて作品は5つの短編からなります。
シェアハウスさない・・・とあるシェアハウスに潜入したライターの女性。そのシェアハウスはライターの女性以外どうも奇妙な連帯があるように見える。彼らが抱えるものとは…。
リア充裁判・・・コミュニケーション能力を金科玉条とする近未来のディストピア的舞台。からなずSNSで自己アピール、友達と積極的につながる等々。多様な価値観が抑圧された息苦しさを描写する筆致は秀逸。
立て! 金次郎・・・幼稚園の熱血教師、金次郎の熱(苦し)いモンペとの格闘がベースライン。最後に金次郎の思いが通じ、うるさがたのママも金次郎の運動会での采配に感動したかに見えたが…。
13・5文字しか集中して読めな・・・ネット記事ライター香織とその家族の話。陳腐で浅薄な記事について自己正当化を必死でする一方、子供の直喜はそんな頑張る母親を心から尊敬する。ツイストは授業参観での直喜の行動なのですが…。私はこちらの作品が激押し。
脇役バトルロワイヤル・・・いつも脇役しか与えられない役者たちが、とある舞台のオーディションで一室に集められる。しかし待てど暮らせどオーディションは始まらない。これはいったい何なのか??
どれもゾクっとくるツイストが随所に潜んでいます。私は「13・5文字しか集中して読めな」が好きです。自分の価値観とのずれを感じながらも仕事をするって、まあ必要だし大事な場合もありますが、心の声に耳を傾けないと、時に大惨事になりうるというような教訓じみた帰結を導き出したくなるお話でした。ゾクゾク。
おわりに
ということで朝井作品でした。
短編集ということもありますし、朝井版「世にも~」でもありますので、肩の凝らない読書ができると思います。
ちょっと隙間時間に読書がしたい、気分転換をしたい、というような方には喜んで読んでもらえる作品なのではないでしょうか。
評価 ☆☆☆
2023/01/23