日本では今週に入りぐっと暖かくなってきましたね。近所の川べりの桜の数本は慌てて少し咲き始めました。
海外に居所をもってはや9年目ですが、ことしはそれ以来のお花見が出来そうです。
会社に縛られる時代の終焉。じゃあなにする?
起業や副業・複業。
こうした働き方を認める会社やフリーランスという形態にたどり着くってのは、なんか「負け組」のイメージがありました。コンベンショナルで所謂デカくて「良い」大企業への選に漏れた方々がたどり着く、みたいな。パターナリズムに満ちた企業が終身雇用が維持できなくなったからそうした業務形態をとる、という。
ところが今はどうでしょう。コロナを経て、こうした因習的な考え方は大分薄れた感があります。少なくても私の中の偏見は消えました。そして世の中の働き方はより多様な形をとるようになってきたと感じます。
私もその多様性の恩恵に浴しています。出社しなくてもネットワークを通じて仕事をする形、所謂リモートワークであったり、その亜種としてのステイケイションであったり、副業を認める会社の出現やそれに伴うギグワーク、請負、さらにはフリーランス等々。本社を地方移転する企業がでたり、地方移住のテレビ番組がNHKのレギュラーになったり(「いいいじゅー」)、実に色々な働きかたがここ数年で見られたと感じます。
でも、じゃあ自分は何ができるのか?何がしたいの?っていうと実際には固まってしまうことも多いわけです。そのような方には本書のようなキャリア本が助けになることでしょう。
ざっくり言えば、自己分析と関連キャリアの探索
さて本書、題名の通りですが、一つ軸をもって(現業、得意なこと、あるいは好きなこととか)、それに関連する興味・技術・サービスなどを書きだしつつ自分のキャリアの方向性を探る、というものです。そしてその軸をもってより柔軟に次のアクションへ踏み出そう、というものです。
この「軸」というのは別の言い方でいえばコア・コンピテンシーという言い方もできると思います。リーダーシップやマネジメント経験がある方はその能力を生かして、自分の好きな組織・好きなプロダクトやサービスを提供する会社で能力を生かす。動画作成がサクサクできちゃう人は、友達や親族のお手伝いで楽しみつつ、いつの間にかお小遣い稼ぎをへてプロになる、みたいな。
そうした好き・得意などの軸を発見し、可能性を探る、といったものです。
世の中の変化は、予想以上に速い!?
なるほどねえ、って感じました。確かにね。
ただ、この程度の話は、ひょっとしたらあっという間に陳腐化してしまうのでは、とも感じるのです。そう思わせる事象に先日遭遇しました。
実はうちのムスコ、そろそろ高3なのですが、所謂総合型選抜(昔のAO入試や推薦入試みたいなの)で大学受験をしようかと考えています(学力的にオバカ泣)。そのために三つほど専門の塾に行き、一緒に話を聞いてきました。そこでは、どこでも概ね、私が就活や転職前にやっていたような自己分析・環境分析を徹底的にさせるのが通例のようです。選抜の性格からすれば当然ですが、子供にこういうことを謂わせるのか、とちょっと驚きました。
あなたはどんな人間ですか? 得意なことは何? 弱みは何? 将来やりたいことは? そのやりたいことのために今まで何をしてきましたか? その活動は大学でどのように生かせますか? あなたの研究テーマと大学はどのように関連するのですか? 等々。
もう「大学」が「会社」に変われば、入学面接から就職面接に変わるだけです。
でね、17年18年しか生きてこなかった子供たちが、自分とはどのような人間なんだろうと自己分析、環境分析をする時代になりつつあるんです。彼らのやっていることってちょっと難しく言えばSWOTとかポーターの5フォースの理論を、個人に適用するような話なのではとふと思いました。
とすると本作のようなゆったりと構えつつ自己省察を促すようなスタイルをとる人は、あっという間にイシキの高い若手社会人(それこそ総合型選抜でじっくり自己分析しちゃって目的意識を高々と設定した子たち)に凌駕されてしまうんじゃないかと。パイセンそんな目的意識もないのにプロジェクトに入るんじゃ進捗足引っ張るんでマジで邪魔しないでください、みたいな。
がんばろう氷河期
・・・でもまあ、旧世代は旧世代なりに頑張るしかないですね。
「早稲田に入れば女なんかみんな寄ってくるぞ。今は勉強に集中しろ」、なんていう発言が飛び交う学校で過ごしました(1990年代)。早稲田にも女性にも、そして学生にも失礼極まりないですよね。もう、自分とは何か、どころじゃないですよ。大学入学が目的になってんだもん。
それでも命は続いちゃうし、お金は稼がないといかんし、でもできれば好きなことや得意なことで食い扶持を得たい。だから、子供たちに負けないくらい根詰めて自分について考えないといかんのだなあ、と思いました。
おわりに
ということで、副業・複業を見据えてアラフィフのおっさんが今更ながらにキャリア論の本を読んじゃったという話です。
好きなことをして生きたいな、と考えている方には、自己分析入門として読んで損はないと思います。手を動かして気持ちや分析内容を書きつけているうちに何かしら得るものあると思います。アイディアも湧いてきます。
ちなみに私のケース。私は読書(日本語・英語)が趣味ですが、「未翻訳の英語の本を読んであらすじを作成:一冊1,000円(一日20頁くらいの速度で納期を設定)」みたいなしょうもないサービスを考えました笑。まあニーズ、無いでしょうが笑 そういう「こんなことできたらいいな」を考えるだけでも十分に楽しい。素敵な読書時間を与えてくれた作品でありました。
評価 ☆☆☆
2023/03/14